
シブヤフォントでは、渋谷を拠点として、障がいがある方とデザインを学ぶ学生たちをつなぎ、一緒に世界に一つしかないオリジナルのフォント(文字)とパターン(柄)をつくるという活動を行っています。現在渋谷区内の11施設の267名の利用者と学生128名がこれまで参加しています。
わたしはイギリス人の母とスリランカ人の父のもとに生まれ、13歳まで日本で育ちました。その時から、〝文字〟や〝柄〟というものに何か不思議な魅力を感じていました。13歳から25歳まではイギリスで過ごし、大学ではグラフィックデザインを学びました。日本では、障がいのある人とない人は分かれて教育を受けることが多いですが、イギリスの学校は同じ教室で学ぶインクルーシブ教育。この学びの場が日本は早くから分かれているので、社会に出てからの世界も分かれてしまうように感じます。
企業では今、障がい者雇用の法定雇用率を2024年4月から2.5%に引き上げていますが、そのほとんどは事務仕事で、クリエイティブな仕事は多くないのが現状だと思います。
障がいがある利用者は「参加アーティスト」と呼んでいるのですが、彼らの発想や着眼点は時に全く思いがけないものが出たりします。特に、生み出す文字やイラストが独特豊かです。これらを誰もがパソコンで使えるフォントやパターンにすれば、障がいのある人とない人が社会でつながれるんじゃないか、という思いが今の団体名に込められています。
参加アーティストはそれぞれできることとできないことが違います。そういう場合は学生がその人が書ける文字をデジタル化し、絵はパソコン上でつなげてパターン化します。障がいの程度にかかわらず誰でも参加できるというのも特徴です。
例えば伊藤園さんとのコラボでは、伊藤園さんの渋谷区内の自動販売機をこのフォントやパターンのデザインでラッピングして、その自販機の売上の7%が福祉施設に還元されるという取り組みを行いました。
最近ではうちの取り組みをみて、全国の福祉施設や地域でもやってみたいという依頼が増えています。わたしたちが培ってきたノウハウを教えながら1年間そのチームと伴走してその地域の「ご当地フォント」をつくる試みが広がっています。
このフォントというのは、世界共通で誰でも個人利用は無料でダウンロードして使用できます。企業が商業目的で使う場合は、有料化して福祉に還元する仕組みです。パターンもただ一方的に渡すだけでなく、編集可能にして受け取った人のフィードバックがアーティストに返ってくることで、循環社会ができるということもポイントです。
よく「障害は個性だ」と言いますが、わたしはそうは思っていません。なぜなら当事者自身がまだ世界とちゃんと繋がっていることを実感できていないのに、これがあなたの個性だと言われても、かえってプレッシャーに感じてしまう人もいるのではと思うんです。
だからわたしは、障害は個性ではなく単なる一つの事実だと。どう物事を解釈して行動して生きるかが個性で、違う立場の人と一緒に協働して互いに影響を受け合うことで個性が出来ていくという考えです。
学びの場も大人になってからの社会も、障がいがある人も、ない人も協働していく社会になっていくことが、新たな発想を生み出すために大事なことだと思っています。
シブヤフォントHP:shibuyafont.jp