ピボットテーブルは大量のデータを効率的に要約、整理、視覚化するためのMicrosoft Excelの強力な機能だ。その主な用途にはデータの要約、比較、視覚化の準備が含まれ、動的に集計や分析を行うことができる。

基本操作を習得することでデータをリアルタイムに切り替え、視覚化や詳細分析を実現できる。さらにフィルター機能を活用すれば、特定範囲のデータ分析やカスタマイズも簡単に行える。ピボットテーブルは柔軟なデータ分析を可能にするツールであり、業務効率化に役立つのでぜひとも習得しておきたい。

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ピボットテーブルとは

ピボットテーブルの主な用途は次のとおりだ。

  1. データの要約:売上データや顧客データなど、膨大なデータセットから必要な情報を抽出し、指定した基準で合計や平均などを計算する
  2. データの比較:異なるカテゴリーや期間ごとのデータを比較し、傾向やパターンを明らかにする
  3. 視覚化の準備:ピボットテーブルから作成したデータをもとに、グラフやチャートを簡単に作成できる

上記の説明は通常のテーブルにも言えることだが、通常のテーブルとピボットテーブルは「ダイナミック性」が大幅に異なる。

通常のテーブルはデータをそのまま管理・表示する静的な形式であり、集計や並べ替えには手動で関数や操作を加える必要がある。一方、ピボットテーブルはデータを自在に再構築し、柔軟かつ効率的に集計・分析を行える革新的なツールだ。例えば、行や列の配置を変更することで、異なる視点からデータを即座に分析可能であり、条件に基づいた絞り込みや要約も容易に実現できる。

「ピボット」という言葉が選ばれている理由は、この機能がデータの「軸」を中心に視点を切り替えたり、再構造化したりする性質を持つためだと考えられる。ピボットテーブルはデータ分析の中心的な軸を設定し、その軸を基準にデータを柔軟に回転(切り替え)することができる。この動的かつ中心的な特性が「ピボット」という言葉で表現されており、単なる静的なデータ管理ツールとは一線を画している。

基本となるデータは通常のテーブルにまとめ、そのデータを分析するために通常のテーブルをベースとしたピボットテーブルを生成してアクティブに利用するといった使い方になる。

データの確認と整備

データをピボットテーブルで分析するには、まず通常のテーブルを整理する必要がある。ピボットテーブルは「整理されたデータ」を前提として機能するため、データの形式をピボットテーブルに適した形に整える必要がある。具体的には、列ごとに「項目(例: 年月、地域、カテゴリー、値)」を一貫して配置し、各行が一つの観測値を表す形式(縦持ち形式)にする必要がある。また、列ヘッダーには重複や空白を避け、簡潔で分かりやすい名前を付けることが求められる。

次に、データのクレンジングを行う。データには、しばしば空白行、不要な合計行、または不正確なデータが含まれている。これらはピボットテーブルの処理に影響を与える可能性があるため、削除または修正する。また、日付や数値データが文字列として保存されている場合は、適切なデータ型に変換しておく。特に物価指数のような時系列データでは、年月の列が正確にソートできる形式(例: YYYYMM形式の数値または日付形式)になっていることを確認しよう。

  • 「2020年基準消費者物価指数 東京都区部 品目別価格指数(1970年1月~最新月) - e-Stat提供」をピボットテーブルで扱いやすいように編集済みの状態

    「2020年基準消費者物価指数 東京都区部 品目別価格指数(1970年1月~最新月) - e-Stat提供」をピボットテーブルで扱いやすいように編集済みの状態

さらに、ピボットテーブルで必要となる視点を事前に想定しておく。例えば、「地域別の物価指数推移」や「カテゴリー別の年ごとの変化率」を分析したい場合、これらに必要なデータ列(地域、カテゴリー、年月、値)がそろっているかを確認する。不要なデータ列は削除し、分析の視点に応じた整理を行うことで、ピボットテーブル作成後の操作を効率化できる。このようにデータを整理することで、ピボットテーブルを用いた分析がスムーズに進み、データを有効活用できるようになる。

ピボットテーブルの基本操作

それでは、ピボットテーブルの基本操作について説明しよう。

(1)データ範囲の選択とテーブル作成

データ範囲を選択する。データが広範囲にわたる場合は、Ctrl+Aを使用して全範囲を一括選択する。

  • ピボットテーブルで分析したいデータ範囲を選択する

    ピボットテーブルで分析したいデータ範囲を選択する

Excelのメニューから「挿入」タブ → 「ピボットテーブル」→「テーブルまたは範囲から」をクリックする。

  • 「挿入」タブ → 「ピボットテーブル」→「テーブルまたは範囲から」を選択

    「挿入」タブ → 「ピボットテーブル」→「テーブルまたは範囲から」を選択

(2)ピボットテーブルを新しいワークシートに作成

テーブル範囲を確認(必要があれば設定)し、「新規ワークシート」を選択して「OK」をクリックする。

  • テーブル範囲を確認し「新規ワークシート」を選択して「OK」をクリック

    テーブル範囲を確認し「新規ワークシート」を選択して「OK」をクリック

(3)フィールドの設定

列、行、データの設定を行う。ピボットテーブルで表示(分析)したいデータにチェックを入れ、どのデータをラベルとし、どのデータを値とするかを設定する。この設定は右に表示される「ピボットテーブルのフィールド」を操作することで行う。

  • 「ピボットテーブルのフィールド」でピボットテーブルを組み立てていく

    「ピボットテーブルのフィールド」でピボットテーブルを組み立てていく

  • 「年月」と「米類」でピボットテーブルを作成したところ

    「年月」と「米類」でピボットテーブルを作成したところ

ここで作成したピボットテーブルから折れ線グラフを作成すると、次のようになる。

  • ピボットテーブルから作成した折れ線グラフ

    ピボットテーブルから作成した折れ線グラフ

ピボットテーブルは「ピボットテーブルのフィールド」を操作することで、ダイナミックに分析を行える。対象フィールドを切り替えるだけで、グラフに即座に反映される手軽さが魅力だ。この手軽さがピボットフィールドの便利なポイントになっている。

以下のスクリーンショットのように、データとなるフィールドのチェックを外せばリアルタイムにフィールドが非表示になり、その結果はグラフにも反映される。

  • 対象となるフィールドを外した場合

    対象となるフィールドを外した場合