≪ 起業家育成 ≫ 第二電電(現KDDI)共同創業者・千本倖生(第2回)

結局、世界を大変革するのは一人の卓越したリーダー

 ─ 前回は石油に代わる現代の〝金の卵〟は半導体であると。日本はこれから台湾とどのように付き合い、半導体をどう戦略的に確保していくかが問われるという指摘でした。  

千本 わたしは2000年頃に参加した国際会議で、TSMC(台湾積体電路製造)の創業者・張忠謀(モリス・チャン)とご一緒したことがありました。94歳の今もまだご健在ですが、彼の強烈なベンチャースピリットはとても印象に残っています。

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 彼は米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得し、テキサス・インスツルメンツ(TI)で優秀なエンジニアだったわけです。当時のTIと言ったら半導体のトップ企業で、そこの幹部となりましたが、それを捨てて台湾に戻ってくるわけですね。  

その後、彼は1987年にTSMCを設立しました。われわれが稲盛和夫さん(京セラ創業者)と共に第二電電(現KDDI)を創業したのが1984年でしたから、同じ頃に新しい会社を立ち上げたわけです。

 ─ 共にリスクをとって起業したと。  千本 ええ。当時の日本における通信改革にしても、台湾における半導体産業にしても、「何故、そんな無謀なことをやるのか?」と否定的な意見も多かったんですよ。

 ところが、あれから40年近くが経って、今はすごいことになっている。台湾がこれほど世界から注目される存在になったのは、台湾政府の戦略もありますが、最大のポイントは、モリス・チャンという一人の偉大な起業家がいたことです。そこを忘れてはいけません。

 例えば、わたしが稲盛さんと立ち上げたKDDIは、たった40年前に売上ゼロだったのが、今では時価総額が約11兆円の会社になりました。国家企業だったNTTは、少し大きい約14兆円(共に2月2日時点)ですからね。

 だから、KDDIの勢いは本当にすごくて、わたしは10年後くらいにはNTTを抜かして日本の通信でトップ企業になるかもしれないと本気で思っています。

 ─ これだけKDDIが急成長を果たした理由は何だと考えますか。

 千本 もちろん、歴代のトップがいて、社員の頑張りがあったからなんだけど、やはり、稲盛さんとわたしの二人の挑戦者がいたことがキーでした。やはり、NTTという強大な企業に対して戦っていくぞという、稲盛さんのガッツとベンチャー精神があったことが大きいと思うんです。

 現在、日本でトップの時価総額はトヨタ自動車の55兆円ですね。ところが、TSMCはすでに200兆円くらいあって、トヨタの4倍の企業価値があるんです。

 要するに、稲盛さんとわたしのコンビがなければ今のKDDIはないし、モリス・チャンがいなければ今のTSMCもなかった。つまり、世界を大変革し、国自体の存在価値をも上げてしまうというのは、個人の卓越したリーダーの存在なのです。

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