ガートナージャパンは10月29日、2026年に企業や組織にとって重要なインパクトを持つ「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」を発表した。バイス プレジデント アナリストの池田武史氏は、各トレンドを「アーキテクト」「シンセシスト」「ヴァンガード」の3つの役割に分けて説明した。
以下、役割ごとにトレンドの詳細を見ていこう。
アーキテクト
アーキテクトに分類されているトレンドは、「AIネイティブ開発プラットフォーム」「AIスーパーコンピューティング」「コンフィデンシャルコンピューティング」。
AIネイティブ開発プラットフォームは、生成AIを使用して、これまで以上に迅速で簡単なソフトウェアの創出を可能するもの。
池田氏は、AIネイティブ開発プラットフォームについて、次のように説明した。
「AIネイティブ開発プラットフォームは来年以降にトレンドが出てくると見て言える。ただ、日本企業は数年前に出てきたクラウドネイティブプラットフォームができていないので、AIネイティブ開発プラットフォームの登場は悩ましい。しかし、乗り遅れると大変なことになる。AIネイティブではコードを書かなくてよくなることをポジティブにとらえると、もっと前向きなことができるようになるかもしれない」
また、AIスーパーコンピューティング・プラットフォームは、CPU、GPU、AI ASIC、ニューロモルフィック・コンピューティング、その他のコンピューティング・パラダイムを統合する。これによって、組織は複雑なワークロードのオーケストレーションに加え、新たなレベルのパフォーマンス、効率性、イノベーションを実現できるようになるという。
コンフィデンシャルコンピューティングは、ハードウェア・ベースの信頼できる実行環境 (TEE) 内にワークロードを隔離することで、インフラストラクチャのオーナーやクラウド・プロバイダー、ハードウェアに物理的にアクセスできる人に対しても、コンテンツやワークロードの機密性を保持することを実現する。
シンセスト
シンセストに分類されるトレンドは「ドメイン特化言語モデル(DSLM:Domain-Specific Language Models))」「マルチエージェント・システム」「フィジカルAI」。
DSLMは業界、機能、プロセスに特化したデータを用いてトレーニング/ファインチューニングされた言語モデル。汎用的なモデルとは異なり、DSLMはターゲットとするビジネス・ニーズに対して、高い正確性、信頼性、コンプライアンスを提供する。同社は、2028年までに企業が使用する生成AIモデルの過半数がドメイン特化型になると見ている。
マルチエージェント・システムは、個別または共通の複雑な目標を達成するために相互作用するAIエージェントの集合体。エージェントは、単一のAIサービス・プロバイダーで提供されることもあれば、クロスプラットフォームで独立して開発・展開されることもある。
池田氏は、DSLMとマルチエージェント・システムについて、次のように説明した。
「現状ではAIの成熟度が足りず、ビジネスで顧客に有償で提供するにはおぼつかない。そうした中、特化型LLMを使うことでアウトプットを出すことが可能になると考えられるが、本命はマルチエージェント・システム。昨年、当社はエージェンティックAIを提唱したが、この発展形がマルチエージェントで、今後重要になってくる。マルチエージェントには新しい経済圏ができるくらいの期待があるので、重視している」
フィジカルAIは、フィジカルAIは、ロボット、ドローン、スマート・デバイスなど、現実の環境を検知・理解・行動するマシンやデバイスを強化し、現実世界にインテリジェンスをもたらす。池田氏は、ロボット、ドローン、クルマなどが自ら周辺環境の変化を察知して動くようになると、フィジカルAIが仲介することで実世界に影響を与えることが可能になるという。
ヴァンガード
ヴァンガードに分類されるトレンドは「先制的サイバーセキュリティ」「デジタル属性」「AIセキュリティ・プラットフォーム」「ジオパトリエーション」。
先制的サイバーセキュリティとは、AIで強化されたセキュリティ運用を活用し、プログラムで脅威を阻止、妨害し、攻撃者を欺くことで、攻撃される前に先制的に防御すること。
デジタル属性とは、ソフトウェア、データ、メディア、プロセスの出所、所有者、完全性を検証する能力を指す。組織がサードパーティのソフトウェア、オープンソースのコード、AI生成コンテンツの適用を拡大させる中、デジタル属性の検証が不可欠になっている。
AIセキュリティ・プラットフォームは、サードパーティおよびカスタム構築のAIアプリケーションを保護するための統一された方法を提供する。アプリケーションを一元的に可視化し、使用ポリシーを適用し、プロンプト・インジェクション、データ漏洩、不正なエージェント・アクションなど、AI特有のリスクから保護する。
ジオパトリエーションとは、企業のデータやアプリケーションをグローバルなパブリック・クラウドから、ソブリン・クラウドや地域のクラウド・プロバイダー、自社データセンターといった適切な場所に移設すること。池田氏によると、クラウドの世界の「リパトリエーション」を広げた言葉だという。地政学的リスクの高まりによる地域や国によるルールの変化から、ジオパトリエーションが求められているとのことだ。
2026年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを時間軸で整理すると、以下の図のようになる。
同社は2026年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドは、「互いに深く結び付き、AIを原動力とするハイパーコネクテッドな世界の現実を反映するもの」と定義しており、図示すると以下のようになる。



