コンサルタントと名乗らない理由
事実無根のネットの書き込みを信じ、お笑いタレントのブログを「炎上」させたとして、複数の検挙者がでた事件について産経新聞の取材を受けました。「肩書き」を訊ねられ困ります。「ホームページ制作業」と看板をあげていますが、実際は営業戦略から社員教育まで踏み込んでおり、納まりの良い言葉は「コンサルタント」なのですが・・・あまり良いイメージがなく好きではありません。
あるWebコンサルタントが、「スパム」としてグーグルの検索結果から追放されるリスクのあるSEOアプローチを必勝法と紹介し、また、別のITコンサルタントは「ブログを書いて本を出せ」といいます。出版社はいつも著者を捜しており、ブログを書きためれば本になるといいます。しかし、出版社が探しているのは「売れる著者」であり、原稿があるだけでは本は出ません。詳しくは「Web担当者Forum」の私の連載をご覧いただきたいのですが、実力を疑うコンサルタントが多いのです。
いわばITコンサルタント0.2。彼らは進化を阻害するどころか退化させるので危険です。ちなみに産経新聞には「ITコラムニスト」として紹介されました。
脅迫と裏表のアドバイス
流通業のN社長のホームページは社員が手作りしていました。取引先や下請け企業、また社員の家族が同サイトを訪問しており、打ち合わせの席やお茶の間で話題となることが多く、その反響がこまめな更新のモチベーションとなっていました。
N社長がLコンサルティングのE代表と出会ったのは、業界団体主催のゴルフコンペでした。洒落たゴルフウェアに身を包んだE代表のスマートな立ち居振る舞いと弁舌の爽やかさに、現場叩き上げのN社長はすっかり心酔し、コンサルティングを依頼しました。業績が悪いわけではなく、将来を見越してのことです。
後日、E代表は来社するなり「ホームページに問題があります」と切り出します。理由は大きく分けて2つ。1つは「ステータス」。社員の手作りということから、文字情報が主体で掲載写真も素人の作品、平たく言えば「垢抜けていない」ことが御社のステータスを棄損するという主張です。もうひとつが「情報を公開しすぎ」。ライバル社に研究されて競争力をなくすと脅迫します。
ステルス戦闘機的方針
ファッションセンスに自信のないN社長は、いわれるがままリニューアルすることにしました。制作業者に心当たりがないと告げると、E代表の「友人」が紹介されました。数週間後、幾何学模様がブレイクダンスを始めるフラッシュ動画で飾られたホームページが公開されました。公開しすぎと指摘を受けたコンテンツは、E代表による「検閲」の末に会社概要と社長の挨拶だけになりました。
結論を述べればこのリニューアルは失敗です。もともと十分に機能していたホームページを退化させたのです。更新されなくなったことで、取引先や茶の間でホームページが話題に上ることはなくなりました。フラッシュ動画はクリエーターに自己表現の場に与えただけです。また「情報発信は引力を生む」は、インターネットの世界の物理法則で、簡単に述べれば情報量が多い分だけ検索される確率があがるという単純な算数で、これを無視して情報を制限するのは引き寄せられる客を追い払うようなモノです。 ライバルを警戒し情報を制限し、まだ見ぬ「新しいお客さん」との出会いを閉ざすリニューアルを退化といいます。
コンサルタントの実力チェック
ステルス戦闘機のように自分は隠れて相手を攻撃しようとするのは理想論であり、妄想です。E代表の名前やL社をネットで検索してみると、何ひとつヒットしません。ドメインは取得しているのにホームページがないのです。E代表は「ステルス戦闘機」のような営業方針で、「私の姿は見えない方がいい」と主張しますが、これはおかしな話です。「脱税指南」などのグレーゾーンのコンサルタントなら、姿を隠す必要がありますが、コンサルタントの知名度の高さはクライアントの利益になります。「○○先生のお世話に」や「○○さんのところで」をステータスに感じる人もいますし、知名度と人脈は相関関係にあり、コネは強力な援軍です。また、知名度が上がれば客を集めやすくなり「コンサルタント屋」も繁盛することでしょう。ステルス戦略とは「商売の助言をする商売」にあるまじき行為なのです。
話を総合して浮かび上がるのが、「ホームページを知らずにコンサルティングしている」という疑惑です。ステータスは主観に過ぎず、客観的な基準が明示されなければ思いこみと同レベルです。ライバル社への危惧は論外です。「ホームページ」の情報をもとに研究するような企業は敵ではありません。わざわざ公開している情報を鵜呑みにするマヌケな連中を騙すのは簡単だからです。熾烈な企業抗争を描く「島耕作シリーズ」の読み過ぎなのでしょうが、あれは「マンガ」です。
ホームページの使い方を知らないコンサルタントは・・・多いのです。「ネットで検索」して名前が見つからないのは論外です。そしていつも肩書きに困ります。
エンタープラズ1.0への箴言
「ITコンサルタントの実力はネットで検索」