昨年、リコーが取り組む独創的な新卒研修として、「『"はたらく"に歓びを』Day Experience」ブランドワークショップ(以下、FY24研修)の様子を紹介した。このワークショップは入社1年目の社員を対象とした育成施策として実施されているものだ。
同社はこのほど、今年の新卒社員119人を対象とするブランドワークショップ(以下、FY25研修)を開催した。研修は10~11月の5日程に分かれており、1日当たり22~24人ほどが参加する。
企画を担当する2年目社員の意識を高める相乗効果も
リコーでは内定時の内定者学習から、4月の新入社員研修、その後のフォローアップ研修まで、1年目の社員を対象とした継続的な研修を実施している。その中で、2021年まではリコーのブランドに関する体系的なプログラムがなく、自社のブランドについて学べる機会が少なかった。
そのため、ブランドのコアとなる「"はたらく"に歓びを」について入社後に深く理解するための時間が得られにくかったという。そこで、入社後の早期に会社のブランドや目指す姿を理解し、自身の日々の業務の意義やつながりを見出せるようにすることで、働くモチベーションやエンゲージメント向上を促すべく、2022年にブランドワークショップが開始された。
2022年度はコロナ禍ということもあり、オンラインで座学形式の研修を実施。翌年からは対面でワークショップ形式の研修を本格的に開始し、人ならではの創造力を発揮するための仕組みについて検討した。
FY24研修の記事でも紹介したように、同社のブランドワークショップは入社2年目の有志若手社員が企画するという特徴がある。つまり、今年のFY25研修を企画したのはFY24研修に新卒社員として参加していたメンバーだ。
【参考記事】
リコーの新卒研修を2年目社員が企画- 若手が全社を巻き込む実践型の研修に迫る
リコーのブランド戦略室などブランド部門以外の若手社員が「"はたらく"に歓びを」を理解し、次の世代に向けて等身大の言葉でメッセージを伝えられるようになることで、当事者意識を育めるようになるメリットがあると考えられる。
年齢や立場の近い入社2年目の社員が説得力を持ってブランドを語れるようになれば、ブランド浸透の輪はさらに広がるだろう。
管理職になってからリコーブランドへの理解を深めるのではなく、若手のうちからブランドを理解し、共感して自身の言葉で語れるようになることで、リコーブランドを体現する当事者としての意識を根付かせる。
昨年のワークショップ参加者が企画することで何が変わった?
FY25研修は、FY24研修の良いところはそのままに、「未来を見据えた発想と挑戦する姿勢を重視したい」という企画メンバー(有志の2年目社員)の思いを加えてアップデートを遂げた。
FY24研修は「チームの創造力の発揮を促進する社内向けの企画を考える」をテーマとしていたが、FY25研修では「10年後、はたらく歓びに溢れた世界を実現するために何があったら良いか」へとテーマを変更。
未来の世界を想像するテーマとすることでワクワクを感じて発想しながら、未来視点で自身の現状を把握して具体的なアイデアや行動を考えられるよう工夫したという。
ワークショップ当日は、4~5人ほどのチームに分かれて実務を模した企画検討とプレゼンテーションに挑戦。テーマに沿ったアイデア出しから企画案の検討、資料作成、グループ発表などに半日間のプログラムとして取り組む。
また、単に発表して終了するのではなく、振り返りの時間を設けて翌日にも自部署で活用できる施策案や自分の行動に落とし込む時間も設けられた。
FY24研修からの大きな変更点として、各日程の代表チームが出場するピッチコンテスト「Yolo Pitch(よろピッチ)」を廃止した。その代わりに、各日程に講評者が参加してフィードバックをコメントする仕組みと導入している。
FY24研修では、ピッチコンテストに参加したチームだけが講評者からのフィードバックを得られる企画だった。だが、FY25研修はすべての日程に講評者を招き全チームが平等にコメントをもらえるようにしたことで、意見をもらう大切さを通じて自部署での行動変容を促すのだという。
研修へ参加する立場から企画する立場に変わって見えたこととは?
今回FY25研修に参加した1年目社員2人と、企画を考案した2年目社員2人に、それぞれの立場から見たブランドワークショップの感想を取材した。
--1年目の2人がFY25研修に参加した感想を教えてください
菅原有一氏(入社1年目):ワークショップに取り組む中で、経営層や自部署の部長がよく「顧客価値よりも体験価値」という言葉を使っていることを思い出しました。リコーはB to B企業としてサービスを提供する中で、お客様といえばサービスを導入しお金を払う立場の人になりがちです。
しかし、企業理念「リコーウェイ」の中に「GEMBA(現場・現物・現実から学び改善する)」があるように、実際に当社のサービスを使うのは現場の方々です。顧客価値だけを追い求めるのではなく、実際のユーザーのことを考えた体験価値を創出することが「はたらく歓び」につながると思います。
ワークショップのプレゼンでも、顧客価値と体験価値の双方を意識したアイデアを考えて発表できました。
右田真優氏(入社1年目):会社の研修として、リーダーシップ研修やロジカルシンキング研修などもあるのですが、ブランドワークショップはそれらと違ってチームで課題に取り組みます。能動的に参加できて楽しかったです。
ワークショップの中では「"はたらく"に歓びを」と「働きやすさ」って違うよね、という議論が出ました。このように、同期とのディスカッションを通して具体的な考えを深めることができました。
--2年目の2人は昨年FY24研修に参加したことで変化を感じられましたか
島田ゆりあ氏(入社2年目):FY24研修を通して、普段の業務で以前は発揮できていなかった自分の強みに気付くことができ、日々の業務に持ち帰れました。
また、入社1年目は普段の業務にも何が何だか分からないことがありますし、リモートワークも多いのでコミュニケーションの取り方に悩む場面もありました。しかしFY25の企画では、同期のメンバーとプロジェクトを進める中で、昨年考えた「"はたらく"に歓びを」から発想を膨らませられたように感じます。
安田優花氏(入社2年目):FY24研修も「"はたらく"に歓びを」について考えるきっかけになったのですが、FY25研修は企画メンバーとして参加したことで、昨年よりも「"はたらく"に歓びを」について深く考えられるようになったと思います。
FY25研修の運営会議には、60時間ほど使いました。そのおかげで「これははたらく歓びにつながるかな」「これは創造力の発揮のヒントになるかな」というアンテナの感度が高くなったようなイメージがあります。
リコーブランドを自分の言葉で1年目の社員に伝える立場になったことで、結果的に自分自身のブランドの理解が深まることにもつながりました。
--FY25研修の企画・運営で大変だったことを教えてください
島田氏:FY25研修の企画メンバーとして参加した2年目の5人は、全員がFY24研修でピッチコンテストに進んだメンバーです。昨年の経験を通じて、良いところは残しながら課題に感じたところを改良していったのですが、それぞれの思いが強く企画の方向性が二転三転したことがあります。
「今年はこうしたい」「1年目の社員にこれを感じてほしい」「2年目の社員が企画する意味は何か」という各メンバーの思いを詰め込んで、優先順位を付けながら議論を進めることに苦労しました。
安田氏:FY25研修の企画を通して、頭の中でイメージしていることを実現する難しさを感じました。意図した通りに1年目のみんなが動いてくれない場面や、メッセージが違う意味で捉えられてしまう場面に直面して、試行錯誤をしてきました。
5日程あるワークショップの中でも、少しずつ指示やメッセージの発信の方法を改良できたと思います。









