
労働力人口は増えている! 成功体験からどう切り替えるか
─ 人手不足が深刻な中、ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんの現状分析とは。
小室 労働力人口は減少の一途と思われていますが、実は増えています。19年の働き方改革関連法の施行前後から企業の働き方が変化した結果、今までであれば仕事を辞めざるを得なかった育児や介護などと両立している人たちが働き続けることができるようになったからです。
また、元気なシニアの方々が定年を迎えた後でも週4日の勤務を続けるといった事例も増えています。つまり、働き方改革が新しい労働力を生み出しているのです。その結果、働き方が全く変わってない企業の労働力不足が深刻化しているのです。
─ 06年の起業後、自治体や企業のコンサルをし、トップの課題認識をどう感じますか。
小室 約3000社のコンサルを通じて感じるのは、今までの成功体験の山から飛び移れるかどうかです。若者の比率が高い社会では男性を中心にした長時間労働で、「右向け右」の方針で大量生産するのが圧倒的に勝てる経営戦略でした。
しかし、人口構造が変化し、生産年齢人口比率が減少した社会では、男女をフル活用し、短時間で高い生産性をあげ、多様な人で意思決定する方法に切り替えないと、経済を再浮上させることはできません。
─ リーダーの意志ですね。
小室 ええ。その世界が見えるかどうかです。先ほどシニアの話をしましたが、今の労働力人口の比率は65歳までの人を労働者とみなしていますが、これを70歳まで対象を広げて試算すると、70年まで今と同じ労働力人口の比率を維持できることが分かっています。
そこまでの期間を凌ぐことができれば、AIが様々な仕事を代替し、日本の少ない労働力人口でも多くの仕事量をこなし、経済を支えることができ、再浮上できます。
これらをトータルで考えると、むしろ労働時間は減らすことで、多様な労働力を維持し、そして個人は仕事だけではなく、趣味や知識を活かした豊かな人生を送れます。地域社会に貢献できるような社会をつくることが重要になってくるのです。
─ 働き方改革の好事例があれば聞かせてください。
小室 宮崎県の、えびの電子工業さんです。社長就任前に当社の講座を受講した2代目社長の津曲慎哉さんが改革を行って成功しています。有給消化が10日未満で、月の残業が30時間以上の人は昇進・昇格させないというルールと「勤務間インターバル」を設けたのです。
同社は遠方の工場を持っており、ドライバーが2往復すると4時間残業になってしまう。しかし、勤務間インターバルのルールを設けたことで、今までの2往復のやり方を見直し、結果として、ベテランも過重労働から解放され、離職率は大幅に減り、採用も倍になって、業績は大変好調です。
≪広告業から脱皮し、新たな産業モデル創出に挑戦!≫ 博報堂DYホールディングス社長・西山泰央「産官学民連携で新たな産業を創出し、社会課題の解決を図っていきたい」