Uber Eatsは、すでに47都道府県でデリバリーサービスを提供しており、最近では都市部だけでなく、地方都市にサービスエリアを拡大している。その一方、昨年の年末年始は需要が供給を上回り、配達遅延やキャンセルが発生し、SNS上で話題になった。
そこで、配達遅延やキャンセルをどう防いでいくのか、配達パートナーオペレーション部 シニアマネージャー 黒崎花子氏に聞いた。
今年は新たに100以上の都市でサービス開始予定
Uber Eats Japanのデリバリーサービスの概要を教えてください
黒崎氏:Uber Eatsは2016年に日本でサービスを開始し、2021年9月には全国47都道府県でサービス展開を開始しました。過去1カ月で稼働したアクティブな配達パートナーの方は10万人ほどいらっしゃいます。
今年は、新たに100以上の都市でサービスを開始する計画で、今後、さらに多くの方に配達パートナーとしての収入を獲得する機会を広めていきたいと思っています。
デリバリーサービスは、飲食店が中心なのでしょうか?
黒崎氏:過去1カ月間に注文があったアクティブな加盟店は全国で12万店舗あります。飲食店がメインですが、最近は食料品、日用品、スーパー、ドラッグストアでの配達依頼が増えています。2024年は、食品・日用品の売上は前年比で約2倍に伸びています。
繁忙期も需給バランスを保つ対策とは
昨年の年末・年始に配達の遅延や注文のキャンセルが発生したとのことですが、原因は何でしょうか?
黒崎氏: 年始は配達需要の上振れが想定よりも大きく、一時的に需給バランスが崩れました。また、一部の配達においては、提示された配達報酬が労力に見合わないと感じられたケースが発生し、マッチングに時間がかかり配達の遅延や注文のキャンセルにつながったと考えています。
当社は需給バランスだけでなく、配達に費やす予定の時間や商品の受け取り場所やお届け先の数、天候や季節性など、さまざまな内・外的要素を考慮できるシステムによって配送料を算出しています。年末年始には、システムが急激な需要増加に迅速に対応できずに、反映に時間がかかってしまいました。
1週間ほどで通常の需給バランスに戻りましたが、今後は、システムが急激な変化に迅速に対応できるように、対策を進めています。
注文のキャンセルはどういう場合に発生するのでしょうか?
黒崎氏:注文品の配達は、店舗からの配達リクエストに対して、配達パートナーが受託することで成り立ちます。そのマッチングに時間がかり、配達の遅延が発生すると、システムが自動で注文をキャンセルすることがあります。もちろん、これ以外にも注文者・マーチャントパートナー・配達パートナーが様々な理由で注文をキャンセルすることがあります。
需給バランスが崩れやすい時間帯や季節はあるのでしょうか?
黒崎氏:年末年始はお休みのシーズンで、稼働されない配達パートナーもいます。また、急な気候の変化も要因になります。昨年の夏は線状降水帯が発生し、一時的に雨が大量に降ったところでは、昼食や夕食といった需要が高まる時間帯に配達が遅れてしまったことがありました。
配達パートナーは、配達をする場所や時間、配達リクエストを受諾するかどうかを自由に決定できます。当社は「この時間に待機してください」「この場所で稼働してください」といったことは一切やっておらず、年末年始や極端な気象状況下に休まれる方も少なくありません。
報酬金額は人間がその場で計算しているわけではなく、学習を重ねたシステムがさまざまな内・外的要素を考慮し、自動で配送料の算出を行います。昨年の年末年始は、ここまでシステムの自動的な調整が遅れたことが初めてだったので、社内でたくさんのチームが原因を究明し、改善を行いました。
需給バランスに対して、どのような対策を実施しているのでしょうか?
黒崎氏:報酬の算出システムが、急激な状況の変化にもっと迅速に対応できるように、学習の強化をしました。それでも、極端な事象が起きた場合、システムが対応できないということも考えられるので、もし、夏の豪雨のように需給バランスが崩れるタイミングが事前に分かっていれば、配送料とは別にインセンティブを配達パートナーに提供するなど、需給バランスの崩れを未然に防ぐ対応も取っています。
配達パートナーのユーザーエクスペリエンスを高める施策とは
黒崎さんの所属する配達オペレーション部はどのような活動をしていますか?
黒崎氏:私たちは Uber Eats の配達を通して柔軟に報酬を得る機会を多くの方に提供すべく、配達パートナーの獲得や配達パートナーのユーザーエクスペリエンスを高めることを主に担当しています。
エリア拡大や既存エリアの注文数を増加させることが Uber Eats の成長ドライブになっているので、継続的に配達パートナーの獲得を行っています。そのために、新規拡大エリアや需要が高いエリアにプロモーションを打つなどしています。
また、ただ単に柔軟に報酬を得る機会を提供するのではなく、配達パートナーのユーザーエクスペリエンスを高めることも重要だと思っていますので、日々アプリを使いやすくするために新機能の実装や特典を用意しています。
配達パートナーの特徴は何でしょうか?
黒崎氏:シフトを組まない点が一般の企業サービスと異なる点です。自由にどこでも、いつでも、好きなときにできることが最大の訴求ポイントになっています。柔軟に働けるプラットフォームだからこそ、人が集まるようになっています。
配達パートナーの意見によって、改善した点はありますか?
黒崎氏:Uber Eats ではサポートや定期的なアンケート調査だけではなく、配達パートナーと社員が直接意見交換する「配達パートナー対話会」を2023年から実施するなど、あらゆる角度から配達パートナーからご意見をいただいています。
配達パートナーへのヒアリングを通して改善した例としては、注文者への配達先情報の更新を求める通知を自動で送信する機能があります。住所がうまく入力されていなかったり、お届け先の情報が誤っていたりすることを注文者に知らせたい、という配達パートナーの声を受けて、配達パートナーが届け先の特定が困難な状況に直面したときは、その配達パートナーの情報を伏せた形で、登録住所の確認を依頼するメッセージを注文者に自動で送る機能を実装しました。それによって、住所の正しい入力を促し、より効率的な配達につながった実績があります。
また、複数注文の際の配達の順番が非効率である時があるというお声に対しては、より効率的に追加の配達依頼に対応できるようにしました。具体的には、これまでは、注文者への配達中に新たなリクエストを受けた場合、すべての配達が完了するまで追加の商品のピックアップはできませんでしたが、今回の変更により、状況に応じて先に新しい商品をピックアップ・配達できるようになりました。
そのほか、注文者がアプリ内チャット機能を用い、配達パートナーに「コンビニに寄って〇〇を買ってきて」など、注文品以外の購入・配達を依頼しないよう、注文者に向けた注意喚起を行っています。注文先の加盟店のメニューにない商品の購入・配達を依頼する行為は、Uber Eatsのコミュニティガイドライン違反であり、未然防止のための対策を強化しています。
配達パートナーのユーザーエクスペリエンスを高めるために、他にどのような取り組みを行っていますか?
黒崎氏:配達実績に応じて、レストランでの割引、安全装備の割引、無料の語学レッスンなどさまざまな特典を受け取れる「Uber Eats Pro」というプログラムを提供しています。ランクは月の配達数に応じてグリーン、ゴールド、プラチナ、ダイヤモンドの4つに分かれており、ランクが上がるごとに新しい特典を利用することができます。
特に人気の特典としては、ダイヤモンドランクの配達パートナーの方に提供している「Coke ON」の無料ドリンクチケットで、対応自販機でコカ・コーラ社製品と交換可能になっています
Uber Eatsで地方の買い物困難者の方々を支援
今後は、どのような展開を考えていますか?
黒崎氏: 特に地方を中心に、いわゆる買い物困難者と呼ばれる方々が増えています。車で出かけて、スーパーやドラッグストアに行って買い物ができていたところ、免許返納など、何らかの理由によってすぐに必要なものを手に入れられない方が全国的に増えています。そういった方に対しても、Uber Eatsを使えば、平均30分で必要な食品・日曜品が届くという周知を積極的に行いたいと考えています。
また、セブン- イレブンさんの「7 NOW」やクリーニング店の「LAUNDRY PACK【Now 】」など、最後の配達のところだけUber Eatsの配達パートナーが行う「Uber Direct」というB2Bのサービスがありますが、このようなラストワンマイル配達サービスの展開を今後も全国的に加速していきたいと考えています。
Uber Eatsで「欲しいものが、いつでも、どこでも、なんでも手に入る」未来に向けて、これからもサービスの更なる拡充を進めていきます。