パナソニックならではのAndroid端末"ビエラ・タブレット"に込められた狙い

パナソニックが発表したAndroid搭載のタブレット端末「ビエラ・タブレット」は、テレビの新たな視聴を支援するツールと位置づけられる製品だ。

PCメーカーなどが投入するAndroid搭載のタブレット端末が、ネットブックからの置き換え利用をはじめとするカジュアルコンピューティング利用を目的としたものであるのに対して、パナソニックの「ビエラ・タブレット」は、テレビとの連動を前面に打ち出した点で、その位置づけは大きく異なるものだといっていい。

パナソニックの大坪文雄社長は、「パナソニックの差別化点は、テレビとの接続に尽きる。テレビとの接続機能は、今後のタブレット端末の必須機能になる。それをいち早く実現したのがパナソニック」とコメント。また、米パナソニック・コンシューマ・エレクトロニクスの北島嗣郎社長も、「iPadと直接競合するような製品だとは考えていない」と語る。

ビエラ・タブレットで実現される特徴のひとつはビジュアルリモコンだ。

手元のビエラ・タブレットを大きなリモコンと見立て、そこから直感的な操作で利用できる。番組内容が映像ともども確認でき、そこからチャンネルの切り替えが可能になる。さらに、スポーツ番組などでは、大画面テレビでメインの放送を視聴しながら、手元のビエラ・タブレットでは別の角度で撮影された映像をみたり、ハイライトシーンをスローで再生したりといった使い方ができる。2つめの画面として、自分が楽しめる使い方ができるわけだ。

また、テレビに表示されている通販番組をみながら、手元のビエラ・タブレットで製品を購入したり、番組中に女優が着ている衣装と同じものが購入できたりといった使い方も可能だ。SNS機能を使えば、テレビ番組をみながら、ビエラ・タブレットで友人とのコミュニケーションが行えるという仕組みも用意した。

さらに、今年春から米国で提供される予定のビエラ・コネクトを利用すれば、ここで提供されるコンテンツやアプリケーションを利用できるようになる。

このように、テレビ視聴をいかに楽しむか、という提案が、ビエラ・タブレットということになる。

もっとも、アップルのiPodや、PCメーカーなどが投入するAndroid搭載の端末とは異なるとはいえ、それを意識していないわけではない。

もちろん、インターネットへの接続は可能となり、同社では現時点では明らかにしてはいないものの、映像コンテンツや電子書籍コンテンツの配信は、ビエラ・コネクトを通じて行われることになるのは容易に想像できる。

大坪社長は、「数年前には、テレビ機能付きパソコンと、パソコン機能付きテレビのどちらが上位概念になるのかという議論があった。その答えは、同じソースにアクセスするにも、リビングのような場所ではパソコン機能付きテレビが適しており、携帯して利用するにはテレビ機能付きパソコンが最適であるという方向に落ち着いてきた」と前置きした上で、「ビエラ・タブレットは、パナソニックが提案する携帯可能な端末機器のひとつ。そう捉えた場合には、タブレット端末の市場導入はライバルメーカーに比べて遅れているのは明らかだ」とする。

続けて、「レイト・カマーであるパナソニックが、最大の差別化ポイントとしたのがテレビとの連動。タブレットで見ている番組を、直感的な操作で、大画面テレビに映し出すことができる技術はパナソニックだけ。これによって、少なくとも先行するメーカーと比べて、同じレベルに到達できたのではないかと考えている」と語る。

ただ、現時点で、具体的な販売台数計画や、ビジネス規模などについてはまったく言及をしていない。

大坪社長も、「薄型テレビの出荷台数に対して、これに対して、どのぐらいの数を売っていくのかという点では、具体的な数字は持ち合わせていない。すべてのテレビにVIERAタブレットが付属するわけではないのは明らかであり、ビエラ・タブレットとしての良さを実感してもらうことで、普及につなげていく活動が必要である」とする。 ビエラ・タブレットは、パナソニック社内に設置された特別開発推進プロジェクトにより、急ピッチで開発されたものだ。

4型、7型、10型の3つのサイズが用意されるが、「まだまだ、これがパナソニックのタブレットだと、胸を張っていえる状況ではない。他社に比べて、より付加価値が高いもの、より進化したものを出していかなくてはならない」と、今後の進化にも意欲をみせる。 いずれにしろ、テレビメーカーであるパナソニックから登場するAndroid搭載タブレットは、PCメーカーが提案するタブレットとは異なる領域にまで、利用シーンを広げることになるのは明らかだろう。