PDTの新機能
本連載でのEclipse 3.6(Helios)の新機能紹介も今回で3回目となるが、今回はPHP用の開発環境であるPDT(PHP Development Tools)の新機能を紹介したい。
なお、Eclipse.orgではEclipse for PHP Developersというパッケージが用意されており、このパッケージをダウンロードすることでPDTがインストール済みのHeliosを利用することができる。また、Eclipseを日本語化バージョンを提供するPleiades All-in-OneにもPHP向けのパッケージが提供されているので、日本語で使用したい場合はこちらを使用してもいいだろう。
パフォーマンスの向上
Heliosに含まれているPDT 2.2では全体的な処理速度が向上している。以前のバージョンのPDTはプロジェクト内のファイルの増加に伴ってファイルの保存に時間がかかったり、コンテンツアシスト時に補完候補の表示に時間がかかったりと性能面での問題があったが、PDT 2.2ではベースとしているDTLKの新しいインデックスエンジンなどの効果によって、特にコンテンツアシストについては体感できるレベルで性能が向上している。
ただし、PDT 2.2においても大規模なプロジェクトでは、カーソルの移動時やファイルの保存後などにややひっかかる感じがある。将来のバージョンでのさらなる性能改善に期待したいところだ。
シンタックスハイライト
これまでPDTのシンタックスハイライトは独自の配色だったが、標準の配色がJDTなどEclipse標準のものと近くなり、Eclipseを使い慣れたユーザには見やすくなった。
PDTのシンタックスハイライトの設定はEclipseの設定ダイアログの[PHP] > [エディター] > [構文の色指定]で行うことができる。
コンテンツアシスト
PDTのコンテンツアシスト機能は以前からかなり強力だったが、前述の通り速度が大幅に向上しているほか、関数やソッドのアシスト時に引数のテンプレートが挿入されるようになり、タブで移動しながら引数の入力を行うことができるようになった。
図3 引数のテンプレート補完 |
また、PHPDocのコンテンツアシストも強化されている。@return、@see、@throwタグの直後でアシストを行うとクラス名(@throwsタグの場合は例外のクラス名)が補完候補として表示される。PHPDocは記述しておくとコンテンツアシストの際にホバー表示してくれるので、できるだけ記述しておきたい。
検索機能
PHP用の検索機能が強化されており、検索ダイアログで型、メソッド、フィールドやそれぞれの定義部分、参照箇所など単純なテキスト検索ではなく高度な検索を行えるようになっている。ソースコードのレビューや解析などの際に活用することができるだろう。
CTRL+Oで表示されるクイックアウトラインも機能強化されており、クイックアウトラインを表示後に続けてCTRL+Oを入力することでスーパークラスで定義されている要素が表示されるようになっている。
その他の新機能
このほかにもPDT 2.2では以下のような新機能が実装されている
- PHPエディタ上で範囲選択した部分をマウスでドラッグ&ドロップすることでテキストを移動可能
- PHPDocのホバー表示がリッチになった
- ビルドパスの指定にビルドパス変数を使用できるようになった
- デバッグ時に選択範囲のインスペクションを行えるようになった
新機能はいずれも細かい使い勝手の向上に関するものばかりだ。Eclipse本体やJava開発環境であるJDTと同様、PDTもPHP開発環境として完成の域に近づいているということだろう。
まとめ
PDTはもともと完成度が高く、以前からPHP開発環境として定評のあるツールだが、HeliosのEclipse for PHP Developersパッケージに搭載されているPDT 2.2ではより使い勝手が向上している。まだPDTを使ったことのないPHP開発者の方はHeliosのリリースを機会に試してみてはいかがだろうか。
さて、今回まで3回に渡ってHeliosの新機能を紹介してきたが、次回は番外編としてEclipseの次期バージョンの基盤となるべく開発が進められているe4について簡単に触れてみたい。