現場のスタッフが使っているシステムが古くなったり性能が期待に追いつかなくなったりしたら、システム刷新が検討され、稟議書が作成されます。稟議書を作るのは現場のスタッフであり、多くの場合はそれを取り仕切っているITのリーダーでしょう。
もちろん、現場サイドでさまざまな検討・検証を行い、「これなら通るだろう」と満を持して稟議書を提出するわけですが、その稟議書は多くの場合、CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)という壁に阻まれる事態が発生します。それはなぜか。いろいろな要因があるとは思いますが、多くの場合に当てはまると考えられる理由があります。
なぜ稟議書はCFOに阻まれるのか?
その理由の一つは、その刷新から得られる価値は何か、という視点が欠けている、ということです。現場では往々にして「技術的価値」に重きを置きがちです。カタログスペックが速いから、性能が高いから、あるいは価格が安いから、新しいものは古いものよりも優れていて業務効率が高まるのだ、という考え方です。
対してCFOは「ビジネス価値」を重視します。その投資が自社のビジネスにとってどういう価値を持つのかを示せなければ、その稟議書にハンコが押されることはありません。もちろん高いスペックは必要条件です。現状よりも劣るシステムに投資をするような愚を犯す必要はありません。スペックは必要最低の条件であり、スタート地点です。その上に、CFO(あるいはその先のCEO)が納得するような飾り付けをする必要があります。
承認を得るための5つのポイント
企業ストレージの刷新がもたらすビジネス価値は、組織の成長に伴って増大するデータの保管容量の確保にとどまりません。特にデータ駆動型の企業にとっては、ビジネスのスピードを支え、新たな顧客価値を生み出す源泉となるデータを安全に保持することこそが、その重要な役割であり価値なのです。
あらゆるITリーダーは、CFOと共通の基盤を見出し、エンタープライズストレージのアップグレード、リフレッシュ、置き換えにおいて、ビジネス価値に基づくメリットを示す必要があります。それがもたらす「新たな価値」と「技術的優位性」とをうまく組み合わせて、アピールしなければいけません。
CFOに新しいエンタープライズストレージ技術の大規模購入について、合意と承認を得るための戦略を立てる際に含めるべきことは、以下の5点に集約されるでしょう。
1.明確なROI
2.経費削減(OPEX、CAPEX)
3.料金に含まれている付加価値
4.サイバー攻撃による高額損害の防止
5.削減予算の再投資
以下は、新しいストレージシステム購入の正当性を、自社のCFOに説明する際に活用できるナラティブ(物語)の一例です。
「新しいエンタープライズストレージに更新することで、CAPEXとOPEXを現在のストレージインフラより最大60%削減します。新しいストレージシステムに対する投資は11カ月以内に回収できます。また、業界で最高評価を得ている高品質なホワイトグローブサービスが追加費用なしで提供されます。さらに、サイバーレジリエンスが組み込まれているため、ランサムウェアやマルウェアなどのサイバー攻撃を受けても数分で復旧でき、当社の評判へのダメージを最小限に抑え、潜在的には億円単位になり得る損失を回避できます。加えて、このストレージ刷新によって節約された大幅な資金は、AIの最新化といった戦略的ITプロジェクトに再投資できます」
稟議書を作成する際には、CFOに伝えるべき「ビジネス価値中心の物語」の五角形、つまり、ビジネス成果へとつながるバランスのとれた五角形を形づくるストレージノミクスを心がけましょう。
現代においてIT部門が成功するためには、ビジネス価値を考慮に入れる必要があります。技術的価値のみに基づいて判断することはできません。意思決定にはさまざまなステークホルダーの意見が反映されます。CFOが技術のためだけの大型購入を承認することはなく、具体的なビジネス上の推進要因とビジネス価値が存在しなければなりません。
このテーマは決して古くなりません。なぜなら、ビジネスリーダーは常に「テクノロジーがビジネス成果にどのように影響しているか」で評価されるからです。プラスのROIはビジネス成果です。コスト削減も成果です。事業上の大惨事を防ぐことも成果です。
リターンを明確に:プラスを増やしマイナスを減らす
ストレージシステム導入のROIを考えるときのリターンは、果たして何であるか。その答えは、組織によってまちまちかもしれません。ベンダーが出すスペックで単純計算できるものではないからです。
そこで参考になるのが、既に導入した組織による評価です。対象となっているベンダーが作成しているケーススタディや、その導入企業に関するメディア記事が参考になります。
あるいは、市場調査会社が公開している業界各社の製品のユーザーインプレッションや、ブランド特化型の調査など、投資に対してどのようなリターンがあったかの情報は意外と見つけられるものです。それらの「事実」で補強しましょう。
経費も同様です。システムの購入価格が低ければ良い、という単純なものではありません。消費電力、設置面積、冷却設備といったハード面に加え、セットアップ、操作・運用、メンテナンスが簡単になれば管理スタッフの人的リソースというコストも下がります。壊れないこと、サイバー攻撃に強いことなど、潜在的な大出費を未然に防ぐ性質も盛り込むことで説得力は増します。
払った経費で得られるものは何か、約款を隅々まで見よう
追加費用なしでさらなる価値を得られることも、企業にとっては良い取引です。とくにメンテナンスとサポートは長期にわたって必要となるものであり、累計では大きな金額となりがちな費目です。
高品質なホワイトグローブサービスを追加費用なしで受けられるようであれば、それは説得力を大きく後押しする要素となります。また、あなたの組織の専属のテクニカルスタッフが任命されるのであればなおさらです。支払うコスト面だけでなく、社内スタッフのリソースを解放できるという意味でも大きな意味を持ちます。
予期せぬ大出費のないよう手を打とう
企業のデータインフラは、サイバー犯罪者にとって格好の攻撃対象となっています。だからこそ、もし自社がサイバーストレージレジリエンスを採用すれば、サイバー攻撃による甚大な悪影響を回避できる――というのは、CFOにとって非常に説得力のある話なのです。
サイバー中心・リカバリ優先の戦略に基づき、サイバーストレージのレジリエンスと復旧能力は、ランサムウェアやマルウェア攻撃を受けた際にもデータを迅速に復旧する力を高めます。これは従来のバックアップをはるかに超えた、次世代のデータ保護の中核となります。
次世代のデータ保護は画期的です。イミュータブルスナップショット、自動化されたサイバープロテクション、隔離されたフォレンジック環境、サイバー検知、そして迅速な復旧など。こうした新しい技術力によって、今日では重要なエンタープライズデータをわずか数分で復旧し、サイバー攻撃の影響を無効化できます。これは強力なセールスポイントです。
サイバーストレージレジリエンスのビジネス上の意義は計り知れません。
・データを人質にされた際に「身代金」を支払う必要がない
・企業の評判にダメージがない
・データインフラが麻痺して事業が失われることがない
・顧客やパートナーへの悪影響がない
・サイバー攻撃の後処理にITリソースを余計に費やす必要がない
・事業の中断がない
削減したコストは新規プロジェクトに、削減した時間はプライベートの充実に
ストレージインフラを最適化すれば、AIの最新化といった先端プロジェクトに必要な資金を確保できます。これは、イノベーションへの資金調達方法を常に模索しているCFOにとって魅力的です。
今日のイノベーションはAIを活用し、ビジネスの運営方法を根本的に変革しています。ストレージインフラからリソースを解放し、より大規模なプロジェクトに資金を振り向けることができると示しましょう。
そして時を進めれば、CFOが新たなストレージシステムの導入を承認したとき、あなたはCFOと共通の基盤に立っているでしょう。そここそが組織が目指すべき場所なのです。
日本・データゼネラル、サン・マイクロシステムズ、マイクロソフト、日本ネットワーク・アプライアンス、データドメイン、EMC ジャパン、RSA Securityにて、営業、パートナー開拓ならびに新規市場展開に従事。
2013年以降はPure Storage Inc.、Rubrik Inc.などグローバル企業の日本法人代表取締役を歴任し、データ管理、データ保護市場への事業拡大を統括し推進。2022年5月にINFINIDAT Japan合同会社の代表執行役社長に就任。経営に関わりつつ、日本市場でデータストレージの業績拡大に取り組む。