文字以前の話し言葉、つまり口伝の歴史は客観的な事実として残らない。石や木、紙に書かれた文字からその存在が証明され、後世へと伝わる。古くは紀元前7000から6000年も遡る。亀甲に記された中国の賈湖契刻文字(かこけいこくもじ)や南東ヨーロッパのヴィンチャ文字が発見されているが、地中は深くまだまだ隠れた文字がありそうだ。文明は文字からはじまっている。

"記憶と口語"のコミュニケーションで伝達の大枠が足りてしまうので、日常生活では、その価値が軽く見られることもあるが、契約書や重要な伝達では、口頭ではなく客観性のある文書として残されることからもその重要性がわかる。

さて、PCにおいてはこの文字がさらに重要になる。メールやブラウザの宛先も文字であるし、プログラミングやコマンドラインは文字の塊だ。そう考えると、もっとも手元にあるテキストエディターの進化は、大袈裟に言えば人類史で見ても重要な進化なのかもしれない。Windowsのもっとも基本的なエディターとして、そなわる"メモ帳(notepad)"が大きく進化している。

Windowsの最も基本的なテキストエディターにAI

既報のようにWindowsビルド番号バージョン 11.2503.16.0 以降のメモ帳にCopilotが搭載されている。筆者は、Microsoft 365 Personalの契約者であるため、AIクレジットが月60クレジット付与されているが、NPU搭載の"Copilot+ PC"保持者はローカル運用で無料になる機能だ。

この機能。メモ帳だからと少々侮っていたが、もっとも基本的なメモ帳だけにダイレクトなAI活用が可能だ。Copilotボタンには記述、リライト、要約、短くする、長くする、スタイルの変更(フォーマル、カジュアル、インスピレーション、ユーモア)、書式設定の変更(段落、一覧、Business、学問的な、マーケティング、詩)とメニューがそなわる。

  • メニューには、記述、リライト、要約、短くする、長くする、スタイルの変更(フォーマル、カジュアル、インスピレーション、ユーモア)、書式設定の変更(段落、一覧、Business、学問的な、マーケティング、詩)が搭載

    メニューには、記述、リライト、要約、短くする、長くする、スタイルの変更(フォーマル、カジュアル、インスピレーション、ユーモア)、書式設定の変更(段落、一覧、Business、学問的な、マーケティング、詩)が搭載

最基本であるテキストエディター「メモ帳」に基本的なAI機能が搭載されているわけだから、メモ帳で開いたテキストファイルは、ほかのソフトにコピー&ペーストすることなくそのままダイレクトに扱える。これは作業工程の点から考えると大きな魅力だ。"Copilot+ PC"は、これがローカルで利用できて回数制限が無いのであるから、そのまま恩恵を受けられる。

筆者が気に入ったのは、例文にもあるアイデア出しをそのまま瞬時に出させる使い方。メモ帳はWindowsキー+「R」からの「notepad」で呼び出せるが、そのままメモ帳Copilotの「記述」を押し、出現するダイアログに"生産性向上のヒントに関するブログ記事のアイデア"(デフォルト例文ママ)でCopilotが10項目を書き出す。

  • 「記述」で表示のダイアログで"生産性記事のアイデア"

    「記述」で表示のダイアログで"生産性記事のアイデア"

  • 一番左のボタンを押すと、ここでは10項目のアイデア

    一番左のボタンを押すと、ここでは10項目のアイデア

便利なのが、ダイアログにある「もう一度試す」ボタンだ。これを押すたびに、アイデアが切り替わる。メモ帳であるのだから、そのままアイデアから一時的なメモとして表示させたままで、テキストの追加やほかのメニューも使って、深堀したメモへと掘り下げることもできる。

  • 「もう一度試す」でアイデアが瞬時に変わる。押すたびに切り替わるのが心地よい

    「もう一度試す」でアイデアが瞬時に変わる。押すたびに切り替わるのが心地よい

  • 休日の過ごし方を何通りかアイデア出し、ユーモアを加えてもらった

    休日の過ごし方を何通りかアイデア出し、ユーモアを加えてもらった

この一連の動作を扱えると、アイデアのたたき台までが極めて速い。保存するのではなく、表示させておく。そういった使い方がメモ帳の極意であろうと思った。ただし、クレジットの消費も当然進んでしまう。Copilot+ PCを導入したほうが、思いっきり使えそうであることは間違いない。

  • 筆者のMicrosoft 365環境では、月60クレジットのAI使用枠

    筆者のMicrosoft 365環境では、月60クレジットのAI使用枠