
不確実性が増す世界にいかに対処すべきか
本書の冒頭で、人類が取り組まなければならない最大の難問、それは「なぜ物事は起こるのか?」という疑問だとされます。一見、子供が発するような問いですが、21世紀の社会において一層深刻さを増している問題といえます。
なぜかといえば、数万年前までは、地球上の人間は小さく孤立して、お互い交じり合わない生活集団として暮らしていました。それが今では80億人の人間が、比較的共通した文明のもと、かなりの程度予測可能な規則やパターンの中で暮らしています。加えて、インターネットの発達は世界中の人々を相互に接続し、経済取引をはじめとする人間の活動は高度化、加速化する一方です。
その結果、我々は、より簡単に「カオスの縁」と言われる状況に直面することとなりました。その具現化が、たとえば大規模な金融危機、世界的なパンデミック、地球規模の気候変動や戦争です。
科学技術や計算モデルの発達によって物事の予測可能性が高まったように見えて、実は現代社会においては、ほんのわずかな変化が予測不可能で巨大な連鎖反応をもたらす。これは「自己組織化臨界性」と呼ばれる現象であり、複雑系を無理にコントロールしようとして起こるとされます。
そうは言っても、われわれは「絶望なまでに不確かなとき」にあって、重大な選択をしなければならない局面に立たされることが往々にしてあります。
これに対して、著者は次のように述べます。ときとして人生の最良の巡り合わせは、安定しているように見えた過去をいっそう精密に分析することからではなく、真新しい不確実な未来を「探索」することから訪れるのだ、と。
この姿勢は、個々人の人生に当てはまる教訓でもあり、新たな時代を切り開く企業経営に対してのアドバイスにもなりうるのではないでしょうか。不確実性に満ちた世界を「探索」する勇気をもたらしてくれる一冊だといえます。