NTT東日本、ティアフォー、マップフォー、計量計画研究所、小田急バスおよび東京都狛江市の6者で構成されるコンソーシアムは、総務省「地域社会DX推進パッケージ事業(自動運転レベル4検証タイプ)」の実証団体に選定され、実証地域(狛江市)において、昨年度より都市型交通事情に応じた見通しの悪い交差点などでの歩行者や車両の認識といった、スムーズな自動運転実現のための実証運行を進めている。
同事業では、狛江市が抱える地域交通課題に対して、レベル4自動運転バスの2027年度以降の社会実装を見据え、商用運行可能なサービスレベルを目指した検証が重ねられている。
2024年度の実証では、路側センサとローカル5Gを活用し、見通し外交通情報の提供と遠隔監視による走行支援の有効性の検証を実施(2024年度の試乗会の記事はこちら→NTT東日本が多摩地区初の“公道での遠隔型自動運転”を実証 - 狛江市で自動運転バス試乗会)。2025年度実証では、Step01として路側インフラと自動運転車両の協調に関する検証、Step02として地域の交通事業者を交え自動運転バスの運用モデルの検討が行われている。
そして、認識情報を自動運転の走行制御まで一貫して連携させるシステムを開発し、よりスムーズな走行を実現する実証が進められており、その進捗を体感できる場として、遠隔型自動運転バスの関係者および住民試乗会が2026年1月に開催された。以下、その模様をお届けしよう。
スマートポール、情報統合基盤を活用した実証
実証運行のルートは、和泉多摩川駅から六郷さくら通りを抜け、多摩川住宅を巡る、約5.1kmの周回コース。ティアフォーの自動運転車両「Minibus 2.0」を用い、セーフティドライバーおよびオペレーターが同乗する「レベル2」相当での走行が行われた。なお、「Minibus 2.0」は、定員28名、座席15席のEVバス。ステアリングやブレーキなどの駆動系電動モジュールおよびレベル4水準の自動運転機能に対応している。
今年度は、「路側センサによる見通しの悪い交差点・横断歩道の通過支援」として、街路樹や建物などにより見通しの悪い交差点において、「スマートポール」に設置されたカメラやセンサが歩行者や車両を認識し、ローカル5Gの高速広帯域、低遅延な特性を生かし、V2N(Vehicle to Network:車両とネットワークの通信)で、リアルタイムで自動運転車両に送信。これにより、自動運転車両は見通し外の情報を活用して事前に減速・停止などの判断が可能となるが、実証では、交差点・横断歩道におけるブレーキ回数や制動の強さが軽減されるかの検証が行われた。
また、「複数の路側センサを統合した物体認識情報による路上駐停車の回避支援」では、六郷さくら通りなどの路上駐停車が多い区間において、複数の路側センサを統合することで、駐停車車両の陰に隠れた車両や遠方の対向車両を認識し、不要なブレーキや回避中の中断を予防。道路沿いに設置されたローカル5G接続のスマートポール3台から得られる物体認識情報を情報統合センターで集約し、その結果をV2N通信により自動運転車へ通知することによって、スムーズな回避行動が可能かどうかが検証された。
「スマートポール」は、カメラやLiDARで見通し外の物標情報を取得し、ローカル5G経由で車両へ伝送する路側インフラ。ルート内に5カ所設置されており、スマートポールで取得された情報は、遠隔監視拠点の「情報統合センター」にて統合、メッセージフォーマットを変換して自動運転車両へ配信されるほか、遠隔監視室における走行状況の監視にも使用される。さらに、路側インフラとしては、信号制御機内に機器を設置。灯器状態を収集し、自動運転車両へ信号予定情報を配信する「信号情報提供装置」も併用される。
なお、同コーソシアムにおける各企業・自治体の役割は以下の通りとなっている。
- 狛江市:駐停車合意の公示、道路使用許可、道路占用許可その他関係機関との協議および申請、同実証に関し地域住民に周知するとともに、地域の合意形成を図る
- NTT東日本:全体統括、通信インフラ整備、車両運行管理
- ティアフォー:自動運転技術の提供と車両制御
- マップフォー:地図情報の提供と運行ルート設計
- 計量計画研究所:都市計画・環境設計支援
- 小田急バス:地域交通の知見提供と運行支援
多摩川住宅のまちづくりと運転手不足に自動運転で対応
狛江市において、自動運転バスの導入検討が進められている背景の一つとして、「多摩川住宅の建替えによるまちづくり」を挙げる、狛江市 都市建設部 道路交通課 交通対策係 係長の垣内友太氏。
建て替えが進み、新しい居住者を迎える多摩川住宅の地域は鉄道駅からの距離があることから、バス等の地域公共交通の需要も増加することが想定されるが、垣内氏は「公共交通事業者は人手不足が深刻化しており、増加する需要への対応が困難になるのではないか」という懸念を指摘した。「自動運転のみで運転手不足の課題をすぐに解決できるわけではありませんが、将来的に必要な取り組みと考えているため、着実に事業の課題を解決していく」と同氏は語る。
同事業における狛江市の役割は「住民への周知」および「関係機関との調整」。昨年度の実証について、「自動運転バスの走行に関する状況の確認と車両、遠隔監視拠点、道路上の設備の通信状況の確認がされており、自動運転バスの走行については、大きな問題はなく実施できました」と、垣内氏は評価する。一方で、「しかし、実際の公共交通機関として運行していくにはさまざまな課題があり、停車のブレーキの強さや手動介入の頻度の解決を目的に実証を行っています」と、2025年度の目的について語る。
実際、手動による介入が多かったのは、「大きな交差点内の信号を遵守したうえで、他の車両の妨げにならず通行する場面」、「路上駐車車両の回避の場面」、「工事現場通行の場面」となっており、「今年度は、大きな交差点の信号機との情報連携による予測と判断の精度向上、新たな路上センサ設置による自動での路上駐車車両回避」をさらなる課題として、実証運行を行っているという。
なお、自動運転バスが実際に路線バスとして市内で走行する際は、同コンソーシアムに参加している小田急バスを中心に交通事業者との調整が必要となっている。垣内氏によると、来年度の取り組み、運行にむけての支援、役割分担などについて検討しているという。同氏は「実証運行を通じて技術的な課題を解決しながら、関係者で運行に向けた課題を解決していく必要があります」と、自動運転の実現に向けた今後の展望を明かしていた。









