アマゾン ウェブ サービス (以下、AWS) ジャパンは7月30日、ソフトウェア業界における生成AI活用の事例を紹介する記者説明会を開催した。本稿では、AWSの生成AIが提供する価値や「Amazon Bedrock AgentCore」(Preview)、「AI Agents and Tools in AWS Marketplace」などのサービス例と、サイボウズがノーコードツール「kintone」で導入した生成AI機能の事例について紹介する。
SaaS開発において高まる生成AIのニーズ
AWSが2011年に東京リージョンを開設してから約15年が経過した。その間、新型コロナウイルスの拡大などの影響を受けてリモートワークが拡大し、SaaS(Software as a Service)の利用増加を筆頭にWebサービスを取り巻く環境は大きく変わった。
AWSジャパン 常務執行役員 デジタルサービス事業統括本部長の佐藤有紀子氏は、「この15年を振り返ると、3つの大きな変革があったと感じる。それは、クラウドによるイノベーション、生活やワークスタイルの変化によるイノベーション、生成AIによるイノベーションだ」と、話していた。
昨今においては、生成AIを用いたビジネス変革は重要性が高まっており、スタートアップを含め多くの企業が生成AIを活用した顧客満足度の向上を図っている。
佐藤氏は現在のSaaSやWebサービスに求められる生成AIの特徴として、「Time To Value」「Flexible」「Trusted」の3点を挙げた。
「Time To Value」は、生成AIを自社のSaaSに素早く簡単に導入できることを意味する。また、「Flexible」は機能や用途に応じて使い分けられる柔軟性を、「Trusted」は顧客のデータとサービス品質を守るセキュリティと信頼性を、それぞれ意味する。
AWSが提供するAmazon Bedrockは、API(Application Programming Interface)によって生成AIのさまざまな基盤モデルを利用可能なサービスだ。Amazon独自のモデルのみならず、Anthropic、Cohere、Metaなど、他社のモデルも単一のAPIから利用できる。
ウェザーニューズはスマホアプリ「ウェザーニュース」でAIチャット機能「お天気エージェント」を提供している。これはユーザーからの質問に対してAIが天候の予測を回答する機能で、Amazon Bedrockを利用してわずか1カ月で開発を完了しリリースしたという。
弁護士ドットコムも同様に、Amazon Bedrockを使用して「Legal Brain エージェント」を構築した。法令や判例など法律に関する情報を整理したリーガルデータベース「Legal Graph」を横断的に検索できるようにしたことで、調査業務の効率化と精度向上を実現している。
Legal Brain エージェントの開発当初は対応文献の検索精度や参照の表現に課題があったものの、Amazon Bedrockや他のマネージドサービスを活用し、現在は法務業務に十分に対応できる性能を示しているとのことだ。
より高度なAIエージェントの利用へ
現在の生成AI活用は、単にチャット形式で文章の要約や生成を行うアシスタント型から、より広範なタスクに対応し自律的に稼働するAIエージェント型へと、シフトしつつある。特に進んだものでは、複数のAIエージェントが協働するマルチエージェントシステムに対応している例もある。
ガートナーの調査によると、2028年までに企業向けアプリケーションの33%にAIエージェントが導入される見込みだ。また、同年までに日常業務の15%の意思決定がAIエージェントによって自律的に行われる見通しもあるという。
そうした中、7月16日にAWSはAIエージェントの構築を支援するビルディングブロック「Amazon Bedrock AgentCore」(Preview)を発表した。このサービスはAIエージェントを動かすためのサーバレス基盤やAIエージェントのセッションを保存するためのメモリ、外部サービスと連携するためのゲートウェイなど、複数の機能を提供する。
本稿執筆時点では、バージニア北部、オレゴン、シドニー、フランクフルトの4リージョンで提供を開始している。
また、同社は各社が開発したAIエージェントの展開を支援するためのマーケットプレイス「AI Agents and Tools in AWS Marketplace」も発表。これにより、ユーザーは複数のAIエージェントを同一の窓口で比較できるようになり、事前構築済みのAIエージェントをすぐに利用開始できる。
一方、AIエージェントを展開する企業はマーケットプレイスを通じて幅広くリーチできるようになるほか、柔軟な価格やデプロイのオプション設定が期待できるとのことだ。
アンチパターンとエクサウィザーズは、すでにAI Agents and Tools in AWS Marketplaceに出品している日本企業だ。アンチパターンはB to B SaaSの開発・運用支援を行うプラットフォーム「SaaSus Platform」において、プロダクト開発を支援するAIエージェントのAPIを短期間で開発するとともに、リモートMCP(Model Context Protocol)サーバ機能も提供する。
エクサウィザーズは、AIエージェントの設計・開発・実行を支援するプラットフォーム「exaBase Studio」を提供する。同プラットフォームは小規模なテストから組織全体の自動化まで、5段階での運用を支援可能とのことだ。
「2025年はAgentic AIによるトランスフォーメーションが始まっている。Agentic AIはソフトウェア業界やウェブサービス業界に本質的な変化をもたらし、新しい創造の機会を生み出すと考えている。サービスの向上やユーザーとのインタラクションの変革、開発プロセスの進化が起きている。当社はこれまで、クラウドジャーニーを通じてお客様を支援してきたが、今後のAIジャーニーではAgentic AIによる変革にも強力な支援をしていく」(佐藤氏)
サイボウズが「kintone AIラボ」の開発にAmazon Bedrockを導入した理由とは?
サイボウズが提供する「kintone」は、現場主導の業務改善を支援するノーコードツール。ドラッグ&ドロップなど直感的な操作で業務アプリを開発できるため、使い勝手を改善しながら現場にフィットするアプリを作成できる。
kintoneでは「だれでも簡単に使える」ことを目的とするAI機能を開発中で、そのベータ版を「kintone AIラボ」として提供している。このAI機能の開発に、Amazon Bedrockを活用したとのことだ。
kintone AIラボではこれまでに、検索機能とRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術を組み合わせた「検索AI」、AIとのチャットを通じて業務アプリを構築する「アプリ生成AI」、業務プロセスやワークフローの設定と管理をAIが支援する「プロセス管理設定AI」を提供開始している。
サイボウズの執行役員を務める栗山圭太氏はAmazon Bedrockを導入した理由について「セキュリティ機構が強固であり、管理者が許可したAI機能しか利用できない仕組みや、AIのアクセス権設定など、とても安心感があった。お客様がチャットに入力した質問がAIの学習に利用されない点も良かった。導入時の手厚いサポートも印象的」と語っていた。







