今年も予定通りのEclipseの新版がリリース
2013年6月26日、今年も予定通りEclipseの新バージョンであるKeplerがリリースされた(Eclipseは毎年1回、6月に新バージョンをリリースしており、このリリースサイクルを守り続けている)。Eclipseはいまや単なるJava統合開発環境ではなく、様々なサブプロジェクトを含む一大プラットフォームであり、Keplerのリリースにはこれらのサブプロジェクトのアップデートも含まれている。今回から数回に分けて、Keplerの新機能について紹介していきたい。
図1 : Keplerのスプラッシュスクリーン |
Keplerで提供されるパッケージ
Eclipse.orgでは、用途にあわせてプラグインを組み合わせたパッケージが提供されている。Keplerで提供されているパッケージと、各パッケージに含まれているプラグインは以下の通りだ。
Junoと比べるとDSL開発向けのパッケージが追加された。また、JavaEE開発向けのパッケージにもGitやMavenサポートが標準で含まれるようになり、GitやMavenといった標準的な開発インフラを利用しやすくなったといえるだろう。
なお、昨年のJunoのリリース時はEclipse 3.x系のアップデートとして3.7が同時にリリースされたが、Keplerは4.x系のリリース(4.3)のみとなる。Junoでは4.x系での大幅な外観の変化やパフォーマンス上の問題などで、3.x系に留まったユーザも多いと思うが、Keplerで4.x系への移行が進むのではないだろうか。
また、Eclipseの日本語ディストリビューションとしてお馴染みのPleiadesも、早速Keplerに対応している。日本語化されたUIで利用したい場合はこちらを利用するといいだろう。
JavaEE7に対応するもJava8のサポートはなし
KeplerではJavaEE 7に対応したほか、Maven連携とWTPが統合され、WTPでMavenベースのWebアプリケーションの開発を行えるようになった。また、別途更新サイトから導入する必要はあるものの、ビジネスプロセス管理ツールのStardust 1.0もKeplerに含まれている。このようにJavaEE向けの機能が強化されている反面、JavaSEの次期バージョンであるJava8に関してはサポートされていない。
これはJava7のリリース時も同様だったのだが、仕様が未確定の状態では標準ではサポートしないというEclipseの方針によるものだ。Java8は来年2月にリリースされる予定なので、来年6月にリリースされるEclipse 4.4(コードネーム Luna)ではJava8が正式に対応されることだろう。
ただし、Java8は非常に多くの改良が多く含まれており、デベロッパからの注目度も高い。NetBeansやIntelliJといったライバルとなるIDEはすでにJava8のサポートを開始しており、Eclipseだけが取り残されている格好だ。Eclipseも、Java7のときは標準サポートではなかったものの、更新サイトを通じて事前にJava7のサポートを別途導入することができた。KeplerでもこのようにJava8のサポートを早期に利用可能にする手段を提供してほしいところだ。
このほか、BIRTではデータソースとしてMongoDBなどのNoSQLに対応、MylynもGerrit(Git用のソースコードレビューシステム)に対応するなど周辺プラグインも順当にバージョンアップしている。
また、RAPはEclipseRCPアプリケーションをWebブラウザ上でAjaxベースのWebアプリケーションとして動作させるのプラットフォームから、スマートフォンなど様々なクライアントに対応したプラットフォームへと変化を遂げ、名称もRich Ajax PlatformからRemote Platformに変更されている。Web IDEとして開発されているOrionも3.0にバージョンアップし、warファイルとしてデプロイ可能になったほか、パフォーマンスやユーザビリティについても改善が図られている。
まとめ
Keplerではここ数年のアップデートと同様、Eclipse本体やJDTには大きな機能追加は行われていない。ただし、Junoで問題になっていたパフォーマンス面に関しては大きく改善されているとのことだ。また、これまではMavenやGitのサポートがJavaEE向けのパッケージに含まれておらず別途更新サイトからインストールする必要があるなど面倒な部分も多かった。Keplerのリリースでようやく「道具が揃った」と言えるのではないだろうか。
今回はKeplerのリリースの概要の紹介に留めたが、次回からは個々の新機能を詳しく紹介していく予定だ。