松塚展国・think-cell Japan代表取締役の「人生の転機」【父の会社の危機と博報堂での衝撃】

当社は2002年にドイツで創業したthink-cellの日本法人です。think-cellはパワーポイントのアドインツールでグラフを中心にプレゼンテーションをより良いものにするソフト。戦略コンサルファームをはじめ、全世界で3万5000社、130万ユーザーに利用されています。日本法人は22年に設立、3年で国内約1200社に利用され、ユーザー数は2倍以上になりました。

 think-cellは、コミュニケーションの生産性を爆発的によくするツールだと思っています。DXやデータドリブンなどといわれますが、think-cellはデータをグラフなどでわかりやすく伝える。2時間かかっていた会議が30分で終わればコミュニケーションの生産性が上がるのです。

 こうしたデータに基づくコミュニケーションという視点を持つようになったきっかけは、東大工学部4年のとき、父が3代目社長で約100年続いていた土木建築会社が民事再生法を申請したことです。父は情熱、アイデアもあり新規事業なども手掛けていましたが、それがうまく伝わらなかったことが苦戦の要因だったのではないかと思います。私は奨学金で通った大学院で環境エネルギーの研究をしましたが、モノづくりも重要だが、モノを売ったり企業を成長させたりするにはコミュニケーションが大事なのだと痛感、博報堂に就職しました。博報堂にしたのは、大学1年のとき、広告研究会主催の「ミスター東大」コンテストで20世紀最後のグランプリに選ばれたのもきっかけで、ミスター東大になったことも転機ではありましたね(笑)。

 ただ、博報堂はコミュニケーションの達者な人ばかりで、その衝撃で私は自信を失い、商談やプレゼンでも緊張して汗びっしょりになる日々。その後移ったGoogle Japanで活路になったのが、データに基づいたコミュニケーション。言語に関係なく、データは誰にでも伝わると思い、そこで出会い、データで何かを伝えることを自在にしてくれたのがthink-cellでした。その後、脳科学や心理学の本を読んだり、仕事で実践もしたりして、コミュニケーションの方法論を研究。効率的でわかりやすく人に物事を伝えるためのロジックを明文化しました。21年からは東大で非常勤講師として「ロジカルコミュニケーション」の授業もしています。

 23年に当社の代表となる一方、成長するためのノウハウがない中小企業のコンサルやマーケティングを支援する会社もやっています。日本にデータに基づいたコミュニケーションという文化が浸透すれば、英語ができなくても海外と勝負できる。日本を強くすることに貢献できるのではないかと思っています。

コミュニケーションに悩んだ博報堂時代、同期たちと(前列左が松塚代表)