
競争よりも協調する習慣
「ビール業界は消費者に身近である上に4社の寡占市場。味やデザインで大きな差がつかなくなっていただけに、どうしても価格が勝負になってしまう」
ビール会社関係者の弁だ。公正取引委員会(公取委)はアサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの大手4社に対し、独占禁止法違反の疑いで強制調査に入った。各社が卸売業者に販売するビール類の出荷価格について、値上げ幅や時期を事前に調整(カルテル)していた疑い。昨年以降、摘発した業界は軽油や人材派遣、アイスクリームなど多岐にわたる。
原材料や人手不足に伴う物流費の高騰などで物価高が続く中、仮に不当に価格をつり上げたとすれば、消費者への背信行為にほかならない。1兆円を超える市場なだけに今後は各社の経営層まで情報が共有されていたかどうかなどが焦点になりそうだ。
先の関係者によれば、以前から競争よりも協調する習慣があったようだ。スーパーなどの店頭では4社の商品が並んで陳列されるため、「自社だけが値上して販売数が落ち込めば、あっという間に棚落ちする。復活することは容易ではない」という。
その結果、同じ危機感を抱いた各社の営業部門の課長級以上の社員らが定期的に会合を開いて値上げ幅や時期などを話し合うという習慣が生まれたようだ。
元国税関係者は「資本主義の日本では、価格は自由競争。〝神の手〟で決められるもの」と話す。公取委の調査次第では4社の国内のビール事業は打撃を受けることになる。各社とも海外展開やヘルスケアなどにも注力しているが、本業のビール事業でブランド力や収益力が低下してしまえばビール以外の事業にも影響が出かねない。