今回から、いよいよフィギュアを複製していきます。前回の説明で、「逆テーパー」と書きました。これは、下図のように、シリコン製が♀型の場合、複製を抜き取る方向に対して、原型に引っ掛かりがあり、♀型を変形させないと複製品を抜き取れないということを指します。

これが「逆テーパー」の状態

今回の複製では、♀型にキャストを流し込む時に、通常の方法ではキャストが流れ込まない(回らない)箇所を指します。原型の頭部、特にアゴの周囲に空気が溜まり易くなる可能性があります。解決策はいろいろありますが、最初にすべきは、原型をカップに貼り付ける角度に注意することです。角度を調整するため、原型とカップの張り合わせ面に「ゲタ」をはかせます。「ゲタ」の素材は何でも構いません。キャストクズ、プラ板、粘土、スカルピー等、目の前に転がっているもので事足ります。

しっかり複製するために原型の固定角度/位置を調整する。右画像が調整を行ったもの

それでも空気が抜けない場合は、♀型を傾けたり、型を加工して、空気の抜け道を作ります。♀型を変形させると言う方法もあります。

そもそも、今回の造形では、なぜこのような手間をかけてフィギュアの手と頭だけ複製するのか、その理由を遅ればせながら説明したいと思います。それは、複製に使うキャスト(今回はハイキャストアイボリー)の色を肌色に反映させたいたからです。そのために、露出している、手と頭の部分のみをキャストに置き換えようとしています。

それでは、いよいよ次回より複製作業に入っていきましょう。

安藤賢司
バンダイ『S.I.C』シリーズなど、多数のハイエンドな玩具の原型を担当。「原型師がマスプロダクツ製品のパッケージに名前を刻まれる」という偉業を成し遂げ、「玩具原型」の認識を「作品」のレベルまで高めた。『S.I.C』シリーズ最新作の原型を常に製作中。アニメ『TIGER & BUNNY』のデザインにも参加

次回、匠の分割複製全て見せます!