NECは3月9日、最新のテクノロジー動向をテーマとした「NECテクノロジーブリーフィング」というイベントを開催した。このイベントは、技術トレンドや先進技術、NECが保有する最新技術について、NECの研究メンバーが説明するもの。
第1回の開催となった今回は、NEC ビジネスインテリジェンス研究所 宮野博義所長、金友大氏、岩元浩太氏が「フィジカルAI・デジタルツイン」をテーマに説明を行った。以下では、「NEC デジタルツインソリューション 現場可視化・分析サービス」と「人の動きと心理状態を予測する世界モデルを活用したフィジカルAI」を紹介する。
映像AIで現場の作業を自動データ化するNECのデジタルツイン
NEC独自の映像分析技術を活用した「NEC デジタルツインソリューション 現場可視化・分析サービス」拡充版は、今年の3月から提供開始される予定。
同製品は、NECが長年培ってきた独自の映像AI技術により、現場のさまざまな事象を映像認識AIで自動的にデータ化し、デジタル空間上に再現するデジタルツインソリューションの一つだ。従来の類似サービスで必要だった、導入前の現場作業の動画撮影を不要とし、迅速な導入と現場最適化を実現するという。
同製品は、新たに開発した映像分析技術と自然言語処理技術により、ユーザーが映像中の特定の作業行動や状況を、テキスト入力だけで簡単に指定できるようになったという。
例えば「荷物を棚から取る作業」「機械の前に立っている状態」など、平易な文章を入力するだけで、AIが条件に合致する場面を自動認識することにより、従来は数週間かかっていた導入前の作業が最短数時間で完了し、即日導入も可能になる。
また、少量の学習データを追加することで認識精度をさらに高められる点も特徴だ。そのため、顧客の現場環境や作業内容に応じた学習データを段階的に蓄積することで、作業行動の認識精度を上げられる。
加えて、テキスト入力による直感的な条件設定と、それに基づく分析レポートの自動生成により、利用開始までに必要だった専門家による手作業を削減する点、現場で新たなニーズが発生した際、その場でテキスト入力するだけで分析条件を追加・変更できるという点も特徴だという。
人の動きと心理状態を予測する「フィジカルAI」
「人の動きと心理状態を予測する世界モデルを活用したフィジカルAI」は3月12日に発表された。
フィジカルAIは、ロボティクスや自律制御技術と融合し、現実世界で実際に動き、判断し、最適化するAIとして急速に進化している。その高度化を支えているのが、現実空間を高精度に再現するデジタルツイン技術だ。
今回NECは、人の動きと心理状態を予測する独自の「世界モデル(人間系世界モデル)」を活用し、人の不安の程度を定量的に推定した上で、不安を高めないように先回りしてロボットを制御するフィジカルAIを開発した。
この技術は、ロボットと人の相対的な位置・姿勢から人の進行方向や人の不安の程度をリアルタイムで予測することにより、ロボットは、人の不安を軽減する経路や速度で自律走行できる。
同技術の導入により、ロボット専用区画が未整備の環境や通路が狭い中小規模の物流倉庫や工場、小売店舗など、これまで心理的ハードルが高かった現場において、人とロボットを分離するレイアウト設計や、あらかじめ固定された走行コースの設計が不要となる。
人間系世界モデルの仕組み
人間系世界モデルは、「ロボットの挙動や物理的な周囲の状況によって変化する人の動きを予測」「ロボットの接近によって変化する、人の不安の程度をリアルタイムかつ定量的に推定」という2つの予測モデルを組み合わせて開発されている。
これにより、ロボットが走行制御を実行した場合の将来の人の不安の程度を予測し、人の動きを先回りした最適な走行制御を実現する。その結果、不要な減速や停止を抑えつつ、移動効率を維持しながら、人の不安の程度を最小限に抑える経路や速度での走行が可能となる。
ロボットの動きと周囲環境から人の動きを予測
「人とロボットの挙動」や「人と物理的な周囲の状況」との関係を捉えることで、変化する人の動きを予測できる独自の予測モデルを構築した。
同予測モデルは、人の3D骨格情報を取り入れ、ロボットに搭載されたカメラ映像とロボットの制御情報をもとに、ロボットの挙動や周辺の環境情報を考慮しながら、映像に映る人の数秒後の3次元位置や姿勢を高精度に予測することが可能。
ロボット接近時の「人の不安」をリアルタイム推定
ロボットを被験者の周囲に走行させ、不安の程度をアンケート調査した実験結果と、ロボットの走行データをAIに学習させることで、人とロボットの相対的な位置・姿勢・速度に基づき、人の不安の程度を定量的に推定する独自の予測モデルを構築した。
このモデルにより、ロボットが人に接近した際も、個々の状況に応じて人が感じる不安の程度をリアルタイムで推定することが可能となる。
NECは今後、物流倉庫や小売店舗などでの活用を想定し、2027年度中の実用化を目指す。



