富士通は9月9日、2025年度を最終年度とする中期事業計画の進捗状況と、その先の持続的な成長に向けた事業戦略について紹介する「IR Day 2025」をオンラインで開催した。本稿では執行役員副社長 COO(ソリューションサービス担当)の高橋美波氏が語ったUvanceの成長戦略についてレポートする。
Fujitsu Uvanceは目標を上回る業績で推移
高橋氏はまず、2024年度の事業進捗について振り返った。売上収益は4828億円と前年比で31%の成長となり、目標としていた4500億円を上回った。この成長をけん引したのは、SAP、ServiceNow、Salesforceなど、業種横断的に提供するHorizontal領域だという。
2025年度には、売上収益7000億円、伸長率45%を目指す。具体的には、Vertical領域で60%、Horizontalで37%の伸長を目標とする。また、サービスソリューションにおける売上の割合を、2024年度の21%から2025年度は30%へと拡大させる。
これらの目標に対し、第1四半期時点で、VerticalおよびHorizontalの両領域で売上収益が前年度を上回る成長を示しているという。また、受注残を含めると年度内の売上目標の60%に達するペースで進捗した。
Vertical領域においては、継続的な収益が見込めるリカーリングの割合も44%まで拡大させる。安定的な収益基盤を確保することで、さらなる投資とその先の成長につなげるモデルとしている。さらに、同じくVertical領域で提供サービスの標準化率を63%まで向上し、Time to market(サービス提供までの期間)を改善した。
VerticalとHorizontalはさらに有機的に連動
Uvanceでは今後、Vertical領域を成長エンジン、Horizontal領域を収益基盤として、安定的な収益を確保しながら成長を加速するモデルを構築する。例えばビジネスアプリケーション分野では、SAP premium supplierなどを活用しながら、ERPのデータを分析し業務に活用するような、Horizontal領域からVertical領域への展開も進めるとのことだ。
同様に、デジタルシフト分野では、LLM「Takane」やAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」などHorizontal領域のデータ・AI基盤とコンサルティングにより顧客の課題を抽出してから、Vertical領域のオファリングを適用する。
上述の通り、Vertical領域は売上収益が順調に推移している。特にCX(Customer Experience:顧客体験)分野では前年に買収したGK Softwareの伸長が対前年比で33%と好調だ。これに加えて富士通が持つIPを活用した顧客獲得により、成長をけん引した。
Trusted Societyでは画像解析技術によるシティセキュリティのほか、物流の需要予測や最適化技術といった社会課題の解決に貢献する案件を中心に拡大。
「Fujitsu Uvanceのソリューションはオンクラウドのアプリケーションを中心に展開している。機能拡張が容易で付加価値を恒久的に高められることに加え、従来のようなお客様と1対1の関係ではなく、基本的なアーキテクチャを構築したことで複数のお客様に早く提供できるようになった」(高橋氏)
Uvanceは今後の持続的な成長に向け、上流に相当するコンサルティング機能「Uvance Wayfinders」から、AIなどのテクノロジー、さらには基盤のモダナイゼーションまで、有機的に連動させて提供する。全社が持つさまざまな機能を連携することで、Uvanceの競争力強化に貢献する方針だ。
Service-as-a-Softwareへの事業転換を加速
富士通は昨今のAIエージェントの浸透により、「Service-as-a-Software」の市場が拡大すると予想している。Service-as-a-Softwareとは、これまでのSaaS(Software as a Service)が単にツールとしてのソフトウェアの提供であったのに対し、AIエージェントがアプリケーションを活用してサービスそのものを提供するモデルである。2035年までに300兆円の市場規模が創出されるという試算もあるそうだ。
富士通はこうした環境の中で、自社が持つITのみならず、パートナー企業と競争することでAIエージェントによる「Service-as-a-Software」への事業転換を図る。
高橋氏は「将来的には、サービスソリューションに占めるUvanceの売上を50%以上にしたい。グロスマージン率は、Vertical領域で50%以上、Horizontal領域で40%を目指す。さらにVertical領域のリカーリング率を70%以上まで高めることで安定的な収益を確保し、お客様に対する提供価値を上げていく」と説明した。





