サイト自体に工夫をこらして構築/デザインするのは、もちろん重要です。ただ、精魂込めて作成したサイトも、リーチしたいユーザのタッチポイントとして機能しなければその価値は下がります。よりダイレクトなコミュニケーションを想定するならば、あえて人の集まる場所にサイトを公開するというのもひとつの方法に違いありません。今回、紹介するのはウェブサービスを上手に利用したウェブサイトの好例と言えます。

YouTubeで擬似的にサイト体験

キャンペーンの一環としてYouTubeを利用する方法は数年前からある手法ですが、公式サイトを YouTubeに『ホスティング』したのがノースカロライナ州の広告代理店Boone Oakley。1ムービーを1ページとみなして普通のサイトのように構成されています。YouTubeには動画にコメントを追加するアノテーション機能がありますが、これを使うことによってコメントだけでなくURLも追加することが出来ます。アノテーションを使って複数の動画を繋ぎ合わせることにより、擬似的に普通のサイトのような体験を実現しています。5月末に公開されたサイトですが、6月2日現在で既にトップページだけでも2万以上の方に視聴されています。

[http://booneoakley.com/]と入力すると自動的にYouTubeのこのページへリダイレクトされます

ビデオのどこに何があるのか分かる矢印がタイムラインについているので、見たい情報へすぐに行けます

メインメニューから次のコンテンツへ進むのも、まるで普通のウェブサイトのような構成。ただし全部ビデオ

人が集まる「場」にサイトを立ち上げる

Boone Oakleyのような広告代理店が掲載したい作品の多くは動画になります。よって広告代理店のウェブサイトは Flashで構築されている場合が多いです。フルFlashにすると、サイト全体の雰囲気は作りやすいものの、メンテナンスが難しい場合があります。サイトを公開してデザインコミュニティで話題になることがありますが、広告代理店が本当にリーチしたい相手へ届かない場合も少なくありません。孤立した場所にサイトを立ち上げるのではなく、人々が集まる場にあえて置いたのがBoone Oakleyのサイトです。単に作品を公開するのではなく、サイトそのものを作ってしまおうというのが広告代理店らしいひねったアイデアです。Boone Oakleyの作品は少し毒が効いたコメディタッチのものが多くYouTubeという場との相性も良かったのでしょう。

アノテーション機能を利用してビデオからビデオへのリンクを実現しています

アノテーションに関する詳しい説明はYouTubeのヘルプを参照してください。リンクの埋め込みだけでなく表示時間の設定やハイライトの追加などが出来ます

YouTubeだけではありませんが、動画共有サイトには視聴者がコメントや評価を付ける機能だけでなく、他のサイトに動画を貼付けたり、リンクを送る機能といった放射状に作品を広めるためのツールが豊富に揃っています。世間に広く宣伝するという広告の仕事をしている企業が、自社のサイトを使って実践するとしたら何が良いのかという応えがYouTubeだったのでしょう。

手描きに拘ったコンテンツ。クライアントの企業ロゴも手描きになっており、写真は最小限に抑えられています

チャンネルページでは、作品をはじめ登録者も一望が可能。公式サイトが視聴者と直接つながる窓口になっています

ウェブサービスを使っていかにプロモーションするか

公式サイトを、他社サービスの一部へ置くという手法は数年前では考えられませんでしたが、目的とホストするサービスがもつポテンシャルがマッチしているのであれば、利用する価値は十分にあります。自分のサイトにたくさんの方に来てもらいたいというのであれば、むしろ今回のようにYouTubeに置いた方が効率が良いです。ウェブサイトを作ってプロモーションをするだけでなく、ウェブサービスをどう使ってプロモーションをするのかもデザイン会社や広告代理店の腕の見せ所といえるでしょう。

お問い合わせページ。さすがに住所や電話番号のコピペは出来ませんが、リンクをクリックすると YouTube 経由でメッセージを送ることが出来ます