IT業界の観点から言うと、ミャンマーはオフショア先の国としての印象が強いでしょう。ミャンマーの国民性は温厚で勤勉だと言われています。また、公用語であるビルマ語は日本語と構造が似ていることから、日本語を習得しやすいそうです。そして、人件費がまだ安いことから、日本のIT企業のオフショア先として注目を集めています。

しかし、このオフショアも長くは続かないでしょう。昔は日本のIT企業のオフショア先が中国でしたが、人件費の高騰により、今はオフショア先として下火になっています。オフショアビジネスは発展すれば発展するほど、相手先の国の経済が発展し、人件費の高騰、オフショア先としての終息というサイクルをたどります。もう数年もすれば、ミャンマーは日本のオフショア先として見られなくなるはずです。

すでにIT産業が進展し、優秀な人材が海外に進出するようになってきているミャンマーの状況を、日本で外国人エンジニア派遣に力を入れているヒューマンリソシアの協力を得て、 ミャンマーに精通したトウワイン・ザー・ヘイン氏に聞いてみました。

--簡単に自己紹介をお願いします--

ザー氏: 私は2003年にヤンゴンコンピューター大学を卒業した後、ミャンマーのIT企業にプログラマーとして就職しました。同社に4年間在籍した後、2年間、立命館大学のエンジニアリングの修士課程を学びました。卒業後、5年間日本のIT企業でSEとして働いたのち、ミャンマーに帰国、AcePlus Solutions のDeputy Chief Executive Officerに着任し、今に至ります。

--その若さで副CEOなんですね。仕事内容を教えていただけますか--

ザー氏: 主に営業窓口・人材管理・金融管理などを行っております。システム開発までは担当していませんが、納品物の確認やお客様からのフィードバックをもとに修正を加えるといった作業は行っています。当社のサービスとしては、Webサイト開発、Webアプリケーション開発、モバイルアプリケーション開発などを行っております。なお、日本をはじめ、シンガポール・ニュージーランドの企業などにオフショア・サービスも提供しております。

--それでは、ミャンマーの事情について教えてください。最初からお金の話で恐縮ですが、プログラマーの給与は一般的な職業と比べていかがでしょうか?--

ザー氏: プログラマーの平均的な給与は一般的な職業と比べ、高いです。入社時に給与の差が大きくなかったとしても、LeaderまたはManagerレベルになると他の職業より一般的に高くなります。

--日本と同じですね。ミャンマーでプログラマーは人気がありますか?--

ザー氏: 学生の中で、プログラマーの仕事は非常に人気があります。その理由は、ミャンマー国内では就職しやすいうえ、若手でも活躍しやすく、また海外で働く時はプログラミング言語を使うため言葉の壁が低く、海外への転職にも有利だからです。

--そうなんですね。チャンスが豊富で、海外で働く障壁も低く、給与も高いとなると、人気は上昇しますよね。ちなみに、人気のプログラミング言語と人気がある理由を教えてください--

ザー氏: 人気のプログラミング言語はWeb系言語であるJavaやPHPです。モバイル(Android、iOS)開発も人気です。理由はその言語の参考書籍や教育機関などが多く、求人の募集も多いからです。それらの言語が使うことができれば、良い条件で転職できるチャンスが多いのも人気の理由です。シンガポールや日本で働く時も、JavaやPHPを習得していると採用されやすいです。一方で、海外で流行しているPythonやRubyはミャンマー国内ではまだ関連書籍が少なく、就職先もあまりないため、それほど人気が高くありません。

--プログラミング言語の普及には教育と仕事の両面が必要なんですね。ちなみに、IT業界で起業されている人は多いですか?どのような人が成功されると思いますか--

ザー氏: IT分野で企業する人は増えています。成功している人は、新しいアイデアを持つアントレプレナー、海外と意見交換したり、支援を受けたりしながらビジネスを拡大している人が多いです。一方で、アイデアはよくても、ビジネスがうまくできていない人も多いです。これからのミャンマーの起業家は、起業するだけではなく、長期間にわたって業績を拡大するための経営スキルも必要だと思います。

--日本のプログラマーがミャンマーに移住して起業したら成功しそうでしょうか?--

ザー氏: 日本人のプログラマーもミャンマーで成功できると思います。ただ、ミャンマーは発展のスピードが速くて、新しいアイデアや案件をどんどん出さないと成功することが難しいです。例えば、多くの日本の会社のように、ウオーターフォール型の開発手法でビジネスを進めようとしてもミャンマーでは難しいです。ミャンマーの会社はアジャイル型のビジネススタイルで進めていることが多いのです。アジャイル型のビジネスに慣れている人なら成功できると思います。

著者プロフィール

吉政忠志


業界を代表するトップベンチャー企業でマーケティング責任者を歴任。30代前半で同年代国内トップクラスの年収を獲得し、伝説的な給与所得者と呼ばれるようになる。現在は、吉政創成株式会社 代表取締役、プライム・ストラテジー株式会社 取締役、一般社団法人PHP技術者認定機構 代表理事、一般社団法人Rails技術者認定試験運営委員会、BOSS-CON JAPAN 理事長、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 代表理事を兼任。