生成AI御三家のひとつ、そして今一番勢いに乗っているClaudeを提供するAnthropic(アンソロピック)が、有料プランのユーザーに向けて提供している「Claude in Chrome」が注目を集めています。→過去の「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の回はこちらを参照。
これまでAIアシスタントは、別の画面で質問に答えてくれる相談役という立ち位置でした。しかし、「Claude in Chrome」はブラウザのサイドパネルに常駐し、ユーザーの指示に従ってウェブサイトの閲覧やクリック、フォームの入力といった実際の画面操作までを直接代行します。
「要約して」といったようなシングルタスクではなく、調査した情報をPowerPointのスライドにしたり、定期的に利用する路線の運行状況を報告するといった作業をエージェントのように遂行してくれるのです。今回は、Claude in Chromeの使い方について解説します。
複数タブの横断や複雑な情報収集を自然言語だけで完結させる
Claude in Chromeの最大の魅力は、人間が普段行っているブラウザ上のマウスやキーボード操作を、AIが直接認識して自律的に実行できるところです。単純な操作なら自分で行った方が速い場面もありますが、複数の繰り返し作業が発生するタスクをまとめて任せられるのは魅力的です。
まずは、Chromeウェブストアから「Claude」をインストールしましょう。
通常、Chromeの拡張機能はChromiumベースのブラウザでも利用できるのですが、Claude in ChromeはChromeのみサポートしています。試しにインストールしてみたところ、ChromiumベースのEdgeやVivaldiでは設定を完了できませんでした。
拡張機能に追加された「Claude」アイコンをクリックすると、右側にサイドパネルが開きます。下部のフォームにプロンプトを入力すると、Claudeが応答してくれます。Webページの内容を要約してもらったり、わからないところを質問したりできます。
タブグループをまとめて扱うことも可能です。たとえば、IT媒体など情報源となりそうなウェブページを多数開いた状態で「このタブグループの最新記事を読んで、AIに関する内容で、ビジネスパーソンが興味を持ちそうなネタを重要度順に10個教えてください」のように指示すればいいのです。
なお、AIの誤動作による被害を避けるために、何かブラウザ操作を行う際は、ユーザーの確認を求めてきます。実行する内容を確認し、問題ないなら「このアクションを許可」をクリックしましょう。
Webページを閲覧したり、キーワードを入力するくらいなら確認は不要、というのであれば、「このサイトでは常にアクションを許可する」をクリックしてもよいでしょう。
すると、Claudeがすべてのタブを読み、判断したうえで、10個の記事を提案してくれます。もちろん、人間がすべてのサイトを開いて、隅から隅まで読んでも同じことができますが、圧倒的に時短できるのがメリットです。
このように、秘書に新聞の切り抜きを用意してもらうような感覚で、作業そのものを丸ごと任せられるのがAIエージェントのメリットなのです。
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プロンプト
このタブグループの最新記事を読んで、AIに関する内容で、ビジネスパーソンが興味を持ちそうなネタを重要度順に10個教えてください。
一次情報からSaaSを比較するプレゼン資料を作成
もちろん、何か調べ物をしてもらう時にも使えます。例えば、欲しい商品がある時に一番安いショップを知りたいとか、何らかの口コミを調べたいといったときにも活躍してくれるのです。
今では、生成AIにはWeb検索機能が搭載されています。Perplexityのような検索特化型のAIサービスもあります。それでも、目的によっては、手を動かしてブラウザを操作するClaude in Chromeの方が優れているケースが多いのです。
例えば、筆者が先月執筆したすべての記事を調査してもらったところ、Perplexityは4本、Claudeは7本、Geminiは8本、ChatGPTは10本と回答しました。一方、Claude in Chromeは39本と報告してきました。ほぼ正解に近い数です。
Claude in Chromeは、対象人物が執筆していそうな個別のサイトを実際に開き、サイト内で直接キーワード検索を行うといった、人間が行うような泥臭いリサーチを自動でやってのけます。検索エンジンを経由するだけでなく、特定のウェブサイトの内部まで自律的に探索できるため、情報収集の精度が高くなるのです。
ビジネスシーンで頻繁に発生する競合調査や資料作成にもClaude in Chromeが使えます。例えば、SaaS(Software as a Service)の料金などを調べる際、Google検索で一般的なブログを見たり、生成AIに聞いたりしても、情報が古いことが多々あります。
そこで、Claude in Chromeに一次情報を当たってもらい、その情報をまとめ、比較するプレゼン資料を実際に作成してもらいましょう。
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プロンプト
Slack、Chatwork、LINEWORKSの料金ページを開いて、プラン名・月額・主な機能の違いを比較表にまとめて。最後に、PowerPointファイルを作成してください。
少々時間はかかりますが、指示通りに3つのサービスの公式Webサイトを順番に巡回し、料金体系や機能一覧のページを探し当てて情報を抽出します。そして、集めたデータをわかりやすい比較表に整理し、PowerPointファイルとして出力するところまでを一貫して行います。気が付いたら、ファイルがダウンロードされている、という手放し感が最高です。
カスタマーサポートのようにヘルプ代わりで活用
初めて使う業務ツールや設定画面など、操作が難しい画面でヘルプ代わりに使うのもおすすめです。たとえば、Microsoft 365の管理画面を開き、サイドパネルから「●●がどんなアプリを利用する権限があるのか調べて」などと尋ねれば、実際の画面構成を読み取って自動的に調査し、さくっと回答してくれます。
「Wordは使えますか?」といった、その結果に対する質問にも対応してくれます。まるで、サポート担当がつきっきりで面倒を見てくれている感じです。もう、ヘルプサイトや解説ブログを探し回る必要はありません。
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プロンプト
ユーザー名がどのアプリを利用する権限があるのか調べてください。
さらに、Claude in Chromeは、日々のルーチンワークを自動化できる「定期実行(スケジュール)機能」を搭載しています。天気予報や自分のブログのPV数、路線状況といった定期的な情報収集などを完全に自動化できます。
たとえば、「毎朝、通勤で使う路線の遅延情報をチェックしたい」といったケースで試してみましょう。まずは普通にプロンプトを入力して、Claudeに一度タスクを実行させます。
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プロンプト
小田急線の運行状況を報告してください。
無事に実行できたら、そのやり取りのメニューにある「…」アイコンをクリックし、「タスクに変換」を選びます。
ショートカットの作成画面が開いたら、自動実行するタイミングを指定します。これで、Chromeが起動している限り、毎朝、最新の運行状況をチェックして報告してくれるようになります。
もし、自動実行の際に、動作確認などが表示される場合は、以下のプロンプトを追加しておくと報告のみが出力されるようになります。
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プロンプト
※重要:必ず「日本語」で回答してください。作業の復唱、実行前の確認、前置きの挨拶などは一切不要です。取得した運行状況の結果のみを直接出力してください。
自分の好きなタイミングで手動実行も
スケジュールによる自動実行だけでなく、自分の好きなタイミングで手動実行もできます。チャット欄に「/(スラッシュ)」を入力すると登録したショートカットの候補が呼び出されるので、出かける直前や天候が怪しい時などにサクッと再確認できて便利です。
作成したタスクやショートカットは、Claude in Chromeの設定画面からいつでも一覧で確認できます。不要になったら削除したり、時間を変更したりといった管理も行えます。
以上がClaude in Chromeの活用法となります。ブラウザの操作権限を委ねる上でのセキュリティリスクや、意図しない挙動に対する監視は必要ですが、適切なルールの下で運用すれば、頼もしいデジタル秘書として活躍してくれます。
まずは、自身の日常業務の中でボトルネックとなっている単純作業を洗い出し、小さなタスクから任せてみてはいかがでしょうか。手放しでAIがタスクを遂行してくれるという便利さを体感してみてください。











