寺島実郎・日本総合研究所会長が語る「経済人の役割」

明るい将来像をつくるには未来に向けた努力が必要

 ─ 寺島さんは経済人の役割をどのように考えますか。

 寺島 今から30年前の1994年に世界のGDP(国内総生産)に占める日本の割合は17・8%でした。それが今は3・6%まで落ちています。IMF(国際通貨基金)の最新の見通しでは、2026年に日本はインドに抜かれそうだということですが、この円安ですから、わたしは2026年か、早ければ2025年にもインドに抜かれるのではないかと思っています。

 また、わたしは昨年10月にロンドンへ行ってきましたけど、その時、3年後に日本は英国に抜かれるという話を聞きまして、大変ショックを受けました。

 ここでいったん整理すると、2010年に日本のGDPは中国に抜かれて世界3位になりました。翌年の2011年には3・11(東日本大震災)が起こり、このあたりから、日本人のメンタリティーが揺らぎ始めていきました。敗戦国なのに、世界第2位の経済大国に蘇ったというのが、日本人の誇りの根源だったわけですが、それが一気に崩れていったわけです。

 その後、2023年に日本はGDPでドイツに抜かれ、間もなくインドにも抜かれ、3年後には英国にも抜かれるかもしれない。6位に落ちて、10年後にはインドネシアにも抜かれるだろうと予測されています。

 ─ 日本人の心の拠り所が失われていったと。

 寺島 そうです。現在、日本を除くアジアのGDPは日本の7倍超です。いわゆる中国、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)を足した合計は、日本の7倍を超えるスケールになっています。

 ただ、こうした現実を見ようとしない経済人も中にはいます。聞けば、日本は海外に対して金融資産大国で、金持ちの国であり、米国の国債を一番持っているのはまだ日本だと言うわけです。

 また、海外投資のプロジェクトが利益を生み、例えば、日本の企業業績は円安で水ぶくれさせて良くなっているものだから、ますます、こうした楽観論が流れて、日本は大丈夫だという論調につながっています。

 しかし、わたしが言いたいのは、本当に日本が金融資産大国なのであれば、それは今生きている日本人われわれ自身が、努力して生み出している価値なのでしょうか? それは多くの先人たちが頑張った結果であり、例えば、先祖が金持ちだった家に生まれて資産を食いつぶしているのに、うちは金持ちだから大丈夫だと言っているのと同じではないか? ということです。

 ─ 要は、ゆでガエル状態にあると。

 寺島 やはり、明るい将来像をつくるには、今現在の自分たちの姿をきちんと冷静に分析し、後輩たちのため、未来のために努力を積み上げていくことが重要です。

 今、上場企業の業績は確かに短期的な視点から見れば良いかもしれません。でも、それは株高・円安という要素が強くて、それが異様な楽観論にはまっている原因でもあるわけです。なぜ今、こういう構造になっているかというと……。

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