
シアタールームなども設置
福岡県福岡市にあるマンション。お洒落な佇まいで一見、どこにでもありそうな外観だが、大きな特徴は学生だけが住む「学生マンション」という点。しかも、一人暮らしの学生マンションでありながら10人程度が入れるシアタールームがあり、その隣室には大きな鏡が取り付けられたダンスルームまである。
管理栄養士が監修したバランスのとれた食事が提供され、日中は管理人も常駐する。この「学生会館 リビオセゾン博多石城町」は2024年1月に完成した10階建ての物件で部屋数は180室。家具、家電付きで家賃は月5万円台で、食費も含めると月8~9万円程度だ。一般的なアパートよりも割高だが、入居率はほぼ100%だ。
この学生向け賃貸マンションを手掛けているのがプライム上場のジェイ・エス・ビーだ。同社が手掛ける学生マンションは多彩だ。東京では夜景が一望できるスカイラウンジを備えた物件があったり、佐賀県佐賀市には屋外プ―ル付きの物件もあるほど。同社の管理戸数は9万9300戸あり業界最大手だ。
「土地保有者(オーナー)への学生マンションの企画開発の提案からマンションの設計、募集人員の仲介・斡旋、さらには完成した後の建物の管理に至るまで、学生マンションにかかわる業務を一気通貫で対応できる」─。こう語るのは2025年2月に社長に就任した森高広氏。
森高広・ジェイ・エス・ビー社長
学生の「下宿」と聞いて、どんな光景を思い浮かべるだろうか。2階建ての古い木造アパートの3畳1間の暮らしを想像してしまうが、同社の提供する学生マンションではオートロック設備や防犯カメラ、カメラ付きインターホンなどのセキュリティ設備は標準装備されており、管理栄養士による食事が提供される食堂や机、ベッド、洗濯機といった家具・家電も既に設置されている部屋もある。
このほど始動した高市早苗政権でも政策課題になっている人口減・少子化。しかし、大学への進学率は毎年過去最高を記録し続けており、それに伴って学生数は約300万人で横ばいが続く。それでも同社の管理戸数は年平均約4000戸のペースで増加を続けており、24年10月期の売上高は約695億円、営業利益は約81億円と10期連続で増収増益を達成している。
森氏は「専門学校生を含む約360万人の学生のうち下宿する自宅外生は約180万人と言われている。業界トップの当社でもシェアは5%に過ぎない。今後は留学生も増えていくことを考えると、市場としての成長性はある」と話す。
実は学生マンションは一般的な賃貸マンションと性格が大きく異なる。学生は入学試験・合否判定を経て4月1日の入学式に合わせて入居してくる。そして、4年間で退去し、次の入居者と入れ替わるというサイクルだ。他の賃貸マンションの入居者とは違う動きをするわけだ。
「卒業して退去する部屋の次の入居者をあらかじめ募集し、退去した後の部屋の清掃やメンテナンスを1週間程度で行うなど、特殊なノウハウが求められる」(同)のだ。
大手不動産会社から相談が来る
一方で、土地オーナーからは学生マンションならではのメリットが見えてくる。例えば駅から遠い物件であれば入居者の募集が進まず、収益性が悪くなりがちだ。しかし、近隣に大学があり、距離が徒歩圏内であれば確実な入居者が見込める。「遊休不動産の土地活用にもつながる」(同)ということになる。
しかも最近では「大手の不動産会社や設計事務所、地方銀行から土地を紹介されるケースが増えている」と森氏は話す。なぜなら、たとえ大手の不動産会社であっても学生を募集したり、学生向けの設計ノウハウを持っていないからだ。「当社は学生マンションのパイオニアとして50年近い歴史があり、豊富なノウハウを持っている」(同)。
毎春の入居率は99.9%─。同社が高い入居率を維持できるのは建物の企画から運営まで全てを自前で展開しているからだ。前出の食堂や24時間対応可能なコールセンターなども自前で運営。メニューを考案する管理栄養士も自社社員だ。
また、学生向けならではの独自サービス「スライドシステム」もある。東京のA大学に合格した後、京都のB大学に合格して進学を決めた場合など、契約開始前に進学先が変更になっても無料で他の物件に変更ができる。また、「併願登録」というサービスでは第二志望校対象の部屋の契約と合わせて、第一志望校対象の部屋も無料で確保できる。
こういった学生マンションの管理運営のノウハウを他から求められる場合もある。同社は拓殖大学の八王子国際キャンパス内にある学生寮を管理運営。JR東日本グループとは岩手県盛岡市内で地方創生をテーマにした若者向け賃貸マンションの運営を任されている。25年には徳島文理大学高松駅キャンパスが開校することを受けてJR四国が学生マンションを建設し、その管理運営を担っている。
ただ、日本私立学校振興・共済事業団によれば、私立の大学や短期大学を経営する学校法人の4分の1にあたる計174法人が経営難に陥っているという。大学自体がなくなれば学生マンションのビジネスも立ち行かなくなる。そこで森氏は「欧米・豪州といった英語圏を中心に海外展開も見据える」。
全国約1200校とのネットワークを武器に、「令和版の下宿」を提案し続けることが同社が生き残るための肝となる。
【創業120年】日本旅行社長・吉田圭吾「日本で最も歴史ある旅行会社として お客様を喜ばせるチャレンジ精神を発揮していきたい!」
