ソフトバンクは、コールセンターなどの電話応対業務におけるカスタマーハラスメント対策ソリューション「SoftVoice」を2月2日に提供開始した。通話相手の強い口調を、AI音声変換技術を用いて“怖くない声”にリアルタイム変換する。利用料金は10IDで月額5万円(税別)で、本格導入前の無料トライアル期間を設ける。

  • ソフトバンクがコールセンターなどの電話応対業務向けに提供する、カスハラ対策ソリューション「SoftVoice」の概要

    ソフトバンクがコールセンターなどの電話応対業務向けに提供する、カスハラ対策ソリューション「SoftVoice」の概要

実際の電話応対業務においては、カスハラと適切な主張の線引きが困難なケースも多いが、SoftVoiceはそのような状況においても、通話相手の発言内容を穏やかなトーンで聞けるようにし、オペレーターの心理的負担を軽減できる環境をサポートするとしている。

SoftVoiceの最低利用ID数は10IDで、初期費用は不要。月額利用料金(税別)は前述の通り5万円(10ID)で、11ID以上は、1IDあたり5,000円を加算する。なお、SoftVoiceの本格導入前に、全機能をID数の制限なして利用できる無料トライアル期間を用意。無料トライアルの申込日から2カ月目まで利用でき、トライアル版の期間終了後は本申し込みが必要となる。

主な機能は以下の通り。

怒り抑制(AI音声変換)

通話相手の怒り声や威圧的なトーンを、AI音声変換技術を活用して、通話内容を変えずに「怖くない声」にリアルタイムで変換。オペレーターは、電話システムなどにインストールしたSoftVoiceアプリの音声変換ボタンを押すだけで、通話中でもすぐに音声を変換でき、150種類の音声パターンから声色を選べるという。

警告メッセージ

通話相手との通話が長時間に及んだり、暴言や脅迫的な表現が続いたりする場合、オペレーターから現場の管理者に警告メッセージの送信を依頼し、管理者が承認すると、通話相手に対して警告メッセージを流せる。状況に応じて3段階の警告レベルを使い分けられ、通話相手との感情的な対立を避け、冷静なコミュニケーションをサポートする。

ノイズ抑制

通話相手の周囲の環境音や雑音をAIで低減し、相手の声を聞き取りやすくすることで円滑なコミュニケーションを追求。アプリの操作で簡単に切り替えられるという。

通話録音

通話内容を録音・保存することで、応対品質の向上に加えて、通話相手とのトラブル防止やリスク管理にも活用できるとする。

ソフトバンクと東大との共同研究で生まれた、AI音声変換技術を採用

SoftVoiceは、東京大学大学院情報理工学系研究科の高道慎之介特任准教授との共同研究成果を基に、ソフトバンクが開発したAI音声変換技術を採用。コールセンターなどで、通話相手の怒鳴り声や感情的な声を、発言内容を変えずに声のトーンや抑揚をリアルタイムで調整し、威圧感を抑えた声色に変換してオペレーターに届ける仕組みを備える。

SoftVoiceの開発にあたり、AI音声変換技術による電話対応時のオペレーターの心理的不安の抑制に関する実証実験を、約300人を対象として実施。その結果、SoftVoiceで変換した通話音声は、変換前と比べて、怒りの感情に関する評価指標が平均3割以上も低下することが確認できたため、さまざまな業界でPoCやベータ版アプリの無償提供を進めてきたという。

この実証実験の対象者約300人には、電話対応業務の経験者と未経験者の男女が含まれており、通話相手の怒りの感情について7段階で評価する調査を行ったとのこと。AI音声変換技術を使わない場合の評価平均が6.5であったのに対し、使った場合は評価平均は4.2となり、怒りの感情に関する評価指標の平均が30%以上低くなったのを確認したとしている。

顧客の過度な要求や不適切な言動によるカスハラは、従業員の心理的負担を増大させるだけでなく、継続的に発生することで離職率の増加につながり、企業の事業運営にも影響を及ぼす可能性がある。

こうした社会的背景を踏まえて労働施策総合推進法が改正され、2026年10月からは事業主に対し、職場におけるカスタマーハラスメントの防止措置が義務付けられる。企業や自治体には、従業員が安心して働ける職場環境の整備に向けた迅速な対策が求められることになる。