両備システムズは10月24日、酪農家と支援組織(酪農組合や農協、指定団体)間の情報を共有し、オンプレミス版で提供している事務手続きの効率化を支援する酪農システム「RAKUNOWA(ラクノワ)オールインワン」のWebブラウザで利用できるクラウド版(2028年12月稼働予定)の予約受付を開始した。なお、オンプレ版の契約者はクラウド版への移行も可能なため、オンプレ版での先行導入もできるという。

クラウド版提供の背景

酪農を取り巻く環境は飼料価格の高騰に加え、円安の影響によるコスト増、国内における飲用乳の需要低下、人件費の上昇、そして酪農家の高齢化など、複合的な要因により非常に厳しい状況にあるという。

全国の酪農家戸数は、2024年10月には1万戸を割り(指定団体で受託している酪農家の戸数)、年々減少しており、ロボットや自動監視システムやIoTセンサなどを活用したスマート酪農の導入による生産性の向上が求められている。

一方、既存のレガシーシステム(旧式のシステム)の存在により、新技術導入時のデータ統合・連携が不十分となるケースや、エンジニア不足による継続運用の困難などの課題が想定されるため、クラウド連携やAPI整備など、業界全体での標準化が求められている。

同社は岡山県、福岡県、鹿児島県など西日本エリアでRAKUNOWAの導入実績があり、今後はクラウド版システムを全国に展開。酪農家と支援組織を繋ぎ、酪農業界のシステム標準化を進めるとともに、ロボットやIoT機器と連携することで酪農DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するという。

「RAKUNOWAオールインワン」の概要

RAKUNOWAオールインワンは、酪農組合向けシステム「RAKUNOWA」と「RAKUCOLLE(ラクコレ)」「RAKUCOLLE+(ラクコレプラス)」、検査結果配信システム「RAKUNYU+(ラクニュウプラス)」で構成し、乳代精算、購買管理、販売管理、牛取引、貸付リース、出資金管理、診療記録、検査結果配信、乳量データ収集など、酪農経営に必要な機能を1つのシステムで提供するというもの。

  • RAKUCOLLE+のイメージ

    RAKUCOLLE+のイメージ

RAKUNOWAは、酪農組合の日常の業務は飼料の購入、販売管理、乳量の販売管理、証書貸付・リースの貸付金管理、乳代精算、哺育・肥育農家のサポートなど多くあり、これらをトータルサポートし、酪農経営の効率化を推進することで酪農組合と酪農家を結びつける。

一方、集乳は集乳車が各酪農家を巡回して行い、集乳量のデータは集乳車に搭載した電磁流量計から農家発乳量のデータを取得し、インターネットを経由して酪農組合に送られるケース(ケース1)と、集乳量を記入した紙を受け渡しドライバーが持ち帰った後に支援組織の職員がパソコンに入力するケース(ケース2)がある。

ケース1に役立つのがRAKUCOLLEであり、生乳販連および組合向けの乳量、乳質の管理ができるシステム。集乳車の電磁流量計から乳量データを自動連携し、乳量と乳質の一元管理を可能としている。

ケース2に役立つのが新サービスで2026年12月までに提供開始予定のRAKUCOLLE+となり、集乳車のドライバーがスマートフォンやタブレットで集乳量を入力・管理できるシステムだ。リアルタイムでデータ共有ができ、作業時間の短縮や記録ミスの防止に役立つという。

  • RAKUCOLLE+のイメージ

    RAKUCOLLE+のイメージ

RAKUNYU+は検査センターや生乳販連から送られてきた検査結果を酪農家にメール配信するほか、酪農家自身が動物用医薬品の投与管理などを行うことも可能としている。

RAKUNOWA、RAKUCOLLE+を導入することで、月次の乳代精算の処理時間を50%以上削減、日次の処理も削減が可能となることに加え、支援組織の一連の業務を一元管理することが可能。複数のシステムを別々に管理する必要がなくなり、業務の標準化を図ることができるという。

  • 導入によるメリット

    導入によるメリット

また、乳量に応じた利用料計算のため、乳量が少なくなった年には減額となることを想定しており、一定の負担率となることに加え、システムのバージョンアップやアプリケーションの改修が必要になった場合でも、コストは月額利用料に含まれていることから、常に最新のシステムを利用することを可能としている。