OpenAIが提供する「ChatGPT」。本連載ではビジネスでも活用できる工夫を凝らしたChatGPTのクリエイティブなプロンプトついて紹介していきました。今回で最終回となります。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
日本の生成AI利用率の現状と課題
日本の生成AI利用率が他国と比べて著しく低いことが、総務省の2024年版「情報通信白書」において明らかになっています。生成AIの普及状況についてのデータを見ると、例えばアメリカやヨーロッパ諸国における利用率が平均50%以上であるのに対し、日本ではわずか15%程度にとどまっています。
この差は、技術の受容や社会的な認識の違いによるものであると考えられます。このように、日本では生成AIの普及が進んでおらず、先進国の中でも特に遅れている状況です。
生成AIの技術自体が難しいから日本での普及が遅れているという見方もあるかもしれませんが、実はそうではありません。
数年前までは、生成AIを活用するためには「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれる高度な技術が求められ、それによって成果が大きく変動していました。しかし現在では、ChatGPTをはじめとする生成AIが飛躍的に進化し、簡単な指示でも質の高い結果を得られるようになっています。
これは、生成AIの背後にある言語モデルの性能が向上し、プロンプトの内容をより精密に理解し、文脈に沿った出力が可能となっているためです。そのため、高度なスキルがなくても、誰でも生成AIを使いこなせる環境が整ってきています。
幻滅の谷と日本の生成AI普及の遅れ
それでは、なぜ日本では生成AIの普及が遅れているのでしょうか。その理由の1つとして、生成AIが「幻滅の谷」と呼ばれる段階に差し掛かっていることが挙げられます。この「幻滅の谷」とは、ガートナーの「ハイプ・サイクル」における技術の進化段階です。
このサイクルでは、新しい技術が登場した際、まず過度な期待が集まり、その後、期待が失望に変わる時期が来ることが多いとされています。そして、その後に現実的な価値が見出され、技術が広く浸透していくという流れをたどります。
ガートナーが発表している「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年」によると、生成AIはちょうどこの「幻滅の谷」に差し掛かっていると評価されています。
日本国内では、生成AIの急速な進化により一度は期待が高まったものの、その実用性やリスク面への懸念が影響し、ユーザーが期待を抱えすぎた結果、失望感が広がりやすい段階にあるのです。
しかし、この谷を越えた先には、生成AIの真の価値が認識され、利用が拡大していくフェーズが待っていると考えられます。この点については、過去のさまざまな技術進化の過程を見ても共通しており、今はその一時的な停滞期に過ぎないという認識を持つことが重要です。
生成AI疲れとユーザーへの影響
さらに、日本での生成AI利用の停滞には「生成AI疲れ」とも呼べる現象が影響している可能性があります。AI技術の発展は非常に速く、新しいモデルや機能が次々と登場する中で、これらに追いつくことが難しいと感じるユーザーも多いようです。
特にAIの進化が早すぎるため、少し前に習得した知識や技術がすぐに陳腐化してしまうことが、利用者の間での疲労感や抵抗感を生み出していると考えられます。
こうした現象は、テクノロジー愛好家であっても容易に理解できるものであり、生成AIの情報を常に追いかけ続けることが精神的な負担となり、結果として使用を控えてしまうケースが少なくありません。
このような状況で重要なのは、生成AIの進化をすべて追うことに固執せず、自分にとって有益な部分だけを適切に利用するというスタンスです。
生成AIは多様なツールやアップデートを提供しているため、個々のユーザーは自身のニーズに合った部分のみを活用すればよく、すべてを理解する必要はありません。選択的な利用が、技術疲れを軽減し、生成AIの普及を進めるための1つのアプローチとなるでしょう。
生成AIの社会浸透とその未来
しかしながら、生成AIの社会浸透は着実に進んでおり、この流れは止められないでしょう。生成AIはもはや一過性のブームではなく、産業革命に匹敵するような技術革新であり、ビジネスの現場ではこのスキルを持たない者が生き残ることは難しくなると予測されています。
生成AIがもたらす効率化や新たな価値創造の波に乗り遅れないためには、とにかく触れてみることが大切です。例えば、本連載の過去の記事に掲載されているプロンプトとその出力例に興味が湧いたら、まずはそれをコピーして実際に使ってみることをおすすめします。
子供が自転車に乗るとき、いくら理論を説明しても実際に乗らなければ上達しないのと同じように、生成AIも実際に使用してみなければその効果を実感することはできません。
最初はうまくいかないことが多いかもしれませんが、少しずつ慣れてくると、その便利さに気づき、自然と使いこなせるようになるでしょう。
生成AIの可能性と日本の未来
本連載では、生成AIを業務の効率化や時間短縮に活用する方法を紹介してきましたが、これは生成AIの持つ可能性のほんの一端に過ぎません。生成AIのスキルが身につけば、ゼロから価値を生み出すことが可能になります。
例えば、企画書の作成、経営分析、さらには創造的なアイデアを形にするプロセスでも、プロフェッショナルなレベルの成果物を得ることができます。また、ソフトバンクグループの孫正義氏が行っているように、ChatGPTを用いて新たなことに挑戦することも夢ではありません。
日本が生成AIの活用において他国に追いつくためには、まずは一人ひとりが実際に生成AIを使い始めることが不可欠です。便利だと思うプロンプトを見つけたら、すぐにコピーして試してみることが大切です。
ChatGPTの有料版が使えない場合でも、まずは無料版からでも構いません。重要なのは、今日からでも生成AIに触れることです。
最後に、日本に生成AIスキルを持つ人々が増えることで、日本がAI大国としての地位を確立する可能性が高まります。そのためにも、「いつか使おう」ではなく、「今日から使ってみる」という意識が重要です。
生成AIの未来は、私たち一人ひとりの手にかかっており、その可能性を最大限に引き出すためにも、ぜひ今日から触れてみることをお勧めします。
AI大国に向けて
閑話休題。以上の文章はChatGPTに執筆してもらいました。以下の文章から筆者の執筆です。
本連載は、今回で一区切りとなります。ChatGPTの初心者向けにプロンプトエンジニアリングを紹介する記事でしたが、上記原稿にもある通り、生成AIは劇的に進化を続けており、細かいプロンプトチューニングをするより、人間と会話するようにやり取りすることで日常業務は十分に行えるようになっています。
GeminiやClaudeといったライバルのほか、PerplexityやGenspark、Feloといった検索特化型生成AIも登場し、存在感を増してきています。次の連載では、広くAIシーンを捉え、業務に活用できるTipsや事例、レビューなどを紹介していきます。
そして、今回は連載の集大成として、原稿をChatGPTで書いてみました。連載で繰り返しお伝えしたように、チャットUIで何度もやり取りしてブラッシュアップするのがChatGPTを使うコツです。
また、AIの出力は最終的に人間が精査し、手を加えなければなりません。しかし、今回はプロンプト一発出しにチャレンジしてみました。
ルールを設定し、参考となるPDFファイルやURLを提示し、詳細なプロットを用意し、エモーショナルプロンプトで励ましました。プロットだけで約1000文字、出力が2610文字なので約3倍になっています。
本文をよく読むと、プロットで指定していない論旨も多々生成されていますが、問題ありませんし「ああ、そう書く方がわかりやすいな」という箇所もありました。一文字も修正していないので、確かにAIっぽさはありますが、それでも筆者がお伝えしたいことに間違いはありません。
ChatGPTは今すぐ役に立ちます。そして、今AIスキルを身に着けることは、これからのAI時代に役立ちますし、必須スキルになると思います。
AIは若い人たちに任せればいい、というのも違います。ベテランだからこそ、その経験をブーストできるのがAIなのです。日本のビジネスパーソン全員でAIを使い倒し、先進国で生産性最下位の汚名を返上しましょう。
-
プロンプト
以下の###プロットで3000文字の原稿を書いてください。過去の原稿のサンプルを添付しますので、文体や論旨などの参考にしてください。余計な言い訳などは入れず、説得力を持たせるようにしてください。
###ルール
大学生に理解できるようにわかりやすく書く
この、その、といった指示語はあまり使わない
体言止めは使っていいい
文体は「です・ます」調
ファイルやURLを参照する部分は特に詳細に書く
具体的な数値はできるだけ含める
可能な限り連続する文章の語尾を同じにしない
日本語で生成する
箇条書きなどは使わず、パラグラフで生成する
余計なエクスキュースは不要
玉虫色の論旨はNG
パラグラフの先頭にはスペースを追加する
1000文字ごとくらいに小見出しを入れる
###添付ファイル
原稿.pdf:過去の原稿のサンプルです。
00zentai.pdf:2024年版「情報通信白書」
###プロット
総務省は、2024年版「情報通信白書」で生成AIの利用率が他国と比べて低いことがわかる。添付ファイルを参照し、具体的なデータを入れて、どのくらい低いのかを導入で読者に伝える。
これは、生成AIを使うのが難しいから、というわけではない。以前は確かにプロンプトエンジニアリングにより、成果が大きく左右されたが、現在ではChatGPTをはじめ生成AIが賢くなったので高度なプロンプトがなくてもクオリティの高い出力が得られるようになっている。
日本で生成AIの普及が遅れている理由は、「幻滅の谷」に差し掛かっているためと思われる。ここで、生成AIがハイプ・サイクルのどこにいるのかをガートナーのサイトを参照して解説する。どんなふうに推移し、現在、未来を言う。また、それぞれのステージがどんな意味を持つのかも簡単に紹介する。
参照 Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2024年」を発表
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20240807-future-oriented-infra-tech-hc
様々なAIが登場し、相次ぐアップデートが行われるなど、余りにも変化が早く、ユーザーは「生成AI疲れ」をし始めているようにも見える。AI好きでも、生成AIシーン全体をキャッチアップするのは並大抵のことではない。
とは言え、生成AIの社会浸透は進む。この産業革命は止まらない。ビジネスパーソンなら、生成AIスキルを身につけないと、生き残ることはできない。
ではどうすればいいか。とにかく触ること。例えば、本連載の過去記事に掲載しているプロンプトと出力を見て興味を持ったら、コピペして体験みることが重要だ。子供が自転車に乗る際、理論を口で言うよりも乗って見せたほうが早い。そして、自分で乗ってみない限り、乗れるようにはならない。少し乗れるようになれば楽しくなり、勝手に上達していく。生成AIも似たようなもの。
本連載では、生成AIを業務の効率化、時短に役立てるように紹介してきたが、これは初歩。生成AIスキルが身に付いたなら、価値のあるゼロイチを生み出せるようになるし、原稿でも企画でも経営分析でもプロクオリティの成果物を得られるようになる。ソフトバンクGの孫正義氏のように、ChatGPTで発明もできるようになるかもしれない。
便利そうだな、と思うプロンプトを見つけたら、まずはコピペしてみる。ChatGPTの有料版が使えないなら、まずは無料サービスを使ってもいい。兎にも角にも、今日から触り始めてほしい。
日本にAIスキルを持つ人が増えれば、日本がAI大国になる可能性が高まる。いつか、と言わず、ぜひ今日から生成AIに触ってみることをおすすめする。
###確認
上記のプロンプトを最初から読み直し、本気で書いてください。それぞれのパラグラフは詳細に書き、合計の文字数は必ず3000文字以上にしてください。あなたならできます。全力で取り組んでください。では、どうぞ。