
実は確保が難しい「現場監督」
現在、東京都江東区、都営新宿線大島駅から徒歩5分の立地で、大東建託が地上14階建て、78戸の賃貸マンションを開発中。この現場で施工管理者、いわゆる現場監督を務めているのがウズベキスタン出身のウスモノフ・アルスロンさん(24歳)。
9月下旬のある日、この日はあいにくの雨だったが、その中で建物の杭を打つ際に使用する鉄筋かごがサイズ通りになっているかを確認する作業を行っていた。
アルスロンさんはウズベキスタンのタシュケント国立工科大学を24年6月に卒業後、同年12月に来日し、大東建託に入社。同社の外国人施工管理者の1期生で、新卒研修を受けた後、25年6月から現場監督として勤務している。「日本の建築は世界でも有名。日本に行って、知識と経験を増やしたいという思い」と来日の動機を語る。
来日した当初は食事の問題など難しい面もあったが、自炊をしたり、和食に慣れたりすることで克服。難しい建築専門用語も、「所長や先輩たちの説明のおかげで覚えることができた」とアルスロンさん。「日本に来て良かったところは『日本人』。日本の方は私ができた時などにすごく褒めてくれる。その言葉が本当に嬉しくなる」と笑顔を見せる。
建設業の現場を担う人材は施工計画、工程、品質、安全を管理し、工事関係者間の調整などを担う「技術者」(施工管理者、現場監督)と、工具や機械、身体技能を使い、直接作業を担う「技能者」(大工、職人)がいる。
建設業就業者数全体が1997年の685万人をピークに減少し、25年には478万人と約3割減っている中、技術者、技能者どちらの確保も難しくなっている。中でも技術者は工事全体を把握することが求められる他、1級建築施工管理技士といった資格が必要であるなど、人材確保のハードルが高い。
そのため、業界各社の中には採用条件で学歴を不問としたり、未経験、文系でも応募できるようにすることで何とか人材確保をしようという動きも出ている。
そんな状況下、大東建託は外国人を施工管理者として育成する取り組みを進めている。「建設業では就業者数の減少と高齢化が同時に進んでおり、世代交代と技術継承が大きな課題。こうした課題への対応として当社では、国内採用の強化に加え、採用対象を海外にも広げ、外国人を将来の施工管理技術者として採用・育成をしていく」と話すのは大東建託キャリアデザイン部部長の鈴村大介氏。
大東建託が採用の対象にしているのは、ウズベキスタンとインドネシアの国立大学で学ぶ学生・卒業生。在留資格は「技術・人文知識・国際業務」となっている。雇用形態は正社員で、日本人社員と同等の待遇。
なぜ、ウズベキスタンとインドネシアだったのか?「両国とも親日的であり、若い世代が多く学習意欲が高いことが大きな理由」と鈴村氏。建設業の技術者が減っていくという将来予測の下、社内で対応を検討する中で、取引のある企業からウズベキスタンでの採用を提案されたのがきっかけだった。
特にウズベキスタンには首都タシケントに、第2次大戦後に日本人捕虜が建設に携わった「国立ナヴォイ劇場」がある。1966年に起きた大地震の際、この劇場だけが壊れることなく、避難所として活用された。日本人の高い技術力を、現地の人たちは語り継いでいる。
24年9月からタシュケント国立工科大学で採用活動を開始し、アルスロンさんを始め5名を採用。25年9月には第2期の面接を実施し、3名を採用、26年4月から施工管理業務に従事している。さらに26年9月、今度はタシュケント建築建設大学の学生3名が内定した。
インドネシアでは、シンガプルバンサ・カラワン大学と24年に専門講座開講で合意。25年からの第1期で23名、26年からの第2期で32名が在籍している。27年4月には1期生の面接を予定しており、27年12月に入社予定となっている。
単に採用するだけでなく、1級・2級の建築施工管理技士という国家資格の取得も支援。「当社の採用のゴールは入社ではない。日本人社員と同じように現場を任せられる施工管理技術者へ成長してもらうこと」(鈴村氏)。長期的には現場の所長を目指すというキャリア形成を目標としている。
大東建託の現場でも、外国人の現場監督がいることによるプラス効果を期待している。「日本人だと雑な指示でも何となくできてしまっていたところ、外国人の監督は日本語で、より丁寧に指示する。それが品質向上につながることはあるかもしれない」と鈴村氏。指導をする上でも、「伝わる指導」を心がけているという。
まずは2カ国からの人材採用を進めているわけだが、今後他の国に枠を広げる考えはあるのか。「今はウズベキスタンとインドネシアの方々を採用し、それに加えて技術者として育成していかなければならないので、まずはそこに注力することを考えている。その上で3番目の国などの検討は進めていかなければならないと考えている」と鈴村氏。
建設業従事者は、人の減少と高齢化が同時に進行している。その中で世代交代と技術の継承を進めなければならないという難しい状況にある中、意欲を持つ外国人がそこに加わることで、構造的課題解決の一助となる可能性も出てきている。