
米国は世界秩序という机をひっくり返し始めている
─ 2026年の世界をどう占い、日本再生の道筋をどう考えるか。まずはそこから聞かせてもらえますか。
寺島 わたしは2024年5月に『21世紀未来圏 日本再生の構想』(岩波書店)を刊行しました。あれから1年半が経った今、そこでも指摘している通り、日本人が避けて通れない三つのテーマが浮上しています。
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一つは、日米同盟の再設計です。「トランプ2・0」(第二次トランプ政権)が動き始めて、米国は世界秩序という机をひっくり返し始めている。米国は20世紀型秩序と言われた多国間協調と国連に象徴されるような国際秩序を長く主導してきたのですが、こうした根幹にかかわるところを米国ファーストと言って、自ら崩し始めています。
─ トランプ米大統領が主張する自国第一主義ですね。
寺島 ええ。彼は米国の利益が第一だということで、否応なく、日本もその流れに巻き込まれている。日米関係の在り方について、冷静に考えなければなりません。
二つ目が、アベノミクスとの決別。つまり、アベノミクスによって、金融政策に過剰に依存して調整インフレにもっていったわけですが、株高と円安になっても、この国は救われないということです。わたしはこのことを一貫して主張してきましたが、それが今、ものすごい勢いで明確になっています。第2次安倍政権前に1㌦=75円を付けた為替は現在155円前後になり、日本の通貨の価値は10年ちょっとで半減してしまったのです。
そして三つ目は、戦後民主主義の錬磨ということで、その一つとしての議員定数の削減です。これは1年半前の段階では話題にもなりませんでしたが、今回、日本維新の会が自民党に近づいたことによって、急に議員定数削減が議論されるようになりました。
─ 国会議員の削減は、これまでも寺島さんが主張されてきましたね。
寺島 日本は人口比で米国の3倍もの国会議員を抱えています。これが今後、人口が3割減っていくという流れの中で、少なくとも3割は減らしても良いだろうと思っています。第一次安倍政権の時にも議員定数削減をやると言っていましたが、何となくズルズル来て、「10増10減」という形でお茶を濁しながら進んできました。
今の日本に問われているのは、日本人として民主主義を本当に錬磨して、自分のものに磨き上げる必要があるということです。政治で飯を食う人の極小化であり、質量ともに高度なものにしていくというのが民主主義の宿命なんです。
ところが、まるで「家業」かのように子や孫の代まで世襲する議員の存在や、さらにはポピュリズムとの相関で知名度のあるタレントなどの議員がどんどん政界に送り込まれているのが現実で、日本の政治の質が大きく問われている局面にあることに気付くべきです。