いよいよフィギュアの地肌部分を複製していきます。まず、型にシリコンゴムを流します。シリコンゴムの主剤に硬化剤を混ぜて攪拌して、化学変化で硬化させます。硬化剤の量の加減で、硬化時間をある程度調整できます。だいたい指定量の0.8倍~2倍の範囲内で硬化剤の量を調整して、硬化時間を変えます。ちなみに、シリコンやキャスト等市販の物は「硬化」したように見えても、実は化学変化は終わっていません。加熱や時間経過が必要な半生状態にあるので、注意が必要です。当然ですが、硬化剤が多くなるほど、硬化時間は短くなります。商品によっては、夏場だと指定量の硬化剤だと攪拌中に硬化が始まってしまう物もあったりします。

攪拌したシリコンゴムを2~3分置いて、攪拌のとき捲き込んだ空気が浮かんできたところで、原型をセットした型に流し込みます。ある程度、原型がシリコンで覆われたら、攪拌棒などでシリコンを原型に擦り付けます。

原型をしっかりと流し込んだシリコンで覆っていく

こうして、原型の細かいところにまでシリコンを入り込ませます。この作業を雑にすると、気泡(空気の粒)が入り込んでしまうので、静かに丁寧に、素早く行います。

注いだシリコンが手に付着しない程度に硬化したら、次のステップです。型に利用した紙コップを破いて、♀型を取り出します。

紙コップを破くと、複製用の型が出来ている

硬化後でも、柔らかいシリコンを使うか、ある程度柔らかい間は、写真のように型を変形させて、無理やり原形を取り出せます。

型には、ある程度の弾力がある

手の部分は頭より壊れやすいので、型を少し切りながら原形を取り出します。

このように型に切れ目を入れる

原形が壊れても構わないなら、無理に外せば良いのですが、1回で♀型が上手く取れるとは限らないので、ここは慎重に作業します。これで、複製用の♀型が完成です。

ついに複製用の型が完成

次回、この型を活用して、地肌部分のパーツを作っていきます。

安藤賢司
バンダイ『S.I.C』シリーズなど、多数のハイエンドな玩具の原型を担当。「原型師がマスプロダクツ製品のパッケージに名前を刻まれる」という偉業を成し遂げ、「玩具原型」の認識を「作品」のレベルまで高めた。『S.I.C』シリーズ最新作の原型を常に製作中。アニメ『TIGER & BUNNY』のデザインにも参加

次回、原型を超えた複製品が生まれる?