2026年の〝キーワード〟 は「ピンチをチャンスに変える!」

真価が問われる日本の国力

 内外に不透明さが増す中で、富の源泉を創り出す経済人の使命とは何か─。

 2026年は新しい産業構造を求めて再編や効率化を求めたAI投資などが増えそうだ。経団連会長の筒井義信氏は「日本の潜在成長率は現状で0.6%程度しかなく、1%台に上げていく必要がある。そのために必要なのは科学技術立国に向けてのイノベーションだ」と語る。

 目を外に向ければ、世界がブロック経済化しつつあり、保護主義が台頭。その中で日本はどう振る舞うべきかという命題。

 日本の基本スタンスは貿易・投資立国として自由で開かれた国際秩序を世界で主張していくこと。隣国・中国との関係がギクシャクする中で、両国の経済人同士の対話も欠かせない。

 価値観を共にする欧州、あるいはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)との連携で日本も情報発信を進めていくとき。日本の国力も真価を問われる。

世界の環境変化

 ある日突然、世界の環境が激変するという事態も考えられる。多くの経済人は緊張感を持ちつつも、「自らの経営資源を掘り起こし、強さを伸ばし、弱点や課題を克服していかなければならない」という声は少なくない。世界中がインフレ基調となり、諸資材も高騰。加えて人手不足が事業の機会喪失を招きつつある。

 また、「AIブーム」と言われ、先端半導体の米エヌビディアが一時期約5兆ドル(約750兆円)の時価総額をつけたこともあった。日本のGDP(国内総生産)である約600兆円を上回る企業価値で、これはGAFAMを含め、米国のダイナミズムを見せつけられる思いがする。

 一方で「過剰流動性で、行き場を失った資金が世界中に溢れていることには注意する必要がある」という声もある。成長投資のモメンタムを加速させながらも、緊張感が同時に求められる。その意味で26年は『踏ん張り』と『覚悟』が求められる年となる。

基本軸を持つことが……

『疾風に勁草を知る』─。大地にしっかり根を張るという基本軸があるかどうかで企業の行く末は決まる。

「従来の出版印刷は、かなり厳しい状況が続くと思う」と大日本印刷社長の北島義斉氏は語る。しかし、同社は新領域の技術を次々と開拓。ディスプレイに使われる〝光学フィルム〟や有機ELディスプレイ製造用の〝メタルマスク〟などのエレクトロニクス関連技術を生み出した。

 こうした新技術の開拓も、「全て印刷技術の応用になる」と北島氏。これらの技術の大半は花開くまでに10~15年かかっている。こうした事実も踏まえ、北島氏は「少しぐらい失敗してもいいから新しいものをどんどんやろう」と社内を叱咤激励する。

 興味深い領域では、養殖魚の飼料(餌)に必要なタンパク質源として昆虫の幼虫を飼育する事業がある。当初は食用で考えていたが、事業化には多少困難が伴うとして「魚の餌にする」という発想に切り替えた。自分たちの持てる技術の応用を図るため、それこそ、しなやかで大胆な発想が求められる時代だ。

スタートアップの動向

 金融・証券業界における新規事業の開拓を次々と実現させてきたSBIホールディングス会長兼社長の北尾吉孝氏は「私の50年以上にわたるマーケットとの関わりの中で、今ほど難しいと感じるときはない」とする。

 そして「デジタルの技術革新のスピードの速さ、そしてトランプ政権の相互関税を米司法がどう判断するかといった政治の問題、ロシア・ウクライナ戦争、中国による台湾侵攻の恐れといった地政学的リスクなど予測不可能な状況が続く」と分析。

 しかし、〝失われた30年〟の中で着々と手を打ってきたし、今も米国では金融とメディア、ITの融合が進む中で『SBIネオメディアホールディングス』という会社を設立。ユニークなネオメディア生態系で事業創出を狙う。その生態系は「金融を核に金融を超える」とした。

 データセンターへの巨額投資が進み、電力不足が懸念される今、「何が必要かというと核融合だ」と北尾氏は語る。「核融合発電が次の革新的技術になると見ており、我々もこの領域への投資を進めている」と意気軒高。

 スタートアップ全体にとって26年は転換期になる。「今はインターネットやAIを使って簡単に起業して上場できる時代ではなくなっている。本当に社会や企業のインフラになるような事業を立ち上げなければならない」と語るのは国際社会経済研究所理事長の藤沢久美氏。

 藤沢氏は「面白いのは、大企業を経験した若者が10年くらいかけて古巣を含めた大企業との連携を取りながら、しっかりとインフラをつくっていること」と指摘。大企業とスタートアップの連携も大事な局面だ。

 一方で日本の強さとは何か?

 近年、日本のアニメの大ヒットが目立つ。『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』など内外で大変な人気を呼び、世界中で日本のアニメファンが増えている。日本のアニメや映画が中国でも人気を呼び、映画会社の中では中国ビジネスを強化する会社もある。

 混迷の時代を切り拓くのも経済人の使命と役割。「ピンチこそがチャンスだと思う。人はピンチのとき、そこから逃げることばかり考えがちだが、ピンチをチャンスに変えるためにはどうしたらいいのか? ということを、もっと考えなくてはならないと思う」─。米国や中国、そして日本や他地域でグローバル展開・経営を実践・実行し続けるファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏の言葉である。