近年、スマートフォンをはじめとした携帯デバイスに向けて情報発信していた企業サイトも iPhoneに特化したページを公開している例が幾つかみられます。フォルクスワーゲンもその中のひとつですが、パソコンでみる企業サイトとは異なり削がれたサイトになっています。スクリーンサイズが小さいので操作に制約があるだけでなく、モバイルユーザーも目的が明確な場合が多いはずです。企業からすればたくさんの情報を提供したいという思いがありますが、あえて利用者のニーズのみに応えることに注力する必要があります。

iPhone版のフォルクスワーゲンのサイトは「車種をみる」「ディーラーを捜す」「緊急連絡を行う」という3つのアクションで構成されています。パソコン向けのWebサイトのナビゲーションにみられるラベリングではなく、アクションベースにしているのもモバイルらしいアプローチといえます。ほとんどのページでスクロールをあまり必要とせずモバイルの環境でみることを考慮したコンテンツにもなっています。

選択出来る機能が3つしかないシンプルなインタフェース

何か事故があればワンタップですぐに連絡が出来ます

例えば車種のページをパソコン向けのサイトと比較しても技術仕様や保証など様々な情報をじっくり読めるのに対し、モバイル版ではその車種の特徴を数アイテムほどリストアップするだけに留めています。写真をフルスクリーンで大きく見えるような工夫がされていますが、詳しくはディーラーへ問い合わせてくださいという導線へ引いて詳しく語らないのも現実的なアプローチといえるでしょう。

車種を選ぶページ。右側の大きなボタンが印象で気ですが、車の写真や社名などどこをタップしても車の詳細ページへ移動出来、選択がしやすくなっています

車の詳細ページにはその車について知るための必要最低限に絞られて掲載されています。こちらからギャラリーを観覧することも可能です

スクリーン全体で閲覧出来るギャラリーページ。iPhoneを縦にしておくと「横にしてご覧ください」というメッセージが表示されます

問い合わせ先へと繋げるためのディーラー検索もシンプルで、モバイルで操作しやすい環境を整えています。入力専用のテンキーインタフェースを提供しており、iPhoneにビルトインされているキーボードを使うことなくそのままタップするだけで入力することが可能です。テンキーのルックアンドフィールもiPhoneのものと似せているので直感的にタップして使えるという機能を伝えています。小さな機能ですが、これがあるとないとでは郵便番号の入力に違いが生じてきます。

ディーラーのページにはショップ情報だけでなく、ワンタップで電話が出来たり地図を見るためのボタンが用意されています

ZIPコード(郵便番号))入力の際にはテンキーインタフェースで表示されます。iPhoneのキーボードを使う手間が省けるので入力が素早く行えます

地図アイコンをクリックするとGoogle Mapsが起動し、場所について詳しく知ることができます

HTML5やCSS3といったiPhone版Safariの特性を活かした技術を盛り込んでいるわけでもなく、パソコンで見たとしてもそれなりの動作をします。アプリとしてリリース出来そうな内容ですが、あえてWebアプリケーションにしているのも印象的です。

パソコン向けのWebサイトは JavaScript とスクリーンサイズを利用した豊富でインパクトのあるレイアウト。情報検索やプロモーションなどコンテンツが豊富だが、ページ中央にはディーラーを捜す検索フィールドが用意されており、このコンセプトはiPhone版にも受け継がれています

iPhone向けではない別途用意されているモバイルページ。インターフェイスは洗練されていないがサイトコンセプトや機能はiPhone版と同じです

日本版のモバイルページ。USサイトのようにディーラー請求やカーラインナップが観覧出来るようになっていますが、バナーやキャンペーンに関する情報が多く広告としての要素が強いです

現時点で分かっている技術を駆使し、アプリ開発をすることなく低コストでiPhone利用者のニーズに応えることが出来るという好例といえます。利用者のニーズに応えるとは、考えられる情報や機能をすべて盛り込むのではなく利用者がアクセスするシーンを想定して、そのときに丁度良いと考えられる情報と機能を提供することであるということをフォルクスワーゲンのサイトは教えてくれます。