小池友紀・at FOREST代表取締役CEOの「人生の転機」【両親の改葬】

当社はコロナ禍の2022年5月に設立し、『循環葬』という新しい自然葬の形を提案しています。土壌学の専門家監修のもと、墓標も何も残さず、ご遺骨をお寺さんが所有する森林に埋葬する新しい葬送サービスです。

 循環葬というのは、火葬した遺骨を丁寧に砕き、パウダー状に砕いた骨を森の土壌と混ぜて埋葬し、自然に還すというもの。墓標を残さないので、森全体が供養の対象になります。

 墓地は法律上、民間企業が経営できないので、経営主体はお寺さん、当社は運営管理を担っています。お寺さんが所有する、管理が行き届いてない放置林に我々が入ることで綺麗な森に変え、そこに遺骨を埋葬する仕組みです。パートナーとなっているお寺さんとしても、手つかずだった荒れた森が再生し、森の価値が向上。既存の檀家さん以外の方ともつながりができるということで喜ばれています。

 私はもともと広告の世界でコピーライターをしていました。それまで葬儀のことを真剣に考えたことも無ければ、何の知識もありませんでしたが、ある日、両親が祖父のお墓を墓じまいするという話になりました。祖父のお墓は岡山にあったのですが、もう岡山に住んでいる家族もいないので、墓じまいをして家の近くに改葬(お墓を引っ越し)しようかと考えたのです。

 しかし、自分たちが買いたいと思えるお墓はなかなか見つかりません。母は「本当は、お墓に入らず自然に還るのが一番いい」と言っていました。

 巷で増えてきている樹木葬を見に行っても、芝生の上に墓標が並んでいたり、シンボルツリーがあるだけなど、一般的なお墓と変わらない仕組みのものが多く、「これだ」と思うものがありませんでした。挙句の果てに、母は「理想のお墓なんてないわよ。お墓なんてそんなものじゃないの」と言っていました。私は、お墓をこのような気持ちで買うのはどうなんだ? と憤りを感じました。

 人にとって、最後の大きな買い物であるお墓を納得せずに買うのはおかしいと思うようになり、海外の事例を調べてみました。すると、お骨が山に還る自然葬があることを知り、日本らしい方法で、自分でやってみようかと思うようになりました。それまで経営者になろうなどと考えたこともありませんでしたが、それが39歳で起業した理由です。

 私は決して、先祖代々のお墓や納骨堂などに入ることを否定しているわけではありません。しかし、社会の変化とともに、お墓のあり方も多様化していくのが自然な流れであり、選択肢の一つとして循環葬を提案していきたいと思っています。

 今後も循環葬という新たな葬送を通して人と森林の共生を育み、未来に豊かな自然を残す会社として、地道に成長していきたいと考えています。

冨山和彦の【わたしの一冊】『社内政治の科学  経営学の研究成果』