
人手不足や資材高騰が続く中 渋谷駅街区の再開発が佳境に
─ 鉄道、都市開発など、個人生活に直結する事業を手掛けている東急会長の野本弘文さん、2026年は企業としてのあり方をどう考えますか。
野本 政権が代わり、順調な出だしだと思っていますが、経済を支える我々がしっかりやっていくことが何よりも大事だと思います。日本のあるべき姿を見据え、強くならなければなりません。日本の生産性向上も問われていますが、世界的に見て伸びているとは決して思えません。
日本には国民・企業で蓄積してきた財があり、まだ世界から尊敬されていますが、そうした資産を我が国の未来につながる投資に振り向けられるような仕組みづくりが必要と感じています。当社も、まちづくりを通じて国の価値向上に資することができればと考えています。
─ そうした仕組みづくりには何が必要だと思いますか。
野本 当社の鉄道、リテール、ホテルはコロナ禍では全て厳しい状況でしたが、ここに来て回復してきたと感じています。ただ、今後どう成長させていくかという戦略を個々の事業部門やグループ会社がしっかりと持たなければならないと思っています。
─ 「渋谷スクランブルスクエア」の第2期が31年度に完成を控えていますね。
野本 当初は27年度頃に完成予定でした。コロナ禍もありましたが、建設業界の人手不足、労働時間の減少、資材高騰など、様々な逆風があり、竣工が遅れる状況です。物件の竣工が遅れると、遅れた期間分、事業者として収益ロスが生まれると同時に余分なコストがかかります。また、工期が延びたときに従事される皆さんの年収が増えるかというと、そうではありません。
実際に、当社はタイでホテルを建設中なのですが、その工期は2年で見込んでいます。これが今の日本だと、同規模ホテルの建設に3年かかります。これでは日本の国際競争力が相対的に弱くなってしまうのではないかと危惧しています。
─ そういう中で、渋谷駅街区の再開発が完成すれば盛り上がりますね。
野本 渋谷駅をはじめ、渋谷の東西南北を地上とデッキ階で結ぶ多層な歩行者ネットワークが誕生することになります。その結果、渋谷駅やその周辺のアクセス性が飛躍的に向上すると同時に、賑わいの創出や生活利便機能の提供によって、誰もが歩いて楽しい街ができあがるものと期待しています。
まちづくりは「オープン」と「ネットワーク」が大事です。ビルの中に囲い込むのではなく、ビル同士がつながり、そのつながりが街じゅうに広がっていく。そんなまちづくりを進めていきたいと思っています。