今回の連載では、SDSとしてEMC ScaleIO用いたハイパーコンバージドインフラを構築する方法を紹介する。SDSを使用することで、手軽にはじめ、スケールアウトできる仮想化インフラの構築が可能になる。Iaas基盤をデプロイするCloud OSとしてはMirantis OpenStackを使用している。ESXi上のゲストOSに、すべてのMirantis OpenStackのノードをデプロイした。
1. Mirantis OpenStackのインストールと構築
Mirantis OpenStackのインストール方法としては、Virtual Box上にall in oneでインストールする方法と、手動でインストールする方法ある。本稿では主に手動インストールの方法について解説する。
Mirantis OpenStackの代表的なコンポーネントは以下である。
Fuel Master Node
Mirantis OpenStackの特徴であり、ノードをデプロイするためのUIを提供し、デプロイメントを自動化する。Fuel Slave Node
Master Nodeによってデプロイされるその他のNodeをSlave Nodeと呼ぶ。Slave NodeにはOpenStack Controller、OpenStack Nova Node、Storage Nodeなどが含まれる。
今回は次のような環境を使用した。
物理サーバはCPUがIntel Xeon E5-2420 1.9GHz x2、メモリが64GB、ESX 5.5(vCenterで管理)。ゲストOSはFuel MasterはvCPUが2、メモリが4GB、ディスクが128GB x1、Fuel SlaveのOpenStack ControllerはvCPUが2、メモリが4GB、ディスクが128GB x1、OpenStack Nova NodeはvCPUが2、メモリが4GB、ディスクが128GB x2(1本はScaleIOのデータ用:100GB以上必要)。
簡単にするため、OpenStack Controllerの冗長化は構成していない。Network構成は図1-1のようになっている。Management LANがルータを通してインターネットにつながっているかローカルのubuntu/OpenStackレポジトリ(別途作成)につながる必要がある。
また、Public/Floating LANはルータを通してインターネットにつながっている必要があるほか、ESX環境では次の2つの設定が必要になる。
vSphere web Clientから、OpenStackのNodeが使用するvSwitchまたはポートグループに無差別モードの設定を行う。
vSphere web Clientから、OpenStackのNova Compute Nodeとして使用するゲストの設定でCPUに"Expose hardware assisted virtualization of the guest OS"の設定を行う。
Mirantis OpenStackのインストール
①Fuel Masterのインストール
https://software.mirantis.com/openstack-download-form/からFuel MasterのISOファイルをダウンロードし、Fuel Master用のゲストOSにマウントして起動すれば自動的にインストールが開始される。基本的にはhttps://docs.mirantis.com/openstack/fuel/fuel-8.0/quickstart-guide.html#installing-mirantis-openstack-manuallyの手順に従ってインストールすればよい。途中、再起動された後に図1-2の画面が表示されたところで何か(aなど)キーを押下し、Fuel Setupの画面に入り、ネットワークなどの設定をする必要がある。
Fuel Setup(図1-3)から、Fuel User(今回はデフォルトを使用)、Network、PXE、DNS、Bootstrap Image(今回はデフォルトを使用)、NTP、Root Password(今回はデフォルトを使用)、Feature groups(今回はデフォルトを使用)の設定を入力する。Fuel Setupの入力方法は次のようになっている。
最初に表示されるdefault admin passwordに関するWARNINGに対して、リターンを押下(closeを選択)し、設定メニューに入る。
キーボードの矢印キーを使用して移動し、必要項目を入力する。リターンで協調表示されている操作を実効。
次のメニューに進む前にCheckを実行すると設定ミスなどが確認できる。
Network設定ではインタフェース毎にApplyの実行が必要。
Feature groupsもApplyを実行。
最後はSave and Quitを選択すると設定開始。
設定が終了すると、コンソールにrootのパスワードやFuel UIへのアクセス情報が表示される(図1-4)。
②Fuel Slaveのインストール
Fuel Slave用のゲストOSを起動すれば自動的にインストールが開始される。Virtual Box環境であれば、https://docs.mirantis.com/openstack/fuel/fuel-8.0/quickstart-guide.html#installing-mirantis-openstack-using-the-mirantis-virtualbox-scriptsの手順に従って、シェルを実行するだけで①②は終了する。ファイヤーウォールやウィルススキャンが動いているとインストールが正常に進まないことがあるので注意してほしい。
③OpenStack環境のデプロイ
Fuel UIを使用してOpenStack環境をデプロイする。
- Fuel UIへのログイン(図1-5)
ブラウザから、https://Fuel MasterのPXEネットワークのIP:8443/にアクセスし、ログイン(user/password=admin/admin)
OpenStack Environmentの作成
New OpenStack Environmentを選択して、Name and Release、Compute(Hypervisor:今回はQEMU-KVMを使用)、Network Setup(テナントネットワークの実装方法:今回はNeutron with tunneling segmentationを使用)、Storage Backends(今回はLVMを選択)、Additional Service(今回は未選択)を設定してFinish画面でCreateを実行。OpenStack Environmentの設定(図1-6)
Fule UIからネットワークとノードの設定を入力して、設定を実行。
Networksタブからネットワーク設定の入力は、Default(Public, Storage, Management Private(tunnel用)ネットワーク)、Neutron L2(今回はデフォルトを使用)、Neutron L3(Floating、Internal(teant用)ネットワーク、Guest用DNS)、Other(Host用DNS、NTP)を設定する。各画面でSave Settingを押下。
Nodesタブからノードの構成を設定。Nodeの追加は初期状態で起動しているNodeにRoleをアサイン(ControllerとComputeノード)、選択後Apply Changeを押下。Interfaceの設定(全ノード)は全ノードを選択して、Configure Interfaceを押下。ゲストOSに割り当てられているポートグループに対応するようにネットワークを設定(ドラッグアンドドロップでネットワークを移動)してApply。Diskの設定(Computeノード)はComputeノードを選択して、Configure Disksを押下。/dev/sdbはScaleIOのプールとして使用するので、右上の×を押してUnallocatedに変更してApply。
ネットワーク接続のチェックが必要で、NetworksタブのConnectivity CheckからVerify Networkを実行(1回目エラーになっても、少し待って再度実効するとテストが通ることがある)。
設定の実行はDashboardタブからの変更実行はDeploy Changesを押下。デプロイが終了した画面は図1-7のようになる。
次回は引き続き、ScaleIO(無償版)のインストールと構築を紹介する。