フランスの西南部にあるラスコー洞窟は、15,000年前にクロマニョン人によって描かれた壁画で有名な場所。有名な洞窟なので検索すれば様々な情報を手に入れることが出来ますが、フランス文化省が運営する特設サイト「La grotte de Lascaux」は、国だからこそ出来る情報提供を実現しているサイトです。
国や研究機関だからこその情報価値
例えばWikipediaのようなサイトへアクセスすれば歴史や壁画に関する概要を画像付きで観覧することが出来ます。日本語の情報も豊富で個人・著名人が執筆した詳細なレポートも読めます。つまり単にラスコー洞窟について知りたいという要望であれば、他のサイトで十分満たすことが出来るだけでなくFlashという観覧者を待たせるサイトを構築するメリットはありません。
しかし、国であれば概要以上の公式情報を観覧者に提供することが可能です。発見されて以来70年経っているラスコー洞窟ですが、最新技術を駆使した洞窟の解析や、周りで暮らしていた人々の模様など今でも新しい発見があります。こうした公式情報を保持している国や研究機関がWeb上で公表することが他のサイトには出来ない価値であり、差別化にも繋がります。
Flashで作られている理由
特徴的なのがラスコー洞窟の全体像を3D映像で再現したナビゲーション。フルスクリーンで映像が表示されるので自分が実際その場にいるかのような疑似体験が出来るだけでなく、洞窟のどの部分にどの壁画があるのかも分かります。この3D映像も2005年から2006年に制作されたもので、このように貴重な映像をナビゲーションとしてサイトに取り込めるのもこうしたサイトならではです。
写真はほぼすべてフルスクリーンで観覧出来るようになっており、大きめのモニターにも耐えられる高画質写真を利用しています。テキストも専門的ではありますが簡潔にまとめられており、読むより見て体験してもらうことを前提にしたサイトになっています。他では見れない映像や写真を惜しみなく大きく見せるにはFlashが最適といえるでしょうし、こうした資料を公開出来るのも国ならではの『力』ではないでしょうか。
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「Resources」 では、サイトに掲載されているテキスト・画像・映像すべてをまとめて見れます。検索やメディアタイプごとに絞り込むことも出来ます |
Webは動的で情報が早い場ではありますが、こうした研究資料は年々新しい発見があるとはいえ、頻繁に更新するものではありません。また、研究・調査だからこそ途中経過を発表出来ない場合もあります。つまり柔軟性がありCMSとの親和性の高いHTMLで作る必要がなく正確な情報を公開出来るタイミングで存分に体験してもらうという目的であればFlashでも十分役割を果たすことが出来ます。
Flash版とHTML版が用意されているワケ
ラスコー洞窟を体験してもらいたい、最新の研究結果を見てもらいたいという目的はFlashでも十分ですが、より多くの方に魅力を伝えたい、教育にも役立つ資料サイトでありたい場合HTMLが有効です。
Flashはパッケージングした体験を提供するのに優れていますが、誰でもアクセス出来る場ではありませんし、より早くスピーディに見たいという要望を満たすのが難しいです。サイトでは全コンテンツのHTML版が用意されており、Flashをインストールしていない方やコピー&ペーストしたり、印刷をしたい方に便利です。HTMLページとFlashコンテンツが連動されており、特定のHTMLページのFlashバージョンのページへワンクリックでアクセス出来ます。Flash版でも「Resources」というページにテキスト、写真、動画すべてをまとめて観覧出来る場を用意しており、利用者に体験を強制させず選択肢を与えています。
配信できる情報を吟味する
概要のような表面的な情報であれば検索ですぐに見つけることが出来ます。そんな今だから、サイト運営側は自分たちだからこそ配信出来る情報は何かを吟味しなければいけません。
今回紹介したラスコー洞窟のサイトは自分たちだけが提供出来る情報のみにフォーカスしているだけでなく、それを上手くFlashサイトとして活かしている一例といえるでしょう。また、Webは主導権が利用者にあることを十分に理解し、様々な選択肢を与えている点でも単なるFlash製プロモーションサイトとは異なります。