TDCソフトは3月30日、4月1日に提供開始予定のNVIDIAのパーソナルAIスーパーコンピュータ「DGX Spark」を搭載した社内ネットワーク内で完結するプライベートAIアプライアンス「Nenoa(ネノア)」を発表した。
クラウドAIを使えない現場が抱えるセキュリティとコストの壁
同製品は、あらゆる企業や部門、特に厳格なセキュリティが求められる業務現場に向けて開発した。インターネット環境がなくても安全にAIを利用できるとともに、大規模なインフラ投資なしで手軽に導入できる月額定額制のサービスとなる。
開発を主導した、TDCソフト デジタルテクノロジー本部 デザイン&テクノロジーコンサルティング統括部 アドバンストテクノロジー部長の榊原佑介氏は「キャッチコピーは『すべての仕事に、安全なAIを。』です。国内を見渡し際にシステム開発の現場だけでなく、ビジネスの現場でもAIを使えていない企業がコストの側面から見て多くいます」と述べている。
実際、日本のAI利用率はLINEヤフーの調査によると、26.7%にとどまり、米国(68.6%)、中国(81.2%)と比べても後れをとっている。背景には情報漏えいリスクへの強い懸念があり、導入企業でも約6割が機密情報の取り扱いに不安を抱えたまま運用しているのが実態となっている。
昨今では生成AIの業務活用が急速に広がる中、顧客情報や契約書、社内文書、ソースコードなど、機密性の高い情報を扱う業務でもAI活用のニーズが高まっている。しかし、機密データを扱う業務現場において、セキュリティポリシーの観点からクラウドAIを利用できないケースが多くあるという。
特に金融・医療・製造・官公庁といった厳格な情報管理が求められる業界や、インターネット接続が禁止された閉域網環境では、クラウドAI自体が物理的に利用できないとのこと。
一方で、熟練担当者の退職による業務ノウハウの喪失リスクや、慢性的な人手不足に伴う業務効率化など、現場の課題はAIとの親和性が高いものがあり、従来はオンプレミスでAI環境を自前構築するアプローチもあったが、大型GPUサーバの導入には数千万円~数億円規模の初期投資と専門知識が必要であり、導入ハードルが高い状況となっていた。
社内ネットワーク完結型のプライベートAIアプライアンス「Nenoa」
Nenoaは、ローカルLLM(大規模言語モデル)、AIチャット、AIエディター、API連携を搭載した設置型のハードウェア端末。電源とネットワーク接続のみで即座に利用を開始できる。
榊原氏は「さまざまな企業におけるプロジェクトを支援していますが、AIが許可されていないケースが多くあります。サービス化する前に、そうした企業で新製品の端末を試したところ、実用化を実感して2カ月程度でローンチできるようになりました」と経緯を説く。
また、同氏は「通常、ローカルLLMはすぐに使える状態ではなく、各現場ごとで設定を行う必要があり、ノウハウも散らばっています。新製品は個別ではなく、1つのサービスとして共同型で提供することが狙いの1つです」と話す。
新製品は、データが社内ネットワーク外に出る経路が存在しない設計が最大の特徴であり、物理的・構造的にデータ漏えいが起こり得ない設計とし、入力データはAIモデルの学習にも使用しないという。
AI実行に必要な環境がすべて構築・検証済みの状態で届くため、サーバ構築やソフトウェア導入の手間がかからないことに加え、特定のAIベンダーに依存せず、軽量実行エンジン「llama.cpp」を基盤に「gpt-oss 120B」や「Qwen3.5」などのモデルを選定している。
さらに、月額固定料金でAPIレート制限もないため、24時間連続実行や大量ファイルの一括処理でも追加費用が発生しないほか、大型GPUサーバへの大規模投資を必要とせず、小型端末にAI実行環境を集約することでスモールスタートでAIを活用できる。ハードウェアの一括購入ではなく、ソフトウェア環境を統合したアプライアンスの初期費用を抑えた月額定額のサブスクリプションで提供する。
料金プランは「スタンダード」と「プレミアム」の2つを用意。スタンダードはハードウェアが「Dell Pro Max GB10」でメモリは12GB、同時利用は5人程度を推奨し、月額28万円。プレミアムはハードウェアが「Apple Mac Studio M3 Ultra」でメモリは256GB、同時利用は10人程度を推奨し、月額40万円。いずれも初期費用はなく、ソフトウェア機能は共有で12カ月契約、年一括払いとなり、3日間のオンボーディング支援が含まれている。



