〈過去最大の投資〉三菱商事が米シェールガス事業に総額約1.2兆円の大型投資

天然ガスは〝現実解〟

「本件を通じ、エネルギートランジション(移行期)期間においても重要な役割を担う天然ガスを確保し、バリューチェーンの強化の上、エネルギーの安定供給、競争力、低炭素化といった課題にバランスよく対応し、当社の総合力を生かした価値創造を実現したい」

 こう語るのは、三菱商事社長の中西勝也氏。

 三菱商事が、米国でシェールガスの権益を保有し、その開発・生産・販売等を手掛けるエーソンを買収する。同社はエーソンの全株式を約52億ドル(8200億円)で取得。純有利子負債23億ドルも引き継ぎ、同社としては過去最大、総額約1.2兆円の大型投資となる。

 エーソンが保有するシェールガス権益は、テキサス州とルイジアナ州にまたがるヘインズビル地区にある。三菱商事がオペレーター(操業主体)として、ガスの生産から需要地への輸送、販売までを一気通貫で手掛ける。同社の参画後、ピーク時の年間生産量はLNG(液化天然ガス)換算で約1800万トンを想定。これは日本全体のLNG需要の4分の1にあたる規模だ。

 米国は世界最大の天然ガス生産地であり、最大の消費国。また、近年はAI(人工知能)やデータセンターの増加によって電力需要が増加しており、今後も天然ガスの需要拡大が見込まれる。三菱商事が生産する天然ガスは米国国内で販売する他、日本を含むアジアや欧州へLNGとして輸出することを検討している。

「天然ガスは相対的に環境負荷が小さく、石炭からの転換、再生可能エネルギーの補完、次世代燃料の原料など、多様な役割を担う〝現実解〟。高いコスト競争力を持つガス資産を取得することで、世界のエネルギー課題に応える天然ガスバリューチェーンの構築に取り組む」(中西氏)

 三菱商事は昨年8月、秋田県と千葉県で進めていた洋上風力発電プロジェクトから撤退。現在は世界的にも建設コストの増加から洋上風力開発から撤退する企業が出ており、三菱商事は今後も安定した需要が見込まれる天然ガスで勝負をかけることを決断。これがリスクと収益のバランスを考えた同社の〝現実解〟になったようだ。

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