エアアズアサービス(AaaS)は空調設備をサブスクリプションサービスとして提供する企業だ。同社は三井物産のICT事業本部と空調設備工事やメンテナンスを行うダイキンエアテクノの合弁会社として、2016年に設立された。
同社は、ダイキン製品を使った空調設備、それらを制御するシステム技術、およびソフトウェアを利用して、オフィスや病院、工場等の施設向けに、空調設備の使用環境と、運用コストの削減や環境負荷低減を実現するサービスを提供している。
同社の顧客は、月額固定の料金を支払うことで、自社にとって最適な空調設備を導入でき、法定点検や定期的なクリーニング、運転スケジュール設定等を含む集中管理、省エネコンサルティングなどのサービスを受けることができる。
契約期間は13年で、その間の故障等は、追加料金を支払うことなく修理対応してもらえる。
なぜエアアズアサービスを設立したのか
エアアズアサービスの設立は、三井物産からの声掛けがきっかけだという。その背景について、エアアズアサービス 取締役 副社長の河口真一氏は次のように説明する。
「空調機本体を買うとコストがかかり、空調機のメンテナンスや省エネ対策をお客様が行うことが難しいので、三井物産から運用も含めてサブスクとして提供したいという提案がありました。ダイキン側も空調機を販売して、メンテナンスサービスを導入してもらうことは、メーカーとして当然行っていましたが、お客様の快適性も含め、一気通貫で空気の管理をしたいという思いを持っていました。こうした『コト売り』という新しい提供価値に関する両社の考えが一致し、エアアズアサービスを設立しました」
ダイキンももともと空調機の保守サービスを提供していた。ただその場合、顧客が空調機を購入し、顧客の責任で運用・稼働させ、快適な空間を作る形になる。一方、エアアズアサービスなら、同社が空調機を所有し、顧客には空調をサービスとして提供し、契約期間中の快適な環境を約束する。
「他社が同様のサービスを行わないのは、13年という長期にわたって、サービス提供を保証することが難しいからだと思います」と、河口氏は語る。
エアアズアサービスを利用するメリットとは
エアアズアサービスを利用するメリットとしては、空調機の導入費用を平準化できるという点に加え、空調システムの設計、設置工事、メンテナンスもすべて同社が行うため、空調機を管理する担当者の業務が軽減されるという利点もある。
「もし空調機が故障した場合、それを見つけてメーカーの担当者を呼び、修理を依頼します。その際、見積り依頼、社内稟議の作成、支払い業務など、さまざまな作業が発生します。もし、空調機を導入しても快適な環境を構築できなかった場合は、お客様自身が適正な設定に変更して運転しなければなりません。通常はこうした業務もお客様が行いますが、それらをすべてわれわれにアウトソースすることができます」(河口氏)
また、最近、顧客からのニーズが高いのが、省エネ対策だという。
「一般的なオフィスビル全体の消費電力のうち空調設備は約4割を占めており、また空調の設定温度を1度変えるだけで消費電力が10%増減すると言われるほど、省エネ対策において温度管理は重要なファクターです。例えば、夏場は設定温度が1度下がるだけで冷やしすぎになり、無駄な消費電力が発生します。当社は、利用状況のデータを取りながら、AIも活用することで省エネかつ快適な温度を判定しています。そのような運用改善の面においてしっかりサポートできると考えています」(河口氏)
同社は、2020年度に省エネルギーセンターが主催する2020年度省エネ大賞に選ばれているが、その対象となった病院では、2年間で約37%の空調の省エネを達成した。
「初年度は機器が最新であるため、誰がやってもある程度の省エネ化は達成できますが、2年目以降に削減していくには運用改善が必要になります」(河口氏)
どうやって省エネを実現するのか?
河口氏は、省エネ対策においては、細かな温度管理が重要だと話す。
「夏場は27度程度が適切ですが、施設によっては、外出先から帰ってきた人が設定温度を変更してそのままの状態だったり、会議室などのエアコンが消し忘れたりしていることがあります。われわれはこうしたデータを分析して、運用改善のサポートをしています」
また、企業などは電力会社とデマンド契約を結ぶが、前年度のうちの30分間に使用した最大需要電力で電気料金が大きく左右されるという。この場合、夏場の最も気温が高い時や冬場の最も寒い時に使った電力が多いと、それらをもとに翌年の基本料金が決まる。同社は、こうした仕組みを踏まえてコンサルティングを行うという。
さらに、河口氏は「ダイキンのエアコンにはたくさんの機能がありますが、それらすべてをお客様が使いこなすのは難しいと思います。当社はその辺りを熟知しているので、さまざまな仕組みを使って省エネを実現しています。社名だけ聞くとベンチャー企業に思われるかもしれませんが、ダイキンブランドに裏打ちされたノウハウに基づいてビジネスを展開しています」と話す。
脱炭素、熱中症、感染症対策にも応える
また、最近は脱炭素の動きが活発になってきているため、工場などでは、CO2の削減を求められるケースも多いという。
「工場で空調機を初期設定で使っていても、消費電力はなかなか減らせません。温度管理を厳密に行うことで電力を削減できます。部品メーカーなどでは、発注元の大手メーカーからCO2削減の要請を受けますが、ご担当者様が主業務で忙しく細かな省エネ管理まで対応しきれないというケースが多いため、当社にアウトソースいただくことで、省エネ・省CO2を実現しながら、快適な環境が整えられます」(河口氏)
そのほか、最近は猛暑日が増えてきているため、熱中症対策のニーズも高まっているという。
「工場などはWBGT(熱中症指数)が上がり、熱中症の危険性が増大しています。これは経営的なリスクになってくると思います。一方で当然、省エネにも取り組む必要がありますが、コストにも反映してきます。われわれは、こうしたことを踏まえてサービスを提供しています。熱中症リスク低減のためには温度管理が重要ですが、『相談ができる相手がいてきちんと対処できる』ことは、企業の安心感につながってくると思います」(河口氏)
さらに、同社はエアロゾルの拡散リスクを評価できるダイキンの技術を使って、病院や介護施設に感染症対策を支援するサービスも検討している。
「病院や介護施設では安定した施設運営を行う上で感染症対策が重要なファクターになりますので、そのための具体的な提案も当社はできます」(河口氏)
今後はサービスを独立して提供する計画も
現在、空調機の入れ替え時期に、空調機とセットでサービスを導入してもらうのが基本だが、今後は既に設置されている空調機に対してサービスのみを提供することも検討している。
「当社は空調機の更新タイミングでサービスを入れていただいていますが、今後は、空調機の更新がなくても、お客様に満足いただけるサービスに進化させていきたいと考えています」(河口氏)
さらに今後は、同社のデータを活用した空気サービスによって労働環境改善に貢献し、顧客の業績に対してプラスに働くといったサポートができる企業を目指すという。


