【どうなる?高市政権の経済対策】マーケットコンシェルジュ代表・上野泰也

高市首相は最低賃金引き上げ問題で「中小企業に目配り」 

 

 高市早苗内閣が11月下旬に決定した総合経済対策は、(1)生活の安全保障・物価高への対応、(2)危機管理投資・成長投資、(3)防衛力と外交力の強化の3つが柱である。世論調査を見ると、有権者の間では(1)への期待が大きい。

 物価の上昇が景気過熱を主因とする「デマンドプル型」である場合、日銀の利上げや財政緊縮によって需要を抑え込むのが王道である。

 だが、足元の物価高は明らかに「コストプッシュ型」であり、マクロ経済政策による対応は難しい。日銀が利上げを強行すれば、国内需要の停滞を長引かせてしまう恐れがある。

 為替のドル高円安を食い止め、ドル安円高方向に反転させる狙いで、日銀は利上げを実施すべきだという主張がある。けれども、0.25%ポイントでせいぜい1~2個の「タマ」しかないのでは、相場に及ぼす影響は自ずと限られる。無理に利上げすると、もはや「タマ切れ」と市場に見透かされてしまい、かえって円安が進むこともあり得る。

 また、昔からそもそも論として、為替相場の誘導を金融政策の主目的に据えて動くのは、先進国の中央銀行では筋が悪いとされている。

 米国のベッセント財務長官が日銀による利上げの必要性を示唆したことを援軍にして、政府の容認の下で、実態としては円安阻止狙いで、日銀が利上げに動くケースも考えられる。しかし、そうする場合は、中小・零細企業への悪影響も考慮する必要があるだろう。

 規模の小さな企業は、原材料費・光熱費・輸送費などのコスト高に加えて、政府が旗を振ってきた「春闘での高率賃上げ」「最低賃金大幅引き上げ」によっても経営を強く圧迫されている。「金利上昇に耐えられないゾンビ企業はつぶれてしまえ」といった過激な主張もあるが、真面目にコツコツやってきた弱者の労苦に目配りしていない面がある。

 高市政権が打ち出した物価高対策のメニューには、岸田文雄・石破茂両内閣の対策に盛り込まれた施策の拡大バージョンが含まれる。

 そうした中、高市首相の国会答弁で筆者が注目したのは、最低賃金1500円というこれまでの目標へのコミットを渋ったことである。

 首相は11月14日の参院予算委員会で、石破前内閣が掲げた「2020年代に最低賃金の全国平均1500円」という目標について、「いつまでにいくらと申し上げるわけにはいかない」と述べ、実施時期や金額を明言しなかった。目標を事実上撤回したと受け取られている。1500円という数字が出た時には「地方の事業者から相当な不満の声があがった」と首相は指摘。企業が賃上げできる環境作りにまず取り組むと強調した。

 こうした高市首相による中小企業への目配りには、いずれ行うことになる衆院解散をにらんだ政治的な思惑もありそうだが、政策論としては妥当だと筆者はみている。