今回は、2025年9月8日〜9月23日に発表されたAI関連の注目すべきトピックを紹介する。AnthropicのClaudeが進化してPDFやExcelファイルの生成が可能になり、。Stability AIは新しい楽曲生成AIモデル「Stable Audio 2.5」をリリースした。OpenAIはMicrosoftと次期パートナーシップに向けた覚書を締結したほか、Codex向けのLLMの最新版「GPT-5-Codex」を発表。GitHubはMCPサーバーのための「MCP Registry」を公開し、GoogleはAIエージェント決済のための新プロトコルを発表した。
それぞれ詳しく見ていこう。
ClaudeでチャットからPDFやExcel/Word/PowerPointファイルの生成が可能に
9月9日、AnthropicはAIチャットサービス「Claude」において、Excelスプレッドシート、Wordドキュメント、PowerPointスライド、そしてPDFファイルの生成および編集が可能になったことを発表した。
これまでは、データ分析のレポートや発表資料を作成する場合、テキストのほかにSVG形式、HTML形式、画像形式での出力はできたが、レポートとして直接利用可能なPDFやExcelスプレッドシートなどを生成することはできなかった。今後はこれらのファイルを直接生成し、ダウンロードすることが可能になるため、ユーザーのワークフローが一変する可能性がある。
新しいファイル生成機能は、まずはMax、Team、Enterpriseプランのユーザーが利用できる。Proプランでは、今後数週間以内に利用できるようになる予定だという。
Stability AIが企業向けの楽曲生成AI「Stable Audio 2.5」をリリース
9月10日、Stability AIは新しい楽曲生成AIモデル「Stable Audio 2.5」をリリースした。「エンタープライズグレードのサウンド制作向けに特別に設計された最初のオーディオ生成モデル」と位置づけられており、企業のブランディング向けに、高品質な楽曲や効果音をわずか数秒で生成できる点が大きな特長。
テキストから楽曲を生成するだけでなく、既存の楽曲をもとに新たな楽曲を制作する「audio-to-audio」や、既存の楽曲の続きを制作する「audio inpainting」といった機能も備える。学習データはライセンス済みであり、安全性も重視されているという。
OpenAIとMicrosoftが提携関係の継続に向けた覚書を締結
9月11日、OpenAIとMicrosoftは、パートナーシップの次期フェーズに向けて「拘束力のない覚書(MOU)」を締結したことを発表した。このMOUは、正式契約の最終的な合意に向けた取り組みを進めるためのもので、両者の交渉は最終段階に入ったことを意味している。OpenAIとMicrosoftは2019年から提携関係にあったものの、最近ではAIサービスの競合相手にもなっているほか、OpenAIの営利化に向けた組織再編で意見の対立が起きており、パートナーシップの解消も懸念されていた。
新しいパートナーシップの具体的な条件は明らかにされていないが、声明では「安全性への共通のコミットメントに基づき、すべての人々にとって最高のAIツールを提供することに引き続き注力していく」とコメントしている。
- A joint statement from Microsoft and OpenAI - The Official Microsoft Blog
- A joint statement from OpenAI and Microsoft | OpenAI
MOUの締結と並んで、OpenAIは組織運営に関して、非営利組織が営利企業(公益目的企業)を管理する現在の体制を維持するという声明も発表している。OpenAIはもともと非営利組織(現在のOpenAI Nonprofit)として発足したが、2019年に営利企業として「OpenAI LP」を設立し、さらに2024年にはOpenAI LPを公益目的企業(PBC)に転換する方針を発表した。一時はOpenAI NonprofitがPBCへの直接的な関与から離れる方針も示していたが、今回の声明で、最終的に主要な株主としてPBCへの支配を続けることが明確になった。
GitHub、MCPサーバーの発見や導入を容易にする「MCP Registry」を公開
9月16日、GitHubはMCP(Model Context Protocol)に対応したサーバを集めた「MCP Registry」を公開した。レジストリには公開MCPサーバが集約され、開発者は目的のサーバを簡単に検索・発見して、導入できるようになる。VS Codeであればワンクリックでインストールも可能。GitHub CopilotやMCP互換ホストを含むスタックでも動作する。
また、GitHubではAnthropicやMCP Steering Committeeと連携してオープンソースのMCPレジストリの構築に取り組んでいるという。この取り組みによって、開発者は自前のMCPサーバをOSS MCPレジストリに直接公開できるようになる予定。公開されたサーバは、GitHub MCP Registryに自動的に反映され、他のMCPサーバと同様に検索や利用が可能になるとのことだ。
OpenAIがCodexに最適化したLLM「GPT-5-Codex」を発表
9月15日、OpenAIはAIコーディング支援ツール「Codex」に最適化した新バージョンのLLM「GPT-5-Codex」を発表した(関連記事:OpenAI、「Codex」をGPT-5でアップグレード、エンジニアの仕事をより深く支援 | TECH+(テックプラス))。
これはGPT-5をベースに実際のソフトウェア開発作業に特化して訓練したモデルで、短いやりとりによるコーディング支援から、数時間に及ぶ複雑なリファクタリングまで、さまざまな開発タスクに対応できる。コードレビュー機能も強化され、依存関係を把握しテストを実行しながら重大なバグを検出できるようになった。
GPT-5-Codexの特徴の一つが、タスクの複雑さに応じて、思考に費やす時間をより動的に調整できるようになった点だ。単純なリクエストやチャットには素早く応答し、大規模なリファクタリングや複雑なタスクではより長い時間をかけて高品質な回答を導き出す。コードレビュー機能では、重大な欠陥の発見に特化したトレーニングが行われており、これによってプリクエストの内容や意図を反映した分析が可能になっているという。
OpenAIでは、今回のアップグレードによって、Codexは信頼性と実用性を兼ね備えた開発パートナーに進化したと発表している。
Google、AIエージェントによる安全な決済を可能にする新プロトコル「AP2」を発表
9月17日、GoogleはMCPの拡張として利用できる新プロトコル「Agent Payments Protocol(AP2)」を発表し、その初期仕様を公開した(関連記事:Google、AIエージェント決済を促進するMCP拡張プロトコルAP2を発表 | TECH+(テックプラス))。
これは、AIエージェントが安全に支払いを行えるように設計されたオープンプロトコルで、American ExpressやPayPal、Mastercardなど60以上の金融・テクノロジー企業と共同で開発しているという。Googleでは、カードや銀行振込などの既存の支払い方法を横断的に扱うことで、販売者と購入者の間で一貫した安全な決済体験を提供すると説明している。
AP2の基盤となるのは「Mandates」と呼ばれる暗号署名付きのデジタル契約である。これはユーザーがエージェントに与える購買権限を証明する仕組みで、人間が取引に立ち会うリアルタイムの購買と、事前に条件を設定することで人間が立ち会わずに取引をAIに委任する購買の両方をカバーする。
Googleでは今後、業界標準化団体を含むオープンな協力を通じてAP2を発展させ、AI駆動の商取引の基盤を築いていく方針だという。



