Copilot in Edgeはとても便利な機能でMicrosoft Edgeを大きくパワーアップさせた魅力的なものだ。しかしながら、この機能はあまり広く活用されていないように見える。Copilot in EdgeはWebサーフィンを変える力を持っているので、ぜひとも活用してもらえればと思う。
連載「Copilot in Windowsを使ってみよう」のこれまでの回はこちらを参照。
Copilot in Edgeはページ概要生成が便利
Microsoft EdgeにCopilotが搭載されるようになってから、Edgeは使いやすさがパワーアップした。開いているWebページの概要をすぐに生成できるようになった点が大きい。Webブラウザのシェアは依然としてGoogle Chromeが1番だが、Copilotを搭載していないので不便に思うことがあるくらいだ。
Webページの概要生成はChatGPTでもWindows in CopilotでもGoogle Geminiでも可能だが、URLを貼り付けてから概要生成を指示するという一手間が発生する。Copilot in Edgeにはこの手間がなく、Webページを開いたらそこからマウスでちょいと操作するだけでページ概要が生成される。慣れると手放せない機能だ。
知的好奇心を満たすWebサーフィンの強い味方・Copilot
今回はCopilot in Edgeの使用例として、読んだことのないWebページを読むといったストーリーを取り上げる。
新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)が発生してから、生活や健康を見直すようになった方も多いのではないかと思う。定期的に運動をするようになった方もいるのではないだろうか。
運動は健康とは切っても切り離すことができないほど密接に関係している。しかしながら、歳を重ねていくと運動で得られるメリットと同時に、怪我や筋肉痛というデメリットも目立つようになってくる。若い時ほどの回復力が見込めなくなるため、若い時と同じ運動をしていると怪我をしたり筋肉痛が抜けにくかったりといった事態に陥るようになるのだ。
体をメンテナンスする方法はいくつかあるが、手軽に、しかも自前で繰り返し行うことができる方法のひとつに「マイクロカレント療法」がある。日本はマイクロカレント療法に対応したデバイスが販売されているので、デバイスを購入して治療したい部位に貼り付けて電源を入れるだけだ。
マイクロカレント療法は低周波治療のデバイスと同じであることが多い。低周波治療では筋肉がピクピクと振動するので、なんとなく効いている気がすると筆者自身は思う。低周波治療は電流で筋肉を収縮・弛緩させることで血流を促す方法であり、結果として疲労軽減、痛み緩和、緊張緩和などが期待できるという。一方、マイクロカレント療法は非常に微弱な電流を流して細胞の修復と再生を促すというものなので、人は何も感じない。動いているかどうかも分からない。本当に効いているのかさっぱり分からないのがマイクロカレント療法だと、私は考えている。
こうなってくると実際にどのような効果が期待できるのか、研究論文を調べてみたくなる。
マイクロカレント療法に関する論文はいくつかあり、比較的新しくて内容が分かりやすいものとしては次の研究論文がある。
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Efficacy of microcurrent therapy for treatment of acute knee pain: A randomized double-blinded controlled clinical trial - PMC
今回はこの論文をCopilot in Edgeを使って調べる方法を紹介する。さまざまなドキュメントに適用できる方法なので、自分の興味がある他のWebページなどで試してもらえればと思う。
まずはWebページの概要を生成する
論文と聞くと尻込みしてしまうかもしれないが、専門用語が多いということはあるものの、論文は内容が分かりやすくよくまとまっていることが多い。信憑性はものによるとしか言えないが、読めるようにしておいて損のない情報源だ。
まず、先ほどのWebページを開き、右上のCopilotボタンを押してCopilotパネルを開く。パネルから会話スタイルを「より厳密に」に設定し、「ページの概要を生成する」をクリックする。
次のような概要が生成される。
- 研究の目的: 電気療法、特にマイクロカレント療法が急性膝痛を持つ人々の機能を向上させ、痛みを減少させるかどうかを決定すること
- 研究デザイン: ランダム化された二重盲検プラセボ対照臨床試験
- 結果: マイクロカレント療法は4週間にわたって痛みを有意に減少させ、特に3週目が顕著であった(P<0.01)
- 結論: アクティブなマイクロカレント療法デバイスは膝の痛みを減少させ、機能を向上させた。マイクロカレント療法は、急性膝痛を持つ人々のための薬理学的アプローチと併用または代替として使用される可能性がある
急性膝痛を持つ方を対象に実施して実際にマイクロカレント療法が効果を発揮したかどうかを調査した内容であることがわかる。結果は有意な減少が観測されたとあり、特に3週目が顕著だったとされている。
実際にマイクロカレント療法を使っていると疑問に思うことがある。マイクロカレント療法は極めて低い電流を流して細胞のATP(アデノシン三リン酸)の生成を促進して修復と再生を支援するという考えの治療方法なので、可能な限り長く使った方が効果が出るのではないか、ということだ。幸い、マイクロカレントデバイスの消費電力はとても少ないのでバッテリーはかなり保つ。長く使えば効果が期待できるのなら、最大効果が発揮されるまで使っておきたいと考えるのが人情というものだ。
そこで、Copilotのこの実験で実際に行われたマイクロカレント療法の治療時間を聞いてみる。
このページはマイクロカレント治療をどの程度の長さ実施していますか?
このページによると、マイクロカレント治療は4週間にわたって毎日3時間実施されました。参加者は、治療グループ(n=26)がアクティブなマイクロカレント治療デバイスを自宅で毎日3時間装着し、コントロールグループ(n=26)がプラセボデバイスを同じく毎日3時間装着するという方法で行われました。この治療は、急性膝痛を持つ人々の機能向上と痛みの減少に有効であることが示されました。
実験では1日3時間を4週間続けたという。3週間目に顕著な効果が見られたということは、1日3時間を毎日使うくらいで有意な差が確認できるということになる。万能薬とはいかず、体のメンテナンスは毎日コツコツやらないと駄目なのかもしれない。
どういった根拠があって1日3時間という時間設計になっているのかを聞いてみる。
ここで回答内容が表示されている論文からではなく、Webからに変わってしまった。回答しにくい内容だった可能性がある。「webを使用しています」という部分をクリックして、ここを表示しているWebページになるように再選択する。
今度は次のような回答が得られた。
このページによると、マイクロカレント療法の研究では、被験者が自宅で毎日3時間装置を使用することが推奨されています。この時間設定は、以前のマイクロカレント療法の研究から推定されたものです。具体的な理由は、他の研究で高いコンプライアンスが示されたため、この研究でも同様の時間枠が採用された可能性があります。また、毎日一定時間装置を使用することで、痛みの軽減や機能の改善が期待できると考えられています。ただし、この研究では、1日3時間の使用が最適であるという明確な証拠は示されていません。将来の研究では、1日の使用時間を変えて、特定の急性膝痛や機能に対する変化や、浮腫や組織治癒におけるマイクロカレントの役割をさらに調査することが提案されています。
この論文では1日3時間という時間設計の理由は掲載されておらず、引用している他の論文が採用している時間設計をそのまま使っているといったことが説明されている。適用時間に関してはまだ研究不足であり、最適な時間についてはよく分かってないというのが現状のように読める。
ではその元となった論文を教えてほしいと伝える。
このページで、1日の実施時間を3時間にした元になった研究論文を教えてください。
このページには、1日3時間の治療時間が決定された研究についての具体的な言及はありません。ただし、マイクロカレントセラピーに関する他の研究が参照されており、その治療時間を推定するための基準となった可能性があります。このページの情報に基づいて、以下の要点をまとめました:
- マイクロカレントセラピー: FDA承認のデバイスで、治療効果を得るために体に非常に小さな電流(1mA未満)を適用します
- 治療時間の推定: 他のマイクロカレントセラピー研究からの推定に基づき、1日3時間の治療が行われました
- 関連研究: マイクロカレントセラピーの効果に関しては、様々な結果が報告されており、一部の研究では痛みの軽減が見られたものの、他の研究ではそのような証拠が見つかっていません
- 研究の目的: この研究は、急性膝痛を持つ人々において、マイクロカレントセラピーが機能の向上と痛みの減少をもたらすかどうかを観察することを目的としています
詳細な研究論文やその他の情報については、このページに記載されている参考文献リストをご確認ください。また、特定の研究に関する情報が必要な場合は、関連する学術データベースや出版物を直接調べることをお勧めします。
ベースとなっている論文は提示されていない。現在のCopilotが答えることができるのはここまでのようだ。あとは手動で該当部分を探して読んでいく必要がある。
なお、今回欲しい情報は論文の次の個所の説明が該当している。
このように途中まではCopilotを使って内容を調べていくことができる。言語モデルがバージョンアップした場合、引用元になっている論文も答えることができるようになるものとみられるので、今後の発展が期待されるところだ。
Copilot in Edgeは時短効果がすごい
今回行ったような内容は、生成AIの登場以前であればすべて自力で行っていたことだ。論文を探し出して、その概要を読んで内容を推測し、それに基づいて論文をざっと読む。詳しく知りたい部分を後でもう一度読んだり、関連する論文をさらに調べて同じことを繰り返していく。
全ての作業をCopilotが代替してくれるわけではないが、多くの部分をCopilotが代替してくれている。この代替でもたらされる時短効果は素晴らしいものがある。空いた時間は他の調査や業務に当てることができるので、使わない手はないわけだ。
Copilot in Edgeはとても便利な機能だが、まだそれほど知られていないように見える。とても便利な機能なので、ぜひとも活用してもらえればと思う。
付録: ショートカットキー
ショートカットキー | 内容 |
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「Windows」+「C」 | Copilot in Windowsの表示・非表示を切り替え |
付録: 対応バージョン
OS | バージョン |
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Windows 11 | Windows 11, version 22H2以降 |
Windows 10 | Windows 10, version 22H2以降のProおよびHome |
参考
- Copilot in Windows & Other AI-Powered Features | Microsoft
- Copilot documentation | Microsoft Learn
- Adopt, extend and build Copilot experiences across the Microsoft Cloud | Microsoft Learn
- Bringing the power of AI to Windows 11 - unlocking a new era of productivity for customers and developers with Windows Copilot and Dev Home - Windows Developer Blog