昨今、マイナンバー制度の導入やストレスチェックの義務化など、人事業務に密接に関係する法改正が続いています。法令遵守の面から見ても、適切な人事労務を行う上で、労働関連法規の知識は欠かすことができません。今回は、人事労務に関連する法律を紹介します。
主な労働法について
労働について規定された法律の総称を「労働法」と呼びます。労働関係や労使関係、労働者の地位の保護・向上を目的とした法律の総称が「労働法」であり、単体の法律があるわけではありません。人事担当者が知っておくべき主要な労働法には、下記のようなものがあります。
労働基準法
労働条件の最低基準を定めています。労働契約や労働時間、賃金、休日、就業規則など、人事労務管理を行う上で必ず押さえるべき基本的な法律です。労働基準監督署は、労働基準法などに違反した企業を是正指導する権利を持ちます。労働安全衛生法
労働災害を防止し、安全で快適な職場環境をつくることを目的とした法律です。定期的な健康診断の実施を義務付けています。ストレスチェックはこの法律の一部改正に伴って導入される制度です。労災保険法
業務や通勤による労災事故に対して、保険給付の内容を定めた法律です。アルバイト・パート・派遣社員にもこの法律は適用されます。雇用保険法
労働者が失業した場合に必要な給付を行って、生活や雇用の安定を図ることを目的にした法律です。2014年に改正され、育児休業給付金の増加や人材育成に関する助成金の拡充などが行われています。労働契約法
労働契約の締結や変更に関する基本事項をまとめた法律です。契約社員などの有期雇用契約が、通算5年を超えた場合に無期労働契約へと転換できる「無期転換ルール」など、雇止めトラブルを解消するためのルールが定められています。男女雇用機会均等法
募集・採用から退職まで、職場における男女の差別を禁止した法律です。関連する法令では、身長や体重、転勤経験などによる差別待遇も禁じ、また、異性・同性からのセクシュアルハラスメント対応の徹底も求めています。最低賃金法
労働者に対する賃金の最低限度を定めた法律です。47都道府県ごとに定められている「地域別最低賃金」と、各地域の産業ごとに定められている「特定最低賃金」があります。最低賃金額よりも低い契約を交わしたとしても、法律によってそれは無効となり、事業主は適正な金額を支払わなければなりません。
最新情報を得るために
労働法には、上記以外にも、健康保険法・国民年金法・厚生年金保険法といった社会保険関連法規や、労働組合法・労働関係調整法の労働三法といった基本的な法令があります。また、育児介護休業法・パートタイム労働法・高齢者雇用安定法・労働者派遣法など、多様化する就業形態を背景に、さまざまな法律が施行されています。こうした法律は、社会の変化に応じて改正されていきますので、人事担当者は常に最新情報を押さえておきましょう。