ベクターホールディングス(ベクターHD)は2月5日、データのプライバシー保護と高度な利活用を両立させるFHE(完全準同型暗号)技術のPoC(概念実証)を開始した。実証では、米Cornamiが開発する「FracTLcoreプラットフォーム」を用い、暗号化されたままのデータを実用的な性能で処理可能かという観点で、FHEワークロードの実運用適性を検証する。

PoCの概要

PoCではエクイニクス・ジャパンが運営するデータセンター内に検証環境を構築し、NVIDIA H100をベンチマークとして比較評価を行い、プラットフォームの適応可能性を検証する。

医療、金融、公共分野など機密性の高いデータを扱う領域では、データの秘匿性と分析の両立が課題であり、FHEはデータを復号せず暗号化したまま計算できるため、外部環境を信頼する必要のないゼロトラストなデータ処理を実現する技術として注目されているという。

一方、計算負荷が高く、実運用への適用が難しいという課題もあり、ベクターHDはFHEの実務利用を重要テーマと位置づけ、計算負荷の課題を解決し得るCornamiのFracTLcoreプラットフォームに着目し、実用化に向けた検証に着手した。

ベクターHDでは、2025年12月に日本企業における安全で持続可能なAI活用基盤の整備に向けてCornamiと協業し、同社が提供するAIサーバを活用したAI基盤サービスを提供を発表していた。

実証では、FHEの典型的なユースケースにもとづき「機密データ分析の効率化」「組織間でのセキュアなデータ共有と共同分析」「ゼロトラストクラウドの実現」の領域で実用性を検証する。

機密データ分析の効率化では生データを開示せずに医療記録・金融取引・政府統計などの分析/集計の可能性を検証。また、組織間でのセキュアなデータ共有と共同分析では複数銀行間での不正検知や病院横断の疫学研究において、機密を保持したまま共通の分析結果を得られるかを検証する。さらに、ゼロトラストクラウドの実現では、暗号化データを平文に触れずに検索・処理できる、プライバシー保護型クラウドサービスとしての実現性の検証を行う。

加えて、実証では安定した電力供給や高い運用信頼性を有するデータセンター環境で上記の評価を行うことが重要であるとの考え、エクイニクスが運営するAI・HPC(High Performance Computing)用途を想定した電力・冷却・ネットワーク環境を備えたデータセンター内に検証環境を構築し、実運用を想定した設置性、運用性、拡張性を含めた総合的な評価を行う。

今後、同社は実証を通じて、FHEを用いた暗号化データ処理が実運用に適応可能かを技術的に検証する。成果や有効性が確認された場合には、医療・製薬、金融、公共・研究機関など、機密性の高いデータを扱いながら高度な分析や演算処理が求められる組織を主な対象に、FHEを前提とした次世代計算基盤の提供に向けた事業検討を進めていく考えだ。

また、実証で得られる知見をもとに、パートナー企業との連携を通じて、VAR(Value Added Reseller)としての提供モデルや導入形態を具体化し、ハードウェアアクセラレータとFHE技術を組み合わせた安全なデータ利活用の実現を目指す。