高度にインターネットが発達した現代では、知りたい情報をすぐに検索して調べることができる。一方で、本を読むことで得られる想像力やインスピレーションも重要だ。"本でしか得られない情報"もあるだろう。そこで本連載では、経営者たちが愛読する書籍を紹介するとともに、その選書の背景やビジネスへの影響を探る。
第13回に登場いただくのは、人材育成やDX(デジタルトランスフォーメーション)コンサルティングなどを広く手掛けるチェンジの代表取締役 兼 執行役員社長である野田知寛氏。同氏は大住力氏が執筆したワークブック『一度しかない人生を「どう生きるか」がわかる100年カレンダー』(ディスカヴァー・トゥエンティワン 以下、100年カレンダー)を選んだ。
同書は単純な書籍ではなく、自分の過去・現在・未来の人生を書き込んでいくワークブックだ。仮に人生を100年とすると、あなたにはあと何年残されているだろうか。悔いなく残りの人生を生きられるだろうか。
同書の書き込みワークでは、今後の人生を考えるだけではない。過去を振り返り「どう生きてきたのか」から見つめ直す機会となるだろう。野田氏のインタビューを読んで気になった方は、人生の節目やキャリアの節目にぜひ取り組んでほしい。
毎朝の時間を確保して読書
--普段の読書の様子について教えてください
野田氏:普段は雑食と言いますか、さまざまなジャンルの本を読むようにしています。自分が選ぶ本はどうしても偏りが生じてしまうので、誰かに紹介された本を順に読んでいます。私の好きな本のジャンルは、強いて言うなら「人に勧められたもの」となるでしょうか。
仕事柄たくさんの方にお会いする機会が多く、そこでおすすめの本を聞くようにしていますので、経営に関するジャンルの本を紹介してもらう場面が多いように感じます。
紙の書籍と電子書籍をどちらも読みます。過去には紙と電子を行ったり来たりしたこともあるのですが、最終的には「両方良い」という結論に落ち着きました。紙の本にはめくる楽しさがありますし、電子書籍は持ち運びに便利というメリットがあります。『100年カレンダー』も、両方で読みました。
--読書の時間はどのように確保していますか
野田氏:基本的には朝です。毎日7時に出社しているのですが、そこから毎日50ページを読むと決めています。あまり没頭しすぎると、つい80~100ページなど時間を忘れて読みすぎてしまう日もあるくらいです(笑)。 だいたい月に4~5冊は読んでいます。
--以前から本が好きだったのでしょうか
野田氏:大学に入学するまでは、本は好きでも嫌いでもありませんでした。大学入学後にとんでもない量の本を読まないといけない経験をして、それから本を読む習慣が身に付きました。
当時は「読書が楽しい」とはとても思えませんでしたが、訓練のような4年間を経て、脳みそに汗をかきながら本の内容を読解することが自分を形作っていく感覚が得られるようになった気がします。この経験がベースとなり、読書が好きになりました。
残りの人生をどう過ごすか考えるために人生を振り返る
--『100年カレンダー』を読もうと思ったきっかけを教えてください
野田氏:この本は数年前、ちょうど40歳になる年に手に取りました。自分自身の人生としても、社会人としてのキャリアとしても、ちょうど折り返し地点にいるなと感じていたので、人生を俯瞰して考えられる本を探していたタイミングでした。
人生やキャリアを考える本はいくつもありますが、『100年カレンダー』というタイトルに目を引かれ、手に取ってから一気に読み終えました。本を読んでみて、「時間は資産だ」という考え方に共感しました。
この本はワーク形式で書き込みながら進むのですが、自分の人生の残りの時間をどう使うのかを考えるきっかけになると思います。
--印象に残っているエピソードや内容はありますか
野田氏:ワークでは、人生を100年分のカレンダーの中に落とし込んでいきます。生まれた日を起点に、まずは死ぬ日を決めるんです。およそ平均寿命を参考にしても良いですし、「だいたいこのくらいかな」と考えて決めても良いです。100年より長くても短くても大丈夫です。
そうすると、今日の時点で先に残された時間が見えますよね。それから、残りの時間をどう過ごすのかを決めるために、生まれてから今までの人生を振り返ります。過去の感情や意思決定や出会った人、大切にしてきたこと、経験をすべて書き出したら、いよいよ「自分はこの先どうやって生きるのか」を考える作業に移ります。
そうすると、残りの人生で本当にやりたいことが見えてきます。やりたいと思いながら先送りにしていたことが、実はそれ以上は先送りにできない現状なども如実に見えてきます。「やりたいことは今やらないと後悔するな」と気付くきっかけになりました。
また、この本を読んで「人との時間も有限である」と気付かされました。例えば家族や友人、恩師、同僚など、大切な人と残りの人生であと何回会えるのかを想像すると、おそらく非常に少ないです。
私は九州出身なのですが、両親と年に1回ずつ会うと仮定すると、あと10数回しか会えない可能性があります。こうした現実がまざまざと表現されますので、時間の使い方を考える機会になりました。
残された時間で何をして、 何をしないのか
--この本を読んで、ビジネスに影響はありましたか
野田氏:その瞬間その瞬間の時間の投資に対するリターンを、これまで以上に厳密に考えるようになりました。例えば、今このタイミングでこのイベントにこれだけの時間を使うことが、会社の経済的合理性があるのかや、社員の成長につながるのかなどを判断するようにしています。
反対に、私や会社の時間の投資に見合うリターンが得られないと思われる場合には、勇気を持ってお断りする場面も増えました。
--では、野田社長ご自身の生活に影響はありましたか
野田氏:さきほどの両親の話のように、私の残りの人生で誰に会いたいのか、何を見たいのか、何がしたいのか、どこに行きたいのかなどを具体的に考えるようになりました。
先の人生が見えるようになったことで、行動のイメージが具体化できるようになったと思います。
実は、この本を読んだ後に著者の大住力さんに連絡を取り、お会いすることができました。『100年カレンダー』の内容をベースにした講習会プログラムを、近々社内で開催していただけることになりました。とても楽しみにしています。


