ラクスはこのほど、共通ID基盤「楽楽従業員ポータル」の提供を開始し、「楽楽精算」や「楽楽明細」などの各サービス間での連携を順次強化する方針であることを発表して、説明会を開催した。
同社は「楽楽クラウド」を通じて継続的かつシームレスに企業の業務効率化を支援するため、特定業務に特化して便益を提供する「ベストオブブリード」戦略から、「統合型ベストオブブリード」戦略へと方針を転換するという。
3月2日に共通ID基盤「楽楽従業員ポータル」を販売開始し、7月には「楽楽明細」と「楽楽請求」の連携、8月以降に「楽楽精算」と「楽楽電子保存」の連携を予定している。企業の業務課題をワンストップで解決するソリューションの提供を目指す。
ラクスのこれまでの製品戦略
ラクスはこれまで、「ベストオブブリード型戦略」と「マルチプロダクト戦略」の2つの戦略の下、事業を拡大してきた。
ベストオブブリード(Best of Breed)とは、企業内のシステムを複数の製品やシステムで構築する仕組みを指す。対になる概念はスイート(Suite)だ。特定の業務に特化したサービスを提供することで、その業務の範囲においては高い便益を提供できる。
もう一方のマルチプロダクト戦略とは、成長フェーズが異なる複数のサービス(プロダクト)を同時に展開することで、企業全体としての成長を図る戦略だ。
ラクスの場合は、経理業務に特化した楽楽精算や、請求業務に特化した楽楽請求、販売管理に特化した楽楽販売など、各業務に特化したサービスを提供してきた。成熟したプロダクトが創出する安定した利益を、新規のサービス開発に投資できる。
これら2つの戦略により、同社は高い売上成長と利益率を実現しているとのことだ。2026年度にはARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収支)500億円を突破。営業利益率は27.6%を記録した。
新戦略「統合型ベストオブブリード戦略」とは?
同社は今後、ワンストップでソリューションを提供する楽楽クラウドのサービスを拡充するべく、「統合型ベストオブブリード戦略」を強化する。
ラクスの取締役でCAIO(チーフAIオフィサー)を務める本松慎一郎氏は「お客様の業務課題を解決する、ワンストップサービスとしてのブランド強化を図る。そのために、OEMのように他社製品を販売する形態も含め、サービスラインアップを拡充する」と、方針を示した。
同社がこれまで進めてきたベストオブブリード戦略では、各サービスが独立していたことから、他サービスへの影響を考慮する必要がなく、業務課題に特化した個別のニーズに最適化できた。また、導入のための稼働も最小限で実施しやすいメリットもあった。
一方で、マルチプロダクト戦略を展開する同社の複数サービスを利用する際には、各サービスが独立していたために、ID情報や社員情報などが分断されており、各サービスをつなぐ際にはAPI(Application Programming Interface)連携などが必要となっていた。
そのため例えば、「楽楽精算」を使った精算業務と「楽楽請求」を使った請求業務を連動させたい場合には、利用者側でAPIを連携する必要があった。
ベストオブブリード戦略とは反対の「スイート型」サービスは、複数の業務領域が連携しており一体的な便益提供が可能だ。ところが、新サービス開発時には既存サービスの仕様に影響されるなど、業務課題に最適な機能開発や便益提供が難しい。
そこで、同社はベストオブブリード型とスイート型の、双方の利点を兼ね備えた新戦略として「統合型ベストオブブリード戦略」でサービスを展開するという。
統合型ベストオブブリード戦略で展開する3つの新サービス
統合型ベストオブブリード戦略の下、まずは3月2日に共通ID基盤「楽楽従業員ポータル」を開始する。各サービスのIDや社員マスタを共通化し、複数サービスをシームレスに利用可能となる。同じIDで「楽楽クラウド」内の各サービスへログイン可能なシングルサインオンのような機能だという。ID管理部門の運用負荷軽減も期待できる。
また、楽楽クラウド内の各サービスを連携させる「サービス間連携」を実装し、データの受け渡しをスムーズにすることで、手作業や転記の手間を削減する。7月には楽楽明細から楽楽請求へデータを自動連携し、請求書処理業務ねシームレスな接続を実現する。
8月以降には、楽楽精算の伝票に添付した支払関連の証憑を楽楽電子保存に自動連携し、電子帳簿保存法対応と証憑の一元管理や検索が可能な仕組みを実現する予定。
さらに同社は、FinTech領域のサービスも拡大する方針だ。3月には請求書カード払いサービスを開始するほか、5月には楽楽ビジネスカードを発行予定。コーポレートカードとして決済に使用すると、利用明細が楽楽精算に自動連係される。
同じく5月に、銀行振込代行サービスを開始する。これは、楽楽電子保存の利用者が、従来のインターネットバンキングにログインせずとも支払い可能になるサービス。
本松氏は「当社は楽楽クラウドを、企業の業務課題解決のためのワンストップサービスとして、困りごとがあった際に最初に相談してもらえるようなサービスに成長させたい。また、最初の一歩の課題解決だけではなく、2つ目3つ目の業務領域まで継続的に支援できるサービスにしていきたい」と、今後の展開を語っていた。







