“オールドメディア”と揶揄される一方で、最新技術を積極的に導入しているテレビメディアの動向を取材するシリーズ「テレビ×サイセンタン」

今回は、11月19~21日に千葉・幕張メッセで開催された国内最大のメディア総合イベント「Inter BEE 2025」にブース出展したNECの放送局に向けた製品や放送局との取り組みをレポートする。

  • 「Inter BEE 2025」イメージ

    「Inter BEE 2025」イメージ

今回のNECブースでは、「つながる、ひろがる、共に創る。NECが拓く、次世代メディア」をテーマに、最新ソリューションの展示・体験・セミナーなどを通して未来のメディアの姿とNECが果たす役割について紹介された。

具体的には、これからの放送局の新たなビジネスにむけて、「放送局の新たなインフラモデル~メディアクラウドプラットフォーム~」、「放送局の新たな事業展開を支えるソリューション」の2つのテーマを中心にソリューションが紹介された。

本稿ではその中から「番組オンライン搬入サービス」と「AIアナウンサー×AI編集支援CMS」の2つを紹介する。

  • 「Inter BEE 2025」NECブース イメージ

    「Inter BEE 2025」NECブース イメージ

番組オンライン搬入サービス

最初に紹介するのは「番組オンライン搬入サービス」。このサービスは、テレビ局や番組搬入事業者などを対象とした、業界初となる放送系列をまたいだ番組搬入が可能なオンライン搬入サービスとなっている。

同サービスは、テレビ局の番組搬入で利用されてきた物理メディアの将来的な生産終了を見越し、テレビ局・広告会社・番組販売会社にとって喫緊の課題となっていた代替手段をオンラインで提供するもの。

  • 番組オンライン搬入サービスのイメージ

    番組オンライン搬入サービスのイメージ

2025年8月から一部企業が先行利用を開始しており、11月19日に正式にサービスを提供開始した。NECは、このサービスを通じて番組搬入業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進するとともに、国内コンテンツ流通の活性化に貢献していくという。

  • オンライン搬入サービスの概要図

    オンライン搬入サービスの概要図

同サービスは、長年、番組搬入に物理メディアが用いられており、搬入・返却作業の業務負荷、天候や交通インフラに起因する搬入遅延が課題となっていたことを背景に開発されたもの。

特にローカル局では、将来的な設備投資の懸念もあり、効率的かつ持続可能な新たな番組搬入手段の確立が求められていたという。

サービスの使い方としては、民放連技術基準に則った映像ファイルを用意の上、Webアプリにログインし、必要素材をアップロードし、納品先放送局を選択することで搬入が完了する仕組み。

  • 番組オンライン搬入サービスの画面イメージ

    番組オンライン搬入サービスの画面イメージ

番組搬入に物理媒体を使わないことで「搬入コストの削減」「搬入リードタイムの短縮」「環境負担の減少」に貢献するという。

AIアナウンサー×AI編集支援CMS

続いて紹介されたのは「AIアナウンサー×AI編集支援CMS」のサービス。

同サービスは、NECと毎日放送(MBS)が共同で、NECが提供するAIアバターソリューションに生成AIを活用し、多言語動画コンテンツの制作を大幅に効率化するWebアプリケーションのプロトタイプとして開発したもの。

これまでNECは、放送業界で多言語対応の重要性が増しているという課題を受けて、AIアバターソリューション(AIアナウンサー)を活用し、原稿入力だけでAIアバターが読み上げる動画を自動生成するサービスを提供していた。

しかし、外国語コンテンツを制作するには、事前に人の手で原稿やタイトルを翻訳し、動画投稿用の概要文やハッシュタグも各言語で用意する必要がある点が新しい課題として挙げられていたという。

今回、開発されたアプリは、日本語の原稿を入力するだけで、AIアナウンサー利用時における「原稿準備」「映像準備」「メタ編集」「多言語編集」「動画コンテンツ生成」「投稿」といった工程をシームレスに実行することが可能。これにより、多言語コンテンツ制作を1人の担当者が直感的な操作で完結させられるようになるという。

  • サービスのイメージ

    サービスのイメージ

加えて、AIを活用した原稿制作支援機能を備えており、要点が入ったテキストを入力するだけで、アナウンスに適した構成・文体の原稿を自動生成する。これにより、担当者の文章作成スキルに依存することなく、質の高い原稿を容易に準備できるという。

  • 「AIアナウンサー×AI編集支援CMS」のイメージ

    「AIアナウンサー×AI編集支援CMS」のイメージ

MBSはこのアプリを活用し、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」をテーマにしたニュース動画を多言語で制作する実証を実施。

その結果、従来はアナウンサーの手配や収録、翻訳、動画編集など多くの専門スタッフと時間が必要だった多言語動画制作を、1人で約10分という短時間で実現し、制作現場の大幅な効率化と、迅速な多言語情報発信の可能性を実証する結果となった。

  • MBSの実証のイメージ

    MBSの実証のイメージ

NECは今回の実証成果を踏まえ、さらなる機能拡充と実用化に向けた開発を加速していく構えとのこと。今後もMBSをはじめとするメディア系の企業との共創を通じて、メディア業界が抱える課題を解決し、豊かで多様な情報発信に貢献していきたい考えだという。