ソフトバンクは、AIが通信状況をリアルタイムに分析し、それに応じて最適なネットワーク経路を自律的に選ぶ技術を開発したと3月11日に発表。「自律思考型分散コアルーティング」と呼称するこの技術では、効率性が重視される通信では従来の集中型モバイルコア、低遅延が求められる場合は自律的に最短経路へ切り替え、用途にあわせた最適な通信品質を実現するとしている。

次世代の通信環境では、拡張現実(AR:Augmented Reality)や仮想現実(VR:Virtual Reality)、自動運転といった「低遅延が欠かせない通信」と、「大容量データの効率的な転送が求められる通信」が、ひとつのアプリケーション内で複雑に切り替わることが予想される。

従来のモバイルネットワークでは、ひとつのアプリ内で異なる遅延要件(SLA:Service Level Agreement)が存在する場合に、それぞれの要件に柔軟に対応することが難しく、このため一律の基準で通信を制御することは困難という課題があった。

ソフトバンクが今回発表した自律思考型分散コアルーティングは、アプリケーションが要求する遅延要件をAIエージェントが自律的に判別し、最適なコアネットワーク経路へリアルタイムで切り替えて制御するというもの。

“業界標準のQoD(Quality on Demand) API”を活用したAIエージェントにより、「UPF」(User Plane Function)による中央集中管理型コアネットワークと、「SRv6 MUP」(Segment Routing v6 Mobile User Plane)を動的に切り替える仕組みだという。

なお業界標準のQoD APIとは、Linux FoundationとGSMA(GSM Association)が推進する、通信事業者のネットワーク機能を標準化するオープンソースプロジェクト「CAMARA Project」が定義するもののことをさす。

自律思考型分散コアルーティングの具体的な特長としては、利用するアプリの遅延要件を数十ミリ秒(1ms=1,000分の1秒)から10ms以下まで、段階的なクラスとして定義。40ms以下など、特定の遅延要件が求められるクラウドゲーミングなどの起動時に、AIエージェントが現在のネットワーク遅延が要件を満たしているか、計測サーバーでリアルタイムに判定する。

この事前測定の結果を基に、AIエージェントがSRv6 MUPの適用可否を判断。低遅延化によりアプリが求める遅延要件を満たせると判断した場合、自律的に経路を切り替える。

また、SRv6 MUPにより最適化された通信環境下でアプリを利用し、AIエージェントが計測サーバーを用いて遅延を継続測定。セッション終了後、遅延要件の達成状況を判定し、必要に応じて結果をAPI経由で送付する。

ネットワーク運用者向けイベント「JANOG57」において、クラウドゲーミングを用いた実証を実施したところ、ソフトバンクの商用モバイルネットワーク(4G)環境で検証したところ、従来のモバイルコア経由の平均遅延値は41.9msであったが、同技術を適用したときの平均遅延値は27.4msという結果が得られたとのこと。

この技術を用いることで、クラウドゲーミングが求める40ms以下という遅延要件を安定的に満たすことを確認。また、AIエージェントによるトラフィック制御の精度は99.7%を記録し、「きわめて精緻かつ安定した自律制御の有効性を確認できた」としている。